CX(カスタマーエクスペリエンス)とは|マーケティングに不可欠な顧客体験の基礎知識

近年、マーケティングで重要性が高まっているCX(カスタマーエクスペリエンス)。本記事では、マーケティングにおけるCXの重要性や5つの構成要素、CX向上に有効な取り組み方法について解説します。CXとは何かを知りたい方は、ぜひ参考にしてください。

マーケティングで重要性が高まるCX

企業と顧客のタッチポイントが多様化している昨今、マーケティング活動において重要性が高まっているのがCXです。

まずは、CXとはどのような概念なのかを見ていきましょう。

CXとは

CXとは「Customer Experience」の略語で、「顧客体験」を意味するマーケティング用語です。顧客体験とは、企業と顧客のタッチポイント(接点)において顧客が得るすべての体験を指します。

近年はデジタル化やライフスタイルの変化に伴ってタッチポイントが多様化しているため、「機能」「価格」などの物質的な価値を訴求するだけでは差別化を図ることは困難です。顧客に満足してもらうには、商品やサービスを認知してから検討・購入・使用・使用後に至るまでのあらゆるタッチポイントで「良質な体験価値」を提供する必要があります。

CXの例を以下に挙げます。

Web広告やテレビCM、店頭などで商品を知る
ホームページやカタログ、ECサイトなどで商品の特徴や価格を調べる
店頭やオンラインで説明を受ける/問い合わせフォームで質問をする
店頭や注文フォームで商品を購入する
パッケージを開封し、商品を使用する
カスタマーサポートに問い合わせる/ヘルプサイトを見る

このように、顧客は購買プロセス全体を通して様々な体験をします。顧客体験の質が悪ければ、商品に対する満足度やリピート購入意向、企業イメージなどに悪影響を及ぼしかねないため、CXを重視したマーケティングに取り組む企業が増えています。

類似用語との違い

CXは「CS(Customer Satisfaction)」や「UX(User Experience)」と混同されることがあるため、意味の違いを理解しておきましょう。

<CSとは>
CSとは顧客満足度のことで、「商品・サービスの利用を通じて、顧客がどのくらい満足したか」をあらわす指標です。購買プロセス全体で顧客が得る体験価値(CX)に対し、顧客が満足しているかどうかの効果を測る指標がCSとなります。

<UXとは>
UXはユーザー体験のことで、特定の商品・サービスのユーザーが、それらの使用を通じて得る体験を指します。体験価値に着目している点はCXと同じですが、対象を購入後の使用時点に限定している点が異なります。

以下の記事も参考にしてください。

CX(顧客体験)とは|顧客の体験価値を生み出す要素と向上のポイント
https://jp.creativesurvey.com/blog/posts/cx-20200416/

CXを構成する5つの価値

CXマーケティングの第一人者であるアメリカの経営学者バーンド・H・シュミット氏は、CXが提供する体験価値を5つの心理的・感情的な価値に分類しています。

Sense(感覚的価値)
Feel(情緒的価値)
Think(創造的・認知的価値)
Act(行動・ライフスタイルに関わる価値)
Relate(社会的価値)

一つずつ具体的に見ていきましょう。

Sense(感覚的価値)

視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚といった五感を通して、顧客が得る体験価値です。例えば一流ホテルのロビーは、洗練された内装、心地よいBGM、ゆったりとくつろげるソファなど、五感に配慮して空間全体が演出されており、顧客に感覚的な心地よさを提供しています。

Feel(情緒的価値)

顧客の感情に訴えかけることで生じる体験価値です。例えば、ホスピタリティのある接客や手厚いサポートに「感動する」「安心する」など、心がポジティブに動かされる体験を指します。ほかにも、テーマパークの演出に「熱狂する」「ワクワクする」、商品の開発ヒストリーを知って「感銘を受ける」などの例が挙げられます。

Think(創造的・認知的価値)

顧客の探求心や知的好奇心に働きかけることで生まれる価値です。例えば、自由な発想で遊べる知育玩具では、「どんなものを作ろう?」「どう組み立てればいいだろう?」など、クリエイティビティを刺激します。また、博物館や水族館の体験コーナーでは、「もっと知りたい」「触れたい」「試してみたい」といった知的欲求を満たしてくれます。

Act(行動・ライフスタイルに関わる価値)

日常生活やライフスタイルに変化をもたらすような、これまでにない新しい体験で得られる価値です。例えば、断食体験ができる宿泊施設の利用を機に、食生活や日々の過ごし方を見直し、心身の不調が改善されるなどの体験です。また、様々な職業の疑似体験ができる施設を利用して「やってみたかったことを実現できた」「自分とは異なる働き方を知り視野が広がった」などの満足感もActによる価値と言えます。

Relate(社会的価値)

自分の嗜好や価値観を共有できる特定の集団・コミュニティに属することで得られる価値です。具体的には、スポーツチームのサポーターやツーリング愛好者のSNSコミュニティ、会員限定イベントなどへの参加が挙げられます。そこに帰属することで、自尊心を満たすようなステータスや連帯感が得られる体験です。

良質なCXを提供するための具体策

顧客体験は、様々な取り組みによって向上させることが可能です。ここでは、CXの向上につながる方法を4つ紹介します。

ミッションステートメントの共有

ミッションステートメントとは、経営ビジョンや行動指針など企業全体で共有する価値観・姿勢を明文化したものです。従業員が業務を遂行する上での”羅針盤”にあたり、事業の方向性や商品・サービスの品質、さらには顧客体験の質に影響を与えます。

ミッションステートメントが共有されていないと、「企業としてのあるべき姿」や「顧客に提供するべき価値」について従業員の意識が統一されず、顧客体験が一貫性のないものになってしまいます。そのため、具体的な施策を検討する前に、まずは企業の核となる指針を全社でしっかりと共有・浸透させることが肝要です。

カスタマージャーニーマップの活用

カスタマージャーニー(顧客の旅)とは、一連の購買プロセスにおける顧客の思考や行動、感情の変遷のことです。それらを時系列で図表化したものがカスタマージャーニーマップで、各タッチポイントで「顧客が何を考え、どんな行動をとるのか」を可視化することができます。

カスタマージャーニーマップを作成すれば、各タッチポイントにおける顧客のニーズが把握しやすくなるため、きめ細かく顧客体験を検討・提供できるようになります。

カスタマージャーニーについて詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。

カスタマージャーニーとは|マップの作り方から事例まで【B2C・B2B】
https://jp.creativesurvey.com/blog/posts/2020-01-17/

数値目標の設定・測定

顧客体験は心理的な価値で構成されているため、売上や利益のように明確に数値化して推移を追うことは困難です。しかし、時代やニーズの変化に応じて顧客体験をブラッシュアップしていくには、目安となる評価指標や数値目標を設定し、成果を検証するプロセスが不可欠です。

そのため、昨今ではCXのKPIとして次のような指標が用いられています。

NPS®(ネットプロモータースコア)
CES(顧客努力指標)
LTV(ライフタイムバリュー:顧客生涯価値)
CVR(コンバージョン率)
解約率
顧客満足度

これらはアンケート調査やアクセス解析などで測定することができます。自社に合った指標で継続的にCXを点検することで、課題の可視化につながります。

以下の記事も参考にしてください。

NPS®で顧客ロイヤリティを可視化|アンケートの実施手順と作成・運用のポイント
https://jp.creativesurvey.com/blog/posts/royalty-20220114/
顧客満足度調査(CS調査)|成功のポイントとアンケート項目・分析手法の例
https://jp.creativesurvey.com/blog/posts/cssurvey-20220203/

アプローチのオムニチャネル化

オムニチャネルとは、チャネル間の連携や情報の統合・共有がスムーズになされている状態です。顧客は商品の検討や購入にあたって、店頭・Webサイト・コールセンターなど様々なチャネルを利用します。その際、たらい回しや、チャネルによって対応や情報の質にバラつきがあると、顧客に不信感を与えてしまいます。

オムニチャネル化を実現することで、購買プロセス全体で顧客に一貫性のある体験を提供することができます。シームレスな体験は顧客の満足度向上につながります。

CXの質を高める方法については、以下の記事も参考にしてください。

DXで顧客体験(CX)を向上させる取り組みのポイント・事例
https://jp.creativesurvey.com/blog/posts/cxdx-20210413/
CX改善に向けて組織的に取り組むポイントとは|CXリーダーの役割とVOCの活用
https://jp.creativesurvey.com/blog/posts/cx_20220606/
CX向上のためのパーソナライズとは|重視される理由とパーソナライズの手法例
https://jp.creativesurvey.com/blog/posts/cx_20220705/

一貫性のある顧客体験を提供しよう

機能や価格で差別化を図る従来の手法が通用しづらくなっている昨今、CXは現代マーケティングに不可欠な概念となっています。購買プロセスを通して一貫性のある良質な体験価値を提供できれば、顧客に心から満足してもらえ、購入意欲やリピート意向を高めることが可能です。ここで紹介した基礎知識や取り組み方法を参考に、シームレスな顧客体験を提供しましょう。

※ネット・プロモーター、ネット・プロモーター・システム、NPS、そして NPS 関連で使用されている顔文字は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの登録商標です。

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