NPS®で顧客ロイヤリティを可視化|アンケートの実施手順と作成・運用のポイント

近年、業績向上につながる指標として顧客ロイヤリティの重要性が高まっており、その可視化のためにNPS®を採用する企業が増えています。今回は、顧客ロイヤリティの重要性やNPS®調査の実施手順、効果的に運用するポイントについて解説します。

顧客ロイヤリティを測定する重要性

顧客ロイヤリティを測定する重要性

顧客が企業や商品・サービスに対して抱く愛着や信頼を表す「顧客ロイヤリティ」。

近年、新規顧客獲得だけではなく既存顧客の維持に注力する企業が増えており、顧客ロイヤリティの重要性も高まっています。

そもそも、企業が顧客ロイヤリティを高めると、どのような恩恵が得られるのか。まずはメリットから確認しましょう。

顧客ロイヤリティを高めるメリット

主に5つのメリットが期待できます。

◆リピート率の向上
  特定の商品・サービスへの愛着度が高い顧客は、同じものをくり返し購入・利用する傾向があります。

◆解約率の低下
  顧客ロイヤリティが高まれば、競合他社の商品にスイッチするリスクを低減できます。

◆顧客単価の向上
  企業やブランドに対する顧客の信頼性を醸成できていれば、アップセルやクロスセルにつながりやすく、顧客単価がアップします。

◆口コミによる新規顧客の獲得
   ロイヤリティが高い顧客は、身近な人に商品やサービスを勧める傾向があります。SNSにポジティブな口コミを投稿することもあり、新規顧客獲得に寄与します。

◆LTVの最大化
  リピート購入やアップセル・クロスセルによる顧客単価の向上は、LTV(顧客生涯価値)の向上・最大化につながります。

特に、顧客との継続的・長期的な関係構築が重要なSaaSやサブスクリプション型のビジネスでは、顧客ロイヤリティ向上による恩恵は大きいものです。

顧客ロイヤリティやLTVについては以下の記事も参考にしてください。

顧客ロイヤリティを向上させるためには|そのメリットと具体的に上げる方法
顧客ロイヤリティの向上事例4選|ロイヤリティを高めるためのポイントとは
NPS®とLTV・収益との相関性とは|次の打ち手につなげるための分析とアンケート方法

まずは、NPSで可視化しよう

顧客ロイヤリティは抽象的な概念ですが、NPS®(ネットプロモータースコア)調査で測定・数値化することができます。

NPS®では、商品・サービスに対する「満足度」ではなく、「他者への推奨度」をシンプルな設問で聞くことで顧客ロイヤリティを可視化します。

NPS®は企業の業績や成長性との関連性が高いとされ、幅広い業種・業界での活用が広がっています。

NPS®の概要や計算方法については、以下の記事を参考にしてください。

NPS®(ネットプロモータースコア)とは?その意味と計算・調査方法の解説
NPS®(ネットプロモータースコア)とは?|顧客満足度との違いやメリット・導入事例まで紹介
NPS®とLTV・収益との相関性とは|次の打ち手につなげるための分析とアンケート方法

NPS®調査の実施手順

NPS®調査の実施手順

NPS®調査は以下の手順で実施します。

NPS®調査の目的・調査方法を決める

NPS®調査は「リレーショナル調査」と「トランザクショナル調査」の2種類に大別され、それぞれ目的や実施タイミングが異なります。

<リレーショナル調査>
●企業やブランドに対する顧客体験全体を評価
●全体評価への影響が大きいタッチポイントを特定
●競合他社との比較で自社のポジションを把握
●実施頻度は1年に1~2回程度

<トランザクショナル調査>
●タッチポイントごとの顧客体験を評価
●どの顧客体験に、どのような課題があるかを具体的に把握
●顧客体験の直後(問い合わせ後、商談後、商品購入後など)に実施

例えば、顧客とのタッチポイントが多く、一連の顧客体験のどこに課題があるかを洗い出したい場合はリレーショナル調査が適しています。また、特定の顧客体験を改善したい場合は、トランザクショナル調査で課題を深堀りします。

まずはNPS®調査の目的を明確にし、適した調査タイプを選びましょう。

配信方法を決める

一般的に、NPS®調査にはWebアンケートが用いられることが多いです。

Webアンケートであれば、オンライン・オフラインを問わず様々なタッチポイントに導入しやすく、配信・回答・回収までのタイムラグを最小限に抑えることが可能です。

配信方法の一例を以下に挙げます。

●メールやメルマガでアンケートURLを配信
●電話対応後にSMSで配信
●店舗会計時にアンケート用QRコードを印字したカードやレシートを提示
●ECサイトの購入完了画面にアンケートURLを提示

アンケートを作成・配信する

NPS®調査の基本項目は以下の3つです。

●他者への推奨度(NPS®スコア)
  質問例:あなたは、この商品を友人や同僚に薦めたいと思いますか?

●推奨度の理由(フリーコメント)
  質問例:上記のように評価された理由を自由にご記入ください。

●ロイヤリティの構成要素(評価したい顧客体験を提示)
  質問例:商品に関する各要素についての満足度をお答えください。

上記のほか、目的に応じて設問を追加します。その際、カスタマージャーニーマップを作成するとタッチポイントごとの質問項目を洗い出しやすいです。

ただし、設問が多過ぎると回答率が低下することがあるため、5分以内で回答できるくらいの設問数に厳選しましょう。

また、NPS®調査の運用にはアンケートツールが便利です。作成から配信、集計まで一元管理でき、顧客管理システムと連携可能なものもあります。

以下の記事も参考にしてください。

アンケートの回答率を上げるデザイン|基本の作り方と作成時のポイント
BtoBの顧客満足度アンケート(CS調査)| 回答率を高める10のポイント

NPS®の運用効果を高めるポイント・注意点

NPS®の運用効果を高めるポイント・注意点

NPS®を運用・分析する際は、以下のポイントを意識しましょう。

スコアは時系列で追う

一般的に、日本人はアンケートなどで極端な選択肢を避ける傾向があり、11段階で評価するNPS®では5や6に回答が集まりやすいです。5や6は「批判者」に分類されるため、スコアがマイナスになることも少なくありません。

しかし、NPS®スコアの絶対値にはあまり意味がないため、マイナスになったとしても問題はありません。重要なのは、定期的・継続的にNPS®調査を実施し、時系列で推移を追うことです。

業界内の自社のポジションを確認する

NPS®のスコアはサービス特性や顧客属性などで変動するため、自社のスコアは同じ業界・業種のものと比較し、業界内でのポジションを確認しましょう。

参考までに、NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社が実施した調査よる、業界別の平均値(2020年)の一例を以下に挙げます。
参考:https://www.nttcoms.com/service/nps/report/

●銀行:-46.5ポイント
●ダイレクト型自動車保険:-28.6ポイント
●代理店型自動車保険:-48.7ポイント
●クレジットカード:-38.6ポイント
●不動産管理会社(マンション):-49.2ポイント
●ネットスーパー:-19.7ポイント
●アパレルECサイト:-21.7ポイント
●セキュリティソフト:-26.1ポイント
●大手携帯キャリア:-52.7ポイント
●転職関連サイト:-42.6ポイント

特定の競合他社をターゲットとしている場合は、NPS®調査でその企業のスコアも測定しておくと、差異を明確に捉えやすいです。

推奨者の声も分析する

NPS®の分析では批判者の声に意識を向けがちですが、批判者には自社のターゲット層ではない人が多く含まれているケースもあります。ターゲット外の顧客の要望を中心に改善策を検討すると、商品・サービスの方向性がブレてしまう可能性があるため分析の際は注意が必要です。

また、スコアを向上させるには、推奨者の声を分析することも重要です。自社商品の何に満足し、どこが優れているのかを把握すれば、自社ならではの強みをさらなるサービス改善・強化に役立てることができます。

PDCAを回す体制を構築する

NPS®では「実施→分析→改善」のサイクルをくり返すことに意味があります。

そのため、調査結果は経営層やマネジメント層だけが把握するのではなく、各タッチポイントの関連部門の担当者にも速やかにフィードバックを行い、次のアクションにつなげる体制を整えることが肝要です。

特に、体験直後に実施するトランザクショナル調査の自由回答欄にクレームや要望が書いてあった場合は、担当者が即フォローしなければ顧客に不信感を与えてしまいます。

また、PDCAを回す体制を構築すればNPS®が社内に定着しやすくなり、施策の改善スピードも向上します。

NPS®を効果的に運用しよう

競争が激しい市場で勝ち抜くには、売上の多くを占める既存顧客のロイヤリティを高め、いかに良好な関係性を維持し続けるかが重要です。NPS®を活用すれば、改善施策の効果や顧客との関係性の推移を時系列で追うことができ、市場における自社の立ち位置も把握しやすくなります。

ここで紹介したポイントを参考に、NPS®を適切に運用して顧客ロイヤリティ向上につなげてください。

※ネット・プロモーター、ネット・プロモーター・システム、NPS、そして NPS 関連で使用されている顔文字は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの登録商標です。

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