勝負の分かれ目?営業ヒアリングの重要性と商談の質を高めるコツ
顧客への提案前に行なわれる営業ヒアリング。一連の営業プロセスにおいてヒアリングは最も重要なステップであり、提案の質に大きな影響を与えます。記事では、最低限押さえておきたい営業ヒアリングの心構えやコツを解説します。ひと通りチェックし、顧客との良好な関係性構築につなげましょう。
営業プロセスにおけるヒアリングの位置づけ・重要性
最初に、営業ヒアリングの位置づけや重要性を確認しましょう。
ヒアリングは提案の質を左右する
営業ヒアリングは商談相手の課題やニーズを探る重要なステップです。 一般的に、営業担当者は以下のようなプロセスで顧客と接点をもち、商談を進めます。
1.顧客の情報収集
2.ヒアリング
3.提案・見積
4.受注可否・交渉
5.納品
6.アフターフォロー
営業プロセスの初期段階に行なわれるヒアリングは、事前の情報収集だけでは把握できない潜在的なニーズや、自社商品が課題解決に貢献できる領域などを聞き出せるチャンス。質の高いヒアリングができれば、提案の精度が高まり、成約に至る可能性が高まります。
反対に、ヒアリングの質が低ければ提案の精度も下がるので、顧客の心をつかむのは難しくなるでしょう。
また、顧客が購買に至るまでの行動はカスタマージャーニーと呼ばれ、顧客のインサイトの推移を分析してマーケティングや営業に活かす企業が増えています。顧客のニーズが多様化するなか、営業ヒアリングは顧客理解を深めるために欠かせず、商談の成否に大きく影響します。
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あなたは大丈夫?心証を悪くするNG例
ヒアリングで「うまく情報を引き出せない」「よい提案に結びつけられない」という場合は、自分が以下のようなNG行動をとっていないか点検してみましょう。
NG例1:「こちらの商品にご興味はありますか」といきなり商品への興味や購入意思をたずねる
NG例2:「このたび新機能が追加されまして…」など、一方的に商品の特徴・機能について詳しい説明をする
NG例3:「弊社のサービスを導入していただければ解決できますね」と、自社商品が必要だと誘導する
ヒアリングは顧客理解を深める段階なので、「売り込み」のような印象を与えると相手に警戒されてしまいます。ヒアリングで心証を悪くすると、提案の機会さえ与えてもらえなくなる可能性があるので注意が必要です。
最低限押さえておきたい営業ヒアリングの心構え
有意義な営業ヒアリングを行なうには、次のポイントを意識することをおすすめします。
・ 準備を怠らない
・ 話しやすい雰囲気を作る
・ 傾聴する
・ 相手の立場に立って話す
ひとつずつチェックしていきましょう。
準備を怠らない
ヒアリングは事前の準備が重要です。ホームページで会社の規模感や事業内容、企業理念といった概要を把握するだけではなく、その企業が手がけている商品・サービスの市場での位置づけ・競争環境についても調べておきましょう。
業界のトレンドや市場構造を理解したうえでヒアリングに臨めば、相手の課題・ニーズについて一歩踏み込んだ話しができるようになり、先方からも有用な情報を引き出しやすくなります。
話しやすい雰囲気を作る
ヒアリングの際は、相手が話しやすい雰囲気づくりを心がけましょう。特に初対面の場合、対面してすぐに困りごとやニーズを聞き出すのは難しいです。
相手の緊張をほぐすには、本題に入る前に「ラポール(raport)」を築くことが大切です。ラポールとは「打ち解けた話ができる関係性」を指す心理学用語で、販売・営業などのビジネスシーンでも重視されています。
ラポールを意識して、まずは天気や趣味、オフィスの立地など無難な話題でリラックスした雰囲気を作りましょう。このような、相手の緊張をほぐす手法はアイスブレイクとも呼ばれ、ヒアリング・商談でもよく用いられます。
傾聴する
優れた営業担当者には「傾聴力」があります。営業担当者のなかには、スキルアップのためトーク力やプレゼン能力の向上を目指す人もいますが、まず意識すべきは「相手の話に真剣に耳を傾ける姿勢」でしょう。
話の途中なのに自分の意見をはさんだり、結論をまとめようとしたりする人は、相手からの信頼が得られにくいです。「もっと話したい」「相談したい」と思ってもらうには、真摯に話を聞き、必要に応じて共感の態度を示すことが大切です。
相手の立場に立って話す
営業ヒアリングは、先方の悩みや隠れたニーズを顕在化させ、共有するための場です。「弊社は〜」「このサービスは〜」と、こちら側を主体として話を展開すると、相手は押し付けがましさを感じてしまいます。「売りたい」という意識が強いと、自分主体の話し方になりがちなので、相手を主語にして話すようにしましょう。
聞いておくべき基本項目とヒアリングのコツ
最後に、営業ヒアリングで確認しておくべき基本項目と、効果的なヒアリングのポイントを紹介します。
基本的なヒアリング項目
営業ヒアリングは「BANT」や「4W2H」に沿って聞くのがおすすめです。 BANTは代表的な営業ヒアリングのフレームワークで、以下の4項目を指します。
・ Budget:予算(どのくらい予算があるか)
・ Authority:決裁権(誰が意思決定を行なうのか)
・ Needs:ニーズ・必要性(何を実現したいのか)
・ Timeframe:導入時期(いつまでに必要か)
4W2Hは以下の通りです。
・ What:何が欲しいのか、何を改善したいのか
・ Who:誰が決裁するのか
・ When:いつから始めたいか
・ Where:どこで必要なのか
・ How:どのように用いるのか
・ How much:いくらで利用したいのか
ヒアリングの場では話があちこちに飛ぶことがありますが、上記のような基本フレームを意識しておけば聞き忘れを防げます。
これらに加え、意思決定の基準や他社商品の検討状況も押さえておきたいところです。
効果的な質問の順番
ヒアリングは相手が答えやすい質問から投げかけるのがセオリーです。
営業担当者が最終的に知りたいのは「商品を購入してくれるか」という未来の話ですが、冒頭から不確実な先の話を聞かれても、相手は答えに窮してしまいます。
ですから、まずは相手が深く考えなくても答えられる「現状」に関する質問から始めましょう。次に、そこに至るまでの経緯・背景などの「過去」について確認します。そして、現在・過去についての認識を共有したうえで、「未来」の課題解決に向けた考えを聞く流れにすればスムーズです。
気づきにつながる「問いかけ」をする
相手から情報を引き出そうとするだけではなく、こちらから気づきにつながる質問を盛り込むのもおすすめです。
ヒアリングでは、確認したい項目に沿って「〜ですか?」「〜についてはどうですか?」とさまざまな質問をすることが多いですが、一歩間違えると尋問のようになってしまいます。相手にストレスを感じさせると、ヒアリングがうまくいかなくなる可能性があるため要注意。
スムーズにヒアリングを進めるには、質問の合間に、相手の話を受けた“問いかけ”をする方法があります。例えば、「こういうニーズもあるかもしれませんね」「〜にも原因がありそうですね」など。
問いかけが相手の気づきにつながれば、「そういえば…」と進んで話してもらえる可能性があります。
相手が話しやすくなる簡単テクニック
相手に気持ちよく話してもらうには、相づちなどのリアクションをしっかりと取り、傾聴の姿勢を示すことが重要です。
リアクションのバリエーションとして、以下のようなテクニックも効果的です。
・ オウム返し:相手が話した内容をくり返す
・ ペーシング:相手が話すテンポやトーンに合わせる
・ ミラーリング:動作の呼吸を合わせる(相手が考えているときは話しかけない/相手が笑ったら一緒に笑うなど)
これらは、会話の際に相手と波長を合わせる手法です。人は、話すペースや声のトーン、間の取り方などが合う相手に対して安心感や信頼感を抱きやすいものです。
やりすぎると不自然になるため注意が必要ですが、要所要所にリアクションを入れば、相手に「話しやすい」と感じてもらえるでしょう。
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営業ヒアリングは、商談がうまくいくかどうかの分岐点と言っても過言ではありません。ヒアリングのスキルを高めたい方は、お伝えしたポイントやテクニックを取り入れてみてください。相手に「話しやすい」「この人に相談したい」と思ってもらえれば、隠された課題やニーズについても情報を得ることができ、有益な提案・取引につながるでしょう。