市場調査のPEST分析とは|やり方とコツ・事例をわかりやすく解説

PEST分析は自社に影響を与える外部環境要因を「政治・経済・社会・技術」の4要素に分けて分析する手法です。マーケティングや営業活動などのあらゆる事業戦略の土台となるフレームワークです。ここではPEST分析でわかることや目的、進め方、事例まで紹介します。

PEST分析とは

PEST分析とは、自社が置かれている外部環境を分析し、事業戦略に活かしていくためのフレームワークのことです。自社や商材に影響を及ぼす外部環境要因を政治(Politics)・経済(Economy)・社会(Society)・技術(Technology)の4つの観点から分析します。

外部環境分析は世の中の流れを広い視点で捉えるマクロ環境分析と、自社商材にまつわる顧客動向や競合動向などに着目するミクロ環境分析に大別され、PEST分析はマクロ環境分析に分類されます。マクロ環境は一企業の努力だけでは変えられない外部環境、ミクロ環境は自社の戦略・施策によって変えられるものということもできます。

まずはPEST分析でわかること、実施する目的について見ていきます。

PEST分析でわかること

PEST分析では、自社を取り巻く外部環境が現在または近い未来にどのような影響を及ぼすのかを明らかにすることができます。

代表的な活用例を以下に挙げます。

●新たに参入する市場の可能性を探りたい
●社会情勢の変化に対応するための事業戦略に役立てたい
●撤退すべき事業を見極めたい
●大きな方向転換が必要な事業を見極めたい

たとえば、コロナ禍ではオンラインを活用したコミュニケーションや購買活動が加速しました。また、テクノロジーの進化とともにSaaS企業が台頭し、自社商材の撤退やピボット(方向転換)が必要となった企業もあるでしょう。

外部環境の変化による影響を多角的に捉えることで、攻めと守りの先手を打てるようになります。

PEST分析の目的

PEST分析を行う目的は、世の中の流れや変化をつかんだ上で事業の成長戦略に活かしていくことです。どのようなビジネスであっても、外部環境の影響を大きく受けます。変化が激しく先行き不透明な現代において市場調査を行わないまま事業を展開するのは、誤った意思決定につながるリスクをはらんでいると言えるのです。

逆に、市場の潮流を見極められれば、新たなビジネスチャンスを発見できることがあります。そのため、PEST分析はあらゆる戦略・施策を決める際の土台として実施されることが多くなっています。

PEST分析の4要素とは 

PEST分析の4つの要素について詳しく見ていきましょう。

Politics(政治)

政治的環境要因とは、自社に影響がある政治や法律、税制面などの動向を指します。主な例を以下に挙げます。

●国による政策
●法改正
●規制の強化・緩和
●税制の変化
●補助金・助成金制度の変化

政治的要因はビジネスにおけるルールチェンジをもたらすため、非常に重要な要素です。たとえば、電子帳簿保存法や個人情報保護法などの法改正により成長が加速したSaaS企業もあれば、事業の転換が必要となった企業もあります。海外進出している企業の場合は、関税引き上げといった政策のほか、進出国の政権交代による影響を受けることもあります。

内容によって、自社にとって機会となることもあれば脅威となるケースもあるため、常に最新情報を収集して早期に対応できるようにしておくことが必要です。

Economy(経済)

経済的要因は、売上やコストなどに大きな影響を与える経済動向を指します。主な項目例は以下の通りです。

●景気
●物価
●株価
●為替
●金利
●賃金
●経済成長率
●消費動向
●失業率
●インフレ・デフレの動向

たとえば、為替変動により仕入コストが高騰した場合、利益が圧迫されるため対策が必要となります。経済動向は長期スパンで推移していくため、中長期の予測を立てながら対応することが大切です。

Society(社会)

社会的要因とは、消費者の意識やライフスタイル、トレンドの変化などを指します。主な項目例には以下のものがあります。

●人口動態・世帯構成の変化
●社会インフラの変化
●消費者の意識・ライフスタイルの変化
●流行
●教育・文化の変化

社会的要因は、マーケティング担当からすると馴染みのある要素といえるでしょう。たとえば、共働き世帯の増加により、家事・育児をサポートする商品・サービスが増加しました。また、SNSの浸透によって購買行動は大きく変化しています。社会的要因を捉えることで、価値観やニーズの変化にいち早く対応できるようになります。

Technology(技術)

技術的要因とは、ビジネスに影響をもたらす革新的なテクノロジーや技術的なトレンド、インフラ、研究開発の動向などを指します。主な項目例を以下に挙げます。

●ビッグデータ
●AI
●IoT
●設計技術
●生産技術
●特許

技術的要因は、事業の成長やバリューチェーンに影響を与える要素です。たとえば、ビッグデータの解析技術が進んだことで、マーケティングのデジタル化が加速しました。また、AIや3D技術、ネットワーク技術、リサイクル技術といった先端テクノロジーを先取りしてイノベーションを創出している企業もあります。

技術的要因を捉えることで、新たな市場を生み出したり競争優位性を獲得したりするなど、事業を成長に導く要素を見極めやすくなります。

PEST分析のやり方

PEST分析の進め方を5つのステップに分けて見ていきます。

1.情報収集

まずは「政治・経済・社会・技術」の4つの外部環境要因についての情報を収集します。PEST分析に用いる情報は広範囲に及ぶため、やみくもに集めようとすると膨大な時間がかかってしまうため注意しましょう。自社への影響度合いを踏まえながら、ピックアップしていくのが効率的に進めるポイントです。

また、正確な情報を集めることも重要です。国が公表している統計データや調査機関によるレポート、業界団体や報道機関が発信している情報など信頼性の高い情報を収集します。

2.PESTの4要素に分類

収集した情報を政治・経済・社会・技術の4つの要素に分類します。どこに分類すべきか迷うような情報もありますが、PEST分析では正確に分類できているかという点よりも、自社に影響を及ぼす情報を精査することが重要ということを押さえておきましょう。

3.環境要因を事実と解釈に分類

次に、4つに分類した外部環境要因を事実と解釈に分けて整理します。PEST分析では事実に基づいた分析が重要になりますが、情報を整理していく中で主観的な評価や個人的な見解といった要素が混じってしまうケースがあります。事実と解釈に分けるステップを入れることで、誤った分析結果とならないように抑止することができます。

事実と解釈の違いは、以下を参考にしてください。

●事実:実際に起きた事柄や統計データ
●解釈:実際に起きた事柄や統計データから導き出せること

4.機会と脅威に分類

ステップ3で整理した事実を「機会」と「脅威」に分けます。機会は自社にとって有利に働くと想定される要因、脅威はリスクやデメリットとなる要因です。

一見すると業界全体にとって追い風になると思える要因でも、自社の事業においては不利になるケースもあります。逆に脅威と思える要因であっても、視点を変えれば競合と差別化を図れるなどビジネスチャンスになることがあります。そのため、一般的な影響ではなく「自社にとってどうか」という視点で整理することが重要になります。

また、機会・脅威は短期的に起こり得ることと、長期的に変化が予想されることがあります。時間軸についても整理しておくと、議論をスムーズに進めやすくなります。

5.戦略への反映

整理した機会と脅威をもとに事業戦略に反映します。戦略策定では、機会を逃さず脅威は避けることが原則です。重要度や緊急度、成長性などを踏まえながら戦略を具現化していきます。

PEST分析の事例

PEST分析についての理解を深めるため、事例を見ていきましょう。

コロナ禍の例

コロナ禍では業界を問わず多くの企業が影響を受けました。実際には自社への影響を鑑みて情報を収集・分析しますが、代表的な要因の例を以下に挙げるので参考にしてください。

●P(政治)
・外出規制
・経営支援のための補助金・助成金の給付
・世界各国でロックダウン

●E(経済):
・オンラインショップやテイクアウトの利用が増加
・テレワーク関連事業の売上増
・旅行・レジャー業、飲食業の売上が激減

●S(社会)
・SNSやネットを利用したコミュニケーションの活発化
・3密を避けた新たな生活様式の浸透

●T(テクノロジー):
・オンライン接客ツールやバーチャルアプリの加速
・非接触型のテクノロジーが進化

旅行・レジャー業界を例に挙げると、コロナ禍で大打撃を受けた一方で、巣ごもりによる運動不足への懸念から3密を避けながら体を動かせるゴルフの需要が増加しています。こうした環境要因を踏まえてビジネスを展開している企業では、新たな機会を得ているケースもあります。

SaaS業界の例

クラウド型のサービスを提供するSaaS業界の例を見ていきます。提供しているサービスのジャンルによっても変わりますが、主な要因の例を以下に挙げます。

●P(政治)
・DX化の推進
・テレワークの浸透
・企業のIT化推進のための補助金制度

●E(経済)
・クラウドサービス市場は年々拡大傾向

●S(社会)
・デジタルリテラシーにおける世代間格差
・個人情報についての意識の高まり

●T(テクノロジー)
・AI、IoT、ビッグデータ技術の進化
・最新技術導入コストの増大
・新たな参入者の増加

SaaS業界はとくに変化が激しい傾向があるため、常に最新の動向を押さえておくことが重要です。

ユニクロの例

ユニクロは、コロナ禍においても成長戦略を推し進めたことで注目を集めています。おうち時間の増加を見越して自宅で快適に過ごせるウェアを提案しているほか、ビデオ会議に適した服装という新たな視点でビジネスを展開しています。多くのアパレル事業者が苦戦する中で、活路を見出している好事例といえるでしょう。

PEST分析で世の中の動きや変化の兆しを的確に捉える

PEST分析は自社を取り巻く外部環境を的確に捉えるための分析手法であり、マーケティングや営業活動における戦略策定の土台となるものです。世の中の動きや変化の兆しをつかむことで、脅威を機会に変えていくことも可能です。ぜひ有効活用してください。

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