従業員満足度をアンケートでモニタリング!ES調査の意義・基本ポイント・テンプレート
多くの企業で人手不足が慢性化している昨今、優秀な人材を確保するために「従業員の自社に対する満足度」に着目し、従業員満足度調査を実施する企業が増えています。今回は、従業員満足度調査の代表的なアンケート項目やテンプレート、実施の基本ポイントを紹介します。自社で実施する際の参考にしてください。
なぜ必要?従業員満足度調査の目的と意義
少子高齢化・労働力人口減少にともない、多くの企業は慢性的な人手不足に陥っています。そんななか、注目が高まっているのが「従業員満足度調査」です。
まずは、従業員満足度の意味や企業に与える影響、従業員満足度調査を実施する意義を確認しておきましょう。
そもそも、従業員満足度とは?
従業員満足度(ES:Employee Satisfaction)とは、従業員が自社の企業風土や仕事内容について満足しているか否かをあらわす指標です。従業員満足度にはさまざまな要素が含まれていて、主に以下のような項目が挙げられます。
・ 経営ビジョン
・ 仕事内容
・ 給与
・ 上司のマネジメント
・ 人間関係
・ オフィス環境
・ 福利厚生
会社に対する総合的な満足度は、これらの要素が組み合わさったものです。従業員満足度調査(ES調査)も要素別に分けて測定することで、従業員が「何に満足し、何に不満があるのか」を具体的に把握できるようになります。
従業員満足度が企業に与える影響
これまで、多くの日本企業は顧客満足度を重視し、従業員満足度は二の次となっていました。しかし、従業員満足度が企業に与える影響をないがしろにすることはできません。なぜなら、従業員の満足度が低ければ、仕事に取り組むモチベーションや自社に対するロイヤリティも低い可能性が大いにあるからです。
従業員満足度の高低はその人の仕事の質を左右しかねず、労働生産性や顧客満足度にも影響を及ぼします。ひいては企業の業績や成長性にもかかわることなので、経営層は「従業員が前向きに仕事に取り組めているか」という意識面に目を向け、モニタリングする必要があるのです。
従業員満足度を測定し、従業員が意識高く快適に働けるような取り組みにつなげれば、以下のような効果が期待できます。
・ 従業員のモチベーション向上
・ 業務の生産性の向上
・ 離職率の低下
・ 採用力の向上
従業員満足度を高めるには、まず現在の従業員満足度をアンケートで把握することから始めましょう。
従業員満足度アンケートの代表的な設問例・テンプレート
従業員満足度調査の結果を有効活用するには、適切なアンケート項目を設定することが大切です。アンケートの代表的な質問項目を要素別にチェックしていきましょう。
基本情報・属性
回答者の基本的な属性情報は、アンケート結果を集計・分析するために必要です。従業員満足度調査は匿名で行うことが多いため、基本的に氏名は不要です。
・ 性別
・ 年齢
・ 所属部署
・ 役職
・ 勤続年数
仕事内容・業務量
普段の業務内容や業務負荷に対する満足度・納得度を確認する項目です。
・ 仕事のやりがい
・ 成長環境(知識・スキル)
・ チャレンジ環境
・ 裁量権
・ 業務量
・ 仕事の難易度
・ ワークライフバランス
上司のマネジメント
上司の業務姿勢や回答者との関係性を確認する項目です。
・ 業務方針
・ 業務の指示方法
・ 人材育成についての意識・行動
・ 関係性
・ 尊敬度
組織風土・人間関係
職場の雰囲気やコミュニケーションについて確認する項目です。
・ 人間関係
・ チームワーク
・ 助け合う関係性
・ 意見を言いやすいか
会社のビジョン・将来性
自社の経営層や経営方針に対する満足度・共感度を問う項目です。
・ 経営理念やビジョン
・ 戦略
・ 成長性
コンプライアンス
職場のコンプライアンス意識や法令遵守の状況を確認する項目です。
・ 職場の法令遵守の状況
・ 職場のハラスメントの有無、モラル意識
・ 個人情報や機密情報の取り扱い
人事制度・待遇
人事評価や給与・賞与などの待遇面の満足度・納得度を確認する項目です。
・ 自身の評価に対する納得感
・ 人事評価制度の透明性
・ 異動や昇級の公平性
・ 給与・賞与・手当
・ 福利厚生の充実度
総合評価
項目ごとの質問とは別に、自社に対する総合的な満足度を確認します。
・ 総合的な満足度
・ 総合的な満足度の理由(自由記述)
・ 今後も自社で働き続ける意向
・ 自社に対する愛着の度合い
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従業員満足度調査の実施フローと基本ポイント
最後に、従業員満足度調査の流れと、実施する際に押さえておきたいポイントを確認しておきましょう。
基本的な実施フロー
アンケートの目的の明確化
従業員満足度調査を行うにあたり、まず問題意識や目的を明確にします。例えば「若手社員の離職率を下げる」「人事施策の重点課題を見極める」などです。アンケートを実施すること自体が目的化してしまうと結果を有効活用しにくくなるため、「何のために従業員満足度を測定するのか」をよく検討しておきましょう。
調査対象者の選定
次に、アンケートの目的に応じた対象者を選定します。従業員満足度調査は全従業員に実施するほか、「入社5年目未満」「管理職以外」などで対象者を絞るケースもあります。会社・仕事に求めるものは社歴や役職によって異なるため、必要に応じて対象者を絞り、事前に告知しておきましょう。
アンケートの作成・実施
目的・対象者を絞ったら、アンケートを作成します。質問項目は、あらかじめ検討したアンケートの目的に沿って考えます。先述した質問項目をすべて盛り込む必要はありません。例えば、業務内容やマネジメントに特化した満足度を把握したい場合は、給与や福利厚生に関する質問は省略します。
全従業員を対象に、満足度を網羅的に測定したい場合は、前章で紹介した項目(仕事内容・上司・人事評価・組織風土など)をバランスよく盛り込むのが基本です。
アンケートを作成したら対象者に配布し、期日までに回収します。
集計・フィードバック
アンケートの結果は集計・分析し、得られた知見をレポートにまとめます。やみくもに集計するのではなく、「当初の問題意識に対して実態はどうだったか」「どこを重点的に改善すべきか」などの視点をもって分析することが大切です。
そして、抽出された課題に対する対策案を検討します。対策案を含めた詳細のレポートは経営層に報告し、課題を共有しましょう。従業員には、調査結果をわかりやすくまとめた簡易版をフィードバックするのがおすすめです。
従業員満足度調査の有用性を高めるポイント
効果的な従業員満足度調査を実施する基本ポイントは以下のとおりです。
設問数を増やしすぎない
質問の数が多すぎると回答者の負担となり、回答の精度が落ちてしまうことがあります。せっかくの機会なのであれもこれもと質問を追加したい気持ちはわかりますが、質問は最低限必要な項目に絞ったほうが回答の質を高められます。アンケートは目的・対象者をふまえ、できる限りコンパクトにまとめましょう。
匿名性を確保する
従業員満足度調査は匿名性を確保することが重要です。なぜなら、回答者が特定されるアンケートだと従業員が本音で回答しにくくなるからです。そのため、属性については「所属チームまでは問わない」「勤続年数の幅を5年単位にする」など個人を特定しにくい訊き方にしましょう。
継続的に実施する
従業員満足度調査が1回のみで終わってしまうと、対策による従業員満足度の変化を追うことができず、効果を検証できません。従業員からも「あのアンケートは意味があったのか」と不満が出てくる可能性もあります。
そのため、従業員満足度調査は単発で終わらせず、年1回など定期的・継続的に実施しましょう。そうすれば、従業員満足度を時系列で把握でき、対策・効果検証のPDCAを回せるようになります。
調査会社やアンケートツールを活用する方法も
従業員満足度アンケートは紙またはWebで実施します。配布・回答・集計の効率性を高めたい場合はオンラインで完結できるWebアンケートが適しており、アンケート作成ツールを導入するのも一案です。
調査設計からコンサルティングしてもらいたい場合は、調査の設計から分析まで代行する調査会社に依頼するのがおすすめです。
企業の業績を左右する従業員満足度
従業員満足度は、企業の業績や成長性を左右する指標のひとつと言っても過言ではありません。従業員満足度調査によって課題を洗い出し、適切な対策を講じて従業員の満足度や自社に対する愛着が増せば、人材が定着しやすくなります。
ここで紹介したテンプレートや基本ポイントを参考に、ぜひ従業員満足度調査を実施してみませんか。