カスタマーマーケティングとは|アップセル・クロスセルとリテンションの考え方
こんにちは、クリエイティブサーベイ法人チームです。顧客を獲得した後に焦点をあてるカスタマーマーケティングは、カスタマーサクセスと並び、ビジネスをスケールさせるポイントとして昨今注目を集めています。ここでは、カスタマーマーケティングとカスタマーサクセスの関係性、リテンションやアップセル・クロスセルの考え方を解説します。
カスタマーマーケティングとは
まずは、カスタマーマーケティングの意味について見ていきましょう。
カスタマーマーケティングの意味
カスタマーマーケティングとは、既存顧客に向けたマーケティング活動全般を指します。アップセル・クロスセルを含めたLTV(顧客生涯価値)の向上や顧客ロイヤルティの向上、継続利用を促すリテンションマーケティング、口コミ促進などもカスタマーマーケティングに含まれます。
カスタマーマーケティングが注目される背景
従来のマーケティングとカスタマーマーケティングで何が違うのかという点に着目すると、主たる目的が新規顧客の獲得にあるのか、既存顧客に焦点をあてているのかという点で異なっているといえます。とはいえ、既存顧客に対するマーケティング自体は目新しいものではなく、実際に取り組んできたというマーケターも多いでしょう。
ではなぜ、昨今、カスタマーマーケティングというキーワードに注目が集まるのか。その理由のひとつがサブスクリプションモデルの台頭です。SaaSを始めとしたサブスクリプションモデルでは、既存顧客のロイヤルティを高め、LTVを向上させることがビジネスの要となります。
そのため、サービス・商品の購入後にフォーカスするカスタマーマーケティングの考え方は、自社の利益を安定的かつ長期的に生み出すうえで重視すべきという認識が広がりつつあります。
カスタマーマーケティングにより期待される成果
カスタマーマーケティングに注力することで期待される成果は、大きく次の2つです。
販売コストの最適化
「1:5の法則」として知られるように、一般に新規顧客の獲得にかかるコストは既存顧客の継続利用にかかるコストと比較して5倍と考えられています。限られたリソースを最適に配分するうえで、カスタマーマーケティングによる既存顧客との良好な関係づくりは、利益率の向上に欠かせない取り組みといえます。
リテンション率(継続率)の改善
リテンション率を5%改善すれば25%以上の利益改善につながるというのが「5:25の法則」です。顧客ロイヤルティが向上し、アップセル・クロスセルにも成功すれば、さらに利益への貢献は大きくなることが期待できます。
これ以外にも、既存顧客からの口コミが促進されたり、アドボケイト(支持者)が増えたりすることで、新規顧客の獲得につながるというメリットもあります。
カスタマーマーケティングとカスタマーサクセスの関係性
カスタマーマーケティングの理解を深めるうえで押さえておきたいのが、カスタマーサクセスとの関係性です。ここでは、カスタマーサクセスの要点を整理するとともに、この2つがどのような位置づけにあるのか見ていきます。
カスタマーサクセスとは
カスタマーサクセスとは、顧客の成功を生み出すことで自社が提供するサービス・商品の価値を高め、利益につなげるという考え方です。カスタマーサクセスの役割は、大きく分けると次の3つに整理できます。
●オンボーディング(新規顧客の定着促進)
オンボーディングとは、いち早く自社のサービス・商品を活用してもらい、成果を感じてもらうことをいいます。その後の継続利用につなげるための重要なプロセスです。
●顧客ロイヤルティの向上
顧客の育成や良好な関係づくりもカスタマーサクセスにおいて重要なポイントです。顧客が自社のサービス・商品をどのように活用しているかを把握し、適切かつ継続的なアプローチをする必要があります。
●LTVの向上
カスタマーサクセスでは、顧客が継続的に利用し、かつ満足度の高い状態を目指すため、LTVの向上も重要な役割となります。LTVは以下の計算式で算出できます。
<LTV=顧客の平均単価×平均購買頻度×平均継続期間>
これらの取り組みを行うカスタマーサクセスでは、主に以下の指標が用いられています。
・オンボーディング完了率
・アップセル率・クロスセル率
・解約率(チャーンレート)
こちらの記事も参考にしてください。
カスタマーサクセスとは?その基礎から成功させるポイントまで解説
カスタマーサクセスの上に成り立つカスタマーマーケティング
カスタマーサクセスの役割をマーケティングファネルから見ると、新規顧客を獲得した後の育成・ロイヤルティ化の部分にあたります。顧客のファン化に成功し、口コミや紹介などが増えれば、新たな見込み客の呼び込みにつながるという理想的な循環が可能になります。
一方のカスタマーマーケティングが顧客獲得後のマーケティング全般を指すということは、すなわち、カスタマーサクセスの上に成り立つものと捉えることができます。言い換えれば、どちらも目指すゴールは「カスタマーの成功」による利益創出であり、従来のマーケティングの考え方・手法をカスタマーサクセスに向けるということです。
これまでのカスタマーサクセスでは、優先順位の観点からどうしてもフォローが手薄になりがちな顧客ゾーンがあり、これが課題とされるケースが多く見られました。カスタマーサクセスにマーケティングの取り組みが加わることで、より包括的な顧客へのアプローチが可能になるといえるでしょう。
カスタマーマーケティングにおける顧客維持・単価アップの考え方
ここからは、カスタマーマーケティングにおける施策のなかで、とくに重視すべきリテンションマーケティングと単価アップの考え方について見ていきます。
リテンションマーケティングのポイント
リテンションマーケティングとは、既存顧客を維持するためのマーケティング手法のことです。代表的な例では、適切な顧客管理を実現するためのCRM(顧客関係管理)が挙げられます。
リテンション率(継続率)は、一定期間におけるユーザーの継続を表すもので、以下の計算式となります。
<リテンション率=継続ユーザー数÷新規ユーザー数>
例)新規ユーザー数1000名、1カ月後の継続ユーザー数500名の場合
500÷1000=リテンション率50%
リテンション率を下げる要因では、「あまり活用しなかった」「期待した成果を得られなかった」の2つが課題となるケースが多くなっています。これを踏まえ、リテンション率を高める方法の例を挙げましょう。
●オンボーディングを見直す(サービス・商品の使い方や魅力を伝えるチュートリアルを用意するなど)
●プッシュ通知などを利用して継続利用を促す
●ユーザーが不満を感じた体験を洗い出して見直す
●ユーザーが期待すること・活用目的を精緻に把握してプロダクトに活かす
リテンション率の改善には、まず離反する要因を明確にすることが重要です。行動解析や既存顧客からのフィードバック、アンケート調査などを活用するとよいでしょう。
アップセル・クロスセルのポイント
アップセル・クロスセルを成功させるために重要なのは、「誰に・いつ・どのような商材」を提案するかを明確にすること。そのため、まずは顧客を知ることが必要不可欠です。
アップセル・クロスセルの成功率は、顧客ロイヤルティとの相関があることがわかっています。たとえば、サービス・商材に満足していないユーザーにアップセル・クロスセルの提案をすると逆効果になることは容易に想像できます。
したがって、顧客単価アップを目指す場合、顧客ロイヤルティの高いゾーンを狙うのが効率的といえます。顧客をセグメントする際に便利なのがNPS®(ネットプロモータースコア)です。NPS®は顧客ロイヤルティを測る指標で、業績との相関性が高いことからマーケティングで多く活用されている調査方法です。
顧客の状態を精緻に把握したうえで、適切なタイミングで提案することがアップセル・クロスセルの効果を高めるポイントです。NPS®が低い顧客ゾーンには、アップセル・クロスセル以前に、満足度を高める施策が必要といえるでしょう。
※ネット・プロモーター、ネット・プロモーター・システム、NPS、そして NPS 関連で使用されている顔文字は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの登録商標です。
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カスタマーマーケティングは間接的に新規顧客獲得につながるアプローチ
カスタマーマーケティングは既存顧客を対象としていますが、結果的に新規顧客にも有効なアプローチができる方法です。顧客ファーストの視点で取り組むカスタマーサクセスと連携し、より満足度の高い顧客体験を提供することが成功のポイントといえます。収益性へのメリットを考えれば、今後ますます重要性を増すといえるでしょう。