NPS®調査で顧客分析|定性分析・定量分析の方法とポイント
NPS®調査の後、スコアを算出しただけで満足していませんか?NPS®を業績向上につなげるには、収集したデータをもとに顧客分析を行い、マーケティングに役立てることが重要です。本記事では、NPS®調査で定性・定量分析を行う方法や分析精度を高めるポイントを解説します。【定性分析】自由回答を分析して要因を把握
NPS®は顧客ロイヤリティ(顧客推奨度)を数値化する調査・指標であるため、スコア測定以上の分析は行っていないという企業は少なくありません。しかし、調査データを適切に分析すれば、次のアクションにつながる様々な示唆を得ることができます。
NPS®の分析方法には定性分析・定量分析があります。まずは、自由回答を分析する定性分析の手法から見ていきましょう。
アフターコーディングで回答内容を定量化
NPS®の評価理由や商品に対する意見・要望を分析するうえで、知っておきたい手法がアフターコーディングです。アフターコーディングとは、定性的な情報を定量的に分析できる状態にまとめる手法で、回答内容を共通した要素に分類・コード化することで少数の選択肢に整理していきます。
例えば、飲食店のNPS®の評価理由で以下のような回答があったとします。
店舗は清潔で居心地がよく、スタッフの対応も明るく丁寧で好印象だった。価格もリーズナブルなので今後も利用しやすいが、メニューの選択肢が少ないと感じた。 |
これを以下のようにコード化します。
<コード化の例>
大分類コード | 小分類コード | |
---|---|---|
店舗は清潔で居心地がよく | 店舗 | 清潔 |
スタッフの対応も明るく丁寧で好印象 | スタッフ | 明るい、丁寧 |
価格もリーズナブルなので | 価格 | リーズナブル |
メニューの選択肢が少ない | メニュー | 選択肢が少ない |
ほかの回答も同様に分類・集計すると、以下のように定量化された結果が得られ、評価の傾向や、顧客が重視する評価ポイントなどを可視化することができます。
<コーディング後の集計例>
ポジティブ/ネガティブ分析
NPS®の評価理由の分析では、アフターコーディングを用いたポジティブ・ネガティブ分析がおすすめです。推奨・非推奨理由のコメントを「肯定的(ポジティブ)な意見」と「否定的(ネガティブ)な意見」に仕分けて傾向を見る手法で、自社商品の強みや課題を抽出できます。
分類の一例を以下に挙げます。
<保険サービスの推奨理由の分類例>
推奨度 | 回答 | ポジ・ネガ分類 |
---|---|---|
8 | 保険料が安い割に保証内容が充実している | ポジティブ |
5 | プランが多くてわかりにくかった | ネガティブ |
9 | 担当者が親身に相談に乗ってくれた。自分に合ったプランを提案してもらえて満足している | ポジティブ |
7 | 問い合わせへの回答や手続きがスムーズだった | ポジティブ |
3 | 契約後のフォローが一切ない | ネガティブ |
ポジティブ・ネガティブに分類したものを、さらに項目別にコード化・集計すると以下のような結果が得られます。グラフ化することで、ポジティブ・ネガティブの割合や、主な評価理由が一目でわかるようになります。
なお、一覧表にまとめる際に、性別・年代などの属性や契約プランなども併記しておくと、様々な切り口で集計・分析できます。
【定量分析】アクションドライバーチャートで「打ち手」を可視化
NPS®の調査結果を構造的に理解するには、「アクションドライバーチャート」を用いた定量分析(ドライバー分析)が有効です。
「推奨度」と「要素別の満足度」の相関関係を分析
ドライバー分析とは、NPS®の向上に影響を与える要素を導き出す分析手法です。「推奨度」と「要素別に聴取した満足度」の相関係数をもとに散布図を作成することで、打ち手の優先順位を見極めることができます。
下図は、縦軸を「推奨度と満足度の相関係数」、横軸を「要素別の満足度の平均値」として先述の保険サービスの調査結果をプロットした散布図の例です。これがアクションドライバーチャートとなります。
<アクションドライバーチャートの例>
ドライバーチャートでわかること
作成したドライバーチャートは、「相関係数の平均」と「満足度の平均」にラインを引くことで4象限のマトリクスとなり、各象限は「重点維持項目」「優先改善項目」「基本維持項目」「注意観察項目」を意味します。
どの象限にどの要素がプロットされているかを見ることで、推奨度への影響度や重要度を把握します。
具体的にどのようなことがわかるのか、各象限の特徴を見ていきましょう。
重点維持項目
右上の象限は「自社の強み」をあらわします。満足度が高く、かつ推奨度への影響度が大きいため、重点的に取り組む必要があります。上記例では「説明のわかりやすさ」や「自分に合ったサービスの提案」などがプロットされており、契約前の顧客コミュニケーション力をさらに強化すべきだと判断できます。
優先改善項目
左上の象限は「自社の弱み」です。推奨度への影響度が高いにもかかわらず、満足度は平均を下回っているため、早急な対策が求められます。例では、カスタマーサポートの応対品質や契約後のフォローを速やかに改善すべきだとわかります。
基本維持項目
右下の象限は、高い満足度を獲得しているものの、推奨度への影響度は高くない項目です。ここにプロットされる項目は、顧客に「満足できるのがあたり前」だと捉えられている可能性があるため、提供品質を落とさないように維持する必要があります。
注意観察項目
推奨度への影響度・満足度ともに低い項目です。重点的に取り組む必要はありませんが、サービスを取り巻く環境変化などでポジションが変動する可能性があるため、継続的に注視します。
NPS®で顧客分析の精度を高めるポイント
NPS®調査を実施する際に下記3つのポイントを意識すると、より精度の高い顧客分析が可能になります。ひとつずつ見ていきましょう。
定性・定量の分析結果をあわせて考察する
定性分析と定量分析は収集できるデータの範囲や性質が異なるため、どちらか一方のみでは現状を見誤る可能性があります。
定性分析では評価理由やコメントの傾向を把握できますが、各要素の推奨度に与える影響度は測定できません。コメントの出現数が多い要素が必ずしも推奨度に強い影響を与えるとは限らないからです。
反対に、定量分析のみでは調査票の設問以外の要素は測定できないため、定性分析で新たな発見がないかチェックする必要があります。想定外の要素が抽出された場合は、次回の調査票に盛り込むことで調査の精度を高めることができます。
分析内容を想定して調査票を設計する
ドライバー分析を実施する場合は、調査設計段階でドライビングファクター仮説を立てておくことが重要です。ドライビングファクターとは顧客ロイヤリティに影響を与える要素のことで、タッチポイントごとに要素を抽出して仮説を整理し、調査票に反映します。
例えば、商品検討フェーズにおいて「Webサイトの情報量」や「営業担当者の提案力」が重視されるのではないかと仮説を立てた場合、以下のような質問文を作成します。
・Webサイトの商品情報の充実度にどのくらい満足していますか
・営業担当者の提案内容にどのくらい満足していますか
ドライビングファクター仮説は、カスタマージャーニーをもとに検討するのが効率的です。
以下の記事も参考にしてください。
カスタマージャーニーマップの作り方・「使えるマップ」に仕上がる調査手法
カスタマージャーニーマップの無料テンプレート7選・作成ツール3選
NPS®ツールを活用する
NPS®調査は定期的・継続的に実施し続けることが重要ですが、マンパワーを要するため
専用ツールを活用するのも一案です。NPS®に特化したツールには以下のような機能が備わっており、調査票作成から配信、分析までの一連の作業を効率化できます。
<NPS®ツールの機能例>
・NPS®の設問テンプレート
・カスタマージャーニーの設定
・NPS®アンケートの配信・回収
・属性別分析
・時系列分析
・タッチポイント別分析
・コメント分析
NPS®に限らず様々な調査を実施したい場合は、汎用性の高いアンケートツールが便利です。
CREATIVE SURVEYは、顧客コミュニケーションを円滑にするアンケート・コミュニケーション・プラットフォームです。 調査の目的 ・用途に応じて柔軟にカスタマイズすることができ、 NPS®調査はもちろん、顧客満足度調査や商談前ヒアリング、セミナーアンケートなど幅広い領域にご活用いただけます。
CREATIVE SURVEY for ENTERPRISE
CREATIVE SURVEY for Salesforce
NPS®調査で顧客分析を深めよう
NPS®調査の結果は定性・定量の両面で分析することで、自社商品の現状をより正確に把握できるようになります。評価理由などの定性データは、アフターコーディングで定量データ化することで、評価にかかわる要素や自社の強み・課題を抽出できます。アクションドライバーチャートを用いた定量分析では、どの要素が推奨度に大きな影響を与えるかを見極めることができ、優先的に取り組むべき施策が明確になります。
NPS®のスコア測定だけに留まっている場合は、今回紹介した分析手法を参考に、顧客分析を深めてみてはいかがでしょうか。
※ネット・プロモーター、ネット・プロモーター・システム、NPS、そして NPS 関連で使用されている顔文字は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの登録商標です。