カスタマーサクセスで重要なヘルススコアとは|指標の設定方法・運用のプロセス

SaaSなどサブスクリプションモデルの成功に欠かせないのが、カスタマーサクセスの考え方です。そして、カスタマーサクセスの状況を把握するうえで必須となるのがヘルススコアです。ここでは、カスタマーサクセスで重要となるヘルススコアの指標や運用プロセスを説明します。

ヘルススコアとは? 導入のメリット

ヘルススコアとは? 導入のメリット

ヘルススコアとは、顧客が自社のサービスを継続的に使い続けてくれるかどうかをスコア化したものです。文字通り、顧客の健康状態を表す指標で、ヘルススコアが良い状態であれば健康=継続利用が見込まれるという判断ができます。

SaaSをはじめとするサブスクリプションのビジネスモデルでは、LTVが成功の鍵を握ります。このLTVの最大化において重視されるのが、顧客の成功が自社の収益を生むというカスタマーサクセスの考え方です。ヘルススコアは、カスタマーサクセスの状況を正しく把握するために用いられている指標です。

ヘルススコアを取り入れるメリットとして、大きく次の3つが挙げられます。

効率的な顧客対応ができる

ヘルススコアにより顧客の状態を数値として可視化することで、より的確な顧客対応が可能になります。いわば、健康状態に応じて最適な処方箋を出せるようになるということです。たとえば、長期間ログインされていない顧客は解約のリスクが高まるため、活用方法を提案するといった施策を打てるようになります。

しかし、カスタマーサクセスの重要性は理解していても、リソースが限られる中で、どこまでの対応をすべきか悩むケースは少なくありません。ヘルススコアによって顧客ごとの状態を把握できるようになれば、どの顧客にどれくらいのフォローをすべきかがわかりやすくなり、効率的な顧客対応を実現できます。

チャーンレート(解約率)の改善

ヘルススコアをもとに適切なタイミングで最適なフォローができるようになれば、チャーンレートの改善効果が期待できます。スコア上、不健康な状態にある顧客には、解約を防ぐためのアクションをとるなど、未然の施策を講じられるというメリットがあります。

アップセル・クロスセルによる売上増

LTVの最大化におけるもうひとつのポイントが、アップセル・クロスセルによる売上拡大です。アップセル・クロスセルの成功率が高いのは、顧客ロイヤルティが高い場合とされています。ヘルススコアで良好な状態にある顧客をセグメントすれば、確度の高いアプローチが可能になります。

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ヘルススコアの主な指標

ヘルススコアの主な指標

ヘルススコアの指標は、サービス内容によってさまざまなものが用いられています。ここでは、SaaSなどサブスクリプションでよく使われる指標を紹介します。

サービスの活用度

サービスの活用度から、顧客の継続利用を図るという考え方です。活用度を測る指標には、以下のものがあります。

・ログイン回数
・ログイン頻度
・ログイン人数
・契約ライセンス数
・契約更新回数
・利用時間
・重要な機能の活用頻度

イベント参加回数

自社で開催しているイベントやウェビナーなどへの参加回数を指標とします。イベントへの参加が多いということは、それだけ企業やサービスへの関心度合いが高いと見ることができます。

NPS®

NPS®(ネットプロモータースコア)とは、顧客ロイヤルティを測る調査方法のことです。具体的には「商品やサービスを知人・友人に勧めるか」という問いに対し、0~10の11段階で評価してもらい、企業や商品・サービスに対して、どれくらいの愛着や信頼を持っているかを数値化するというもの。

顧客ロイヤルティはLTVに大きく影響する要素のため、ヘルススコアの指標としても用いられています。

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アップセル・クロスセル

アップセル・クロスセルができている顧客は、サービスへの満足度が高く健康状態が良いと想定できるため、ヘルススコアの指標のひとつとして用いられています。

ヘルススコアの導入・運用プロセス

ヘルススコアの導入・運用プロセス

ヘルススコアの導入・運用のプロセスは、大きく次の5ステップに整理できます。

1.カスタマーの健康状態を定義

まずは、顧客がどのような状態にあるときに「健康」と判断するのかを定義します。たとえば、「利用頻度が高い」「重要な機能を活用している」というように、自社のサービスに合わせて具体化します。

2.指標の決定

次に、実際にヘルススコアに使う指標を決めます。ここで注意したいポイントは次の2つです。

測定できるか

測定が難しい、あるいは測定するのに時間がかかりすぎるものを指標に設定すると、運用面でつまずいてしまいます。ヘルススコアは定期的に見ていく必要があるので、測定の難易度も視野に入れて検討しましょう。

指標が多すぎないか

あれもこれもと多くの指標を設定すると、運用が煩雑になり適切な判断が難しくなる場合があります。ヘルススコアの目的を果たせるか、運用面で効率的かという2つの観点から検討することが重要です。

3.ヘルススコアの算出方法を決定

指標を決定したら、続いて算出方法を決めます。とくに決まった形式はないので、自社で運用しやすい方法を決めるのがよいでしょう。

例)ログイン回数
1カ月に0回 → 0点
1カ月に1回 → 1点
1カ月に30回 → 30点

複数の指標を設定するときは総合的な評価ができるようにするなど、自社の運用方法に合わせて検討します。

4.施策の決定(ハイタッチ・ロータッチ・テックタッチ)

ヘルススコアは、あくまでも顧客の状態を可視化できるようにするためのものです。スコアが出たら、それぞれの顧客にどのような施策を講じるべきかを決める必要があります。

カスタマーサクセスで多く用いられているのが、LTVを軸に顧客を3段階にセグメントし、それぞれに合ったアプローチをするという方法です。アプローチ方法は「ハイタッチ」「ロータッチ」「テックタッチ」の3つに分けられています。

ハイタッチ

ハイタッチは、自社の大口顧客にあたる顧客群に対するアプローチ方法です。具体的には、営業担当が直接フォローする、顧客に合わせたカスタマイズプランを提案するなど、もっとも手厚いサポートを行います。

ロータッチ

ロータッチは個別対応ではなく、ひとまとまりの集団に対して行うアプローチ方法です。ハイタッチを行う顧客群よりも、一段階LTVが低い層を効率的にフォローしていくという考え方です。たとえば、イベントの実施、電話やメールでの対応などがあります。

テックタッチ

テックタッチは、LTVが低い層に対して行うアプローチ方法で、数としてはもっとも大きいゾーンが対象となります。テクノロジーを活用して広範囲のフォローを効率的に行うことから、テックタッチと呼ばれています。最近では、動画共有システムやチャットボットなど、さまざまな手法が取り入れられています。

5.運用と改善

ヘルススコアに応じた施策を実行したあとは、結果の振り返りをしながら改善を繰り返すPDCAを回します。ヘルススコアがうまく機能しているかどうかも確認し、場合によっては追加や削除を行うなど、定義自体を見直すことも必要です。

ヘルススコア向上のための検討ポイント

ヘルススコア向上のための検討ポイント

ヘルススコアの導入で重要となるのが、可視化した数値をいかに改善していくかということです。ここでは、カスタマーサクセスにおいてどのような向上施策を検討すべきなのか、ケース別に見ていきましょう。

サービスの利用頻度が低い場合

サービスがあまり利用されていない場合、オンボーディングがうまくできていない可能性があります。利用されない理由を整理したうえで、活用度合いを高めるためのアプローチを検討する必要があります。

サービスの定着率が低い場合

チャーンレートが高いなどサービスの定着率が低い場合は、どの部分に問題が潜んでいるのか明確にする必要があります。アンケートを使って顧客の声を集める、満足度調査を行うなど、適切なアクションにつなげるための情報収集が重要になります。

利用頻度は高いが売上が伸びない場合

利用頻度が高くヘルススコアも良好なのに売上が伸びないというケースでは、アップセルやクロスセルの提案が適切にできていない可能性が考えられます。有効性の高い顧客群を割り出し、最適な提案を検討するとよいでしょう。

ヘルススコアでは「顧客の声」も重視される

「ITreview」が行った「カスタマーサクセスに関する実態調査」(2019年)によると、カスタマーサクセスに取り組んでいる企業がヘルススコアの指標の中で重視するものとして、「製品・サービスの利用頻度」「製品定着率」に続き、「顧客の声(ユーザーレビュー、アンケート、満足度調査、NPS®等)」が3位となっています。

顧客にとっての成果を重視するカスタマーサクセスにおいて、顧客の声を集めることは成功の足掛かりを作るうえで重要という認識が広がっているといえるでしょう。ヘルススコアを事業運営にうまく活用するためにも、指標の考え方を十分に理解しておく必要があります。

参照:ITreview|カスタマーサクセスの効果を実感中の国内企業、『ヘルススコア』で重視する項目が明らかに

※ネット・プロモーター、ネット・プロモーター・システム、NPS、そして NPS 関連で使用されている顔文字は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの登録商標です。

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