デプスインタビューでユーザーヒアリング|5つの活用例・実施手順を解説

デプスインタビューはマーケティングにおけるユーザーヒアリングでよく用いられる手法です。ユーザー行動のプロセスや背景を深く掘り下げることができ、定量調査では把握しづらい気づきや知見が得られます。本記事では、デプスインタビューでユーザーヒアリングを行うメリットや活用例、実施の流れを解説します。

ユーザーヒアリングに欠かせないデプスインタビュー

商品・サービスのユーザーの声を収集する手法のひとつにデプスインタビューがあります。定量調査では把握しきれないユーザーの「質的な情報」を詳しく把握したい場合に用いられます。

まずは、デプスインタビューとはどのような調査手法なのかを見ていきましょう。

デプスインタビューとは

デプスインタビュー(Depth Interview:DI)は定性調査の一種で、対象者とインタビュアーが1対1で対面して行う面談形式の調査手法です。「深層面接法」とも呼ばれ、ひとりあたり60~90分程度の時間をかけてじっくりとヒアリングを行います。

デプスインタビューでは、調査テーマに沿って対話をしながら対象者の話を掘り下げることで、行動・思考のプロセスを明らかにしたり、潜在的なニーズを引き出したりすることを目的としています。

インタビュー形式の調査手法にはグループインタビュー(Group Interview:GI)もありますが、実施方法や目的が異なります。2つの手法の特徴を以下にまとめました。

                                                 
 デプスインタビューグループインタビュー
調査対象者数1名4〜8名程度
目的対象者のライフスタイルや行動の背景・深層心理を深掘りして把握するターゲット層の行動特性や商品・コンセプトに対する反応や評価を把握する
実施時間60~90分程度90~120分程度

デプスインタビューのメリット

ユーザーヒアリングにデプスインタビューを取り入れる主なメリットを以下に挙げます。

行動・思考のプロセスを明らかにできる

アンケート調査やグループインタビューでは顕在化されたユーザー行動や意識を把握することはできますが、それ以上の詳細な情報を深掘りすることは困難です。その点、デプスインタビューでは回答内容についてさらに掘り下げて聴取できるため、購入に至った経緯や思考・感情の変遷などを時系列で詳しく把握することができます。

潜在的なニーズや深層心理に迫ることができる

デプスインタビューでは、ユーザー本人も気づいていない潜在的なニーズを明らかにすることが可能です。インタビューでは本人が自覚している不満や課題からくるニーズを回答することが多いですが、対話を通じて行動や内面を掘り下げていくうちに、無意識の領域にある根本的な欲求やニーズが明らかになることがあります。深層心理に迫ることで、ユーザーに響く商品開発やマーケティング施策のヒントが得られます。

<例>
顕在ニーズ:「〇〇できる機能がほしい」「業務を効率化したい」
潜在ニーズ:「定型的な業務を減らしてクリエイティブな業務のリソースを確保したい」

本音を引き出しやすい

1対1でじっくりと対話をするデプスインタビューは、ユーザーの本音を引き出しやすい手法です。グループインタビューでは他者の発言に影響を受けたり、遠慮して率直な発言を控えたりする人も少なくないですが、デプスインタビューではそのような懸念はありません。自分の考えや本当の感情を自由に述べてもらうことで、調査テーマについてユーザーの本心を把握することができます。

デプスインタビューのデメリット・注意点

一方で、デプスインタビューについて注意しておきたい点は以下の通りです。

マンパワーやコストがかかる

デプスインタビューではひとりあたり60~90分程度の時間をかけるため、対象者の人数によっては数日がかりになります。対象者ひとりから得られる情報量も膨大になるため、情報整理や分析にも多くの手間・時間を要します。そのため、複数名に同時聴取できるグループインタビューと比べると工数やコスト面の効率性は低くなると言えます。

一個人の意見である

デプスインタビューで収集できる情報は、あくまでも一個人の意見であり、全ユーザーを代表したものではありません。市場全体を反映した意見と捉えてしまうと、偏った意思決定や施策につながることがあるため注意が必要です。

デプスインタビューの活用例5つ

次に、デプスインタビューに適した活用方法を見ていきましょう。

ユーザーインサイトの発見

ライフスタイルや購買プロセスの多様化・複雑化に伴い、マーケティングにおいてユーザーのインサイト(Insight)を捉える重要性が高まっています。インサイトとは深層心理に隠された欲求・動機のことを指し、ユーザーの意思決定に大きな影響を与えます。デプスインタビューは調査テーマに関するユーザー行動・心理を深く掘り下げることができるため、ユーザーインサイトを探りたい場合に効果的です。

以下の記事も参考にしてください。

顧客インサイトとは|顧客の深層心理にある欲求を見つける手法

定量調査に向けた仮説の構築

マーケティングの精度を高めるうえで基本となるのは、アンケートなどでターゲット層の傾向を定量的に把握することです。しかし、市場やユーザーに関する知見が乏しい場合は実態に即した調査票を作成することが難しいため、先にデプスインタビューを行ってユーザー理解を深めることがあります。また、デプスインタビューの結果からユーザーに関する仮説を立て、定量調査で検証するケースもよくあります。

ユーザーのペルソナ分析

デプスインタビューは、自社商品の典型的なユーザー像を意味する「ペルソナ(persona)」の分析でもよく用いられます。ペルソナ分析では、年齢・性別などのデモグラフィック属性だけではなく、ライフスタイルや価値観などのサイコグラフィック属性についても細かく設定する必要があります。そのため、ユーザーの詳細な情報を収集できるデプスインタビューが役立ちます。

カスタマージャーニーマップの作成

カスタマージャーニーマップとは、ユーザーが商品を認知してから購入するまでのプロセスを一覧表にまとめたものです。デプスインタビューでは、購入に至った経緯や思考の変遷を時系列で把握することができるため、カスタマージャーニーマップの作成に必要な情報を収集できます。

パーソナルなテーマを扱う調査

デプスインタビューはパーソナルなテーマを扱う調査に適しています。例えば、お金や病気などデリケートなテーマについては人前では話しづらいものですが、1対1のインタビューであれば抵抗感を軽減しやすく、本人の了解が得られれば深く踏み込んでヒアリングすることが可能です。

デプスインタビューを実施する流れ

基本的に、デプスインタビューは以下のような流れで実施します。

1.調査企画

まず、デプスインタビューの目的やマーケティング上の課題を整理して調査計画を立案します。「何のために、どのような事柄を明らかにし、得た情報をどう活用するのか」を明確にしておくことで、調査全体のアウトラインを一貫性をもって設計できるようになります。

2.対象者のスクリーニング

調査の目的に沿ってインタビューの対象者を選定します。デプスインタビューではヒアリングできる人数が限られるため、対象者の要件を整理したうえで慎重に選定することが重要です。要件が決まったらスクリーニング調査などでマッチする人を絞り込み、リクルーティングを行います。

以下の記事も参考にしてください。

スクリーニング調査とは|実施目的とメリット、質問例を解説

3.インタビューフローの作成

インタビューフローとは、質問する項目や順番をまとめたシナリオのことです。デプスインタビューでは一つの質問項目に時間をかけて深掘りする場面が増えるため、時間切れにならないよう、質問の優先順位や時間配分をあらかじめ設定しておく必要があります。また、対象者に先入観(バイアス)を与えない流れで質問を構成することも重要なポイントです。

4.実査・デブリーフィング

調査計画に沿ってインタビューを実施し、インタビュー後はデブリーフィングを行います。デブリーフィングとはインタビュー終了直後に関係者で行うミーティングのことで、各自の気づきや解釈を共有します。記憶が新しいうちに意見を交わして共通認識をもっておくことで、調査結果の要点を整理しやすくなります。

5.調査結果の分析・レポート作成

対象者の発言内容を整理・分析し、得られた知見や次のアクションなどをレポートにまとめます。膨大な定性情報を整理するにはアフターコーディングやKJ法などの手法が便利ですが、スキルや時間を要するため集計ツールを活用するのも一案です。

以下の記事も参考にしてください。

ユーザーヒアリングの目的とは|手法と質問項目を作るコツ

デプスインタビューでユーザーの内面にアプローチ

デプスインタビューはユーザーの行動原理や潜在ニーズを明らかにしたい場合に適した調査手法です。対話を通じてユーザーの購買プロセスや内面を深掘りできるため、ペルソナやカスタマージャーニーマップの作成に必要な情報収集などに役立ちます。ユーザーの質的な情報を集めて顧客理解を深めたい場合は、デプスインタビューを取り入れることをおすすめします。

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