チャーンレートの計算方法 | 顧客数ベース・収益ベースの算出方法と改善のヒント

SaaS事業者にとってチャーンレート(解約率)はビジネスの継続性を見極めるために欠かせない指標です。しかし、自社サービスの解約率を適切に把握できていないという事業者は少なくありません。今回は、チャーンレートの種類別の計算方法や顧客の定着率を高める対策例を紹介します。

チャーンレートはSaaSビジネスの重要指標

チャーンレートはSaaSビジネスの重要指標

既存顧客のリピート状況や売上が成否を左右するSaaS事業・サブスクリプション型ビジネスでは、チャーンレート(Churn Rate)が重要な指標となります。

チャーンレートは「解約率」のことで、一定期間中にサービスを解約した顧客の割合です。「顧客離脱率」や「退会率」とも呼ばれ、有料会員から無料会員への切り替え・ダウングレードも含まれます。

チャーンレートはLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)にも大きな影響を与え、チャーンレートが上がるとLTVは低下してしまいます。

チャーンレートは2種類

チャーンレートは、顧客数ベースの「カスタマーチャーンレート」と収益ベースの「レベニューチャーンレート」の2種類に大別されます。

カスタマーチャーンレート 顧客数全体に対し、一定期間に解約またはダウングレードした顧客数の割合
レベニューチャーンレート 一定期間の総収益に対し、解約やダウングレードによって発生した損失の割合

 

一般的にチャーンレートはカスタマーチャーンレートを指しますが、複数の料金プランがある場合はレベニューチャーンレートも押さえておく必要があります。

なぜなら、カスタマーチャーンレートが低くても、解約した顧客のほとんどが高価格帯ユーザーであれば収益悪化につながる可能性があるからです。事業の状況を見誤らないためにも、解約率は顧客数ベースと収益ベースに分けて考えることが大切です。

チャーンレートの計算方法・目標値

チャーンレートの計算方法・目標値

それでは、チャーンレートの計算方法を種類別に見ていきましょう。

カスタマーチャーンレートの計算式

カスタマーチャーンレートの計算式は以下です。

カスタマーチャーンレート=一定期間に解約した顧客数÷期間前の顧客数×100

例えば、7月1日時点の総顧客数が1,000人で、7月中に50人が解約またはダウングレードした場合は【50÷1,000×100=5%】となります。

レベニューチャーンレートの計算式

レベニューチャーンレートの計算式は以下です。

レベニューチャーンレート=(サービス単価×一定期間に解約した顧客数)÷期間前の総収益×100

月次収益(MRR:Monthly Recurring Revenue)に置き換えた計算式は以下です。

レベニューチャーンレート=当月に失ったMRR÷月初のMRR×100

例えば、A社のケースを仮定します。

●料金プラン:ベーシックプラン(月額5,000円)とビジネスプラン(月額1万円)の2種類
●7月1日時点の顧客数:ベーシックプラン100人、ビジネスプラン25人
●7月中に解約した顧客数:ベーシックプランの顧客10人

7月1日時点の総収益は、(5,000×100)+(10,000×25)=750,000円
収益の減少額は、5,000円×10=50,000円

上記を元に、7月のレベニューチャーンレートは
50,000÷750,000×100=6.7%

なお、同ケースでのカスタマーチャーンレートは【10÷125×100=8%】となります。

上記のように「失った利益」を元に算出するチャーンレートは「グロスレベニューチャーンレート」とも呼ばれています。

アップセル・クロスセルによる増益分も考慮する場合

当月に上位プランへ変更する顧客がいる場合は、解約で失った利益とアップセル・クロスセルによる増収額を合わせた「ネットレベニューチャーンレート」を算出することもあります。計算式は以下です。

ネットレベニューチャーンレート=(一定期間内の損失額-アップセルやクロスセルによる増収額)÷期間前の総収益×100

 

先ほどのA社のケースで、ベーシックプランからビジネスプランにアップグレードした顧客が5人いた場合を想定します。

7月1日時点の総収益は、(5,000×100)+(10,000×25)=750,000円
収益の減少額は、5,000円×10=50,000円
アップグレードによる増収額:5,000×5=25,000円

上記を元に、ネットレベニューチャーンレートは
(50,000-25,000)÷750,000×100=3.3%  となります。

理想はネガティブチャーン

チャーンレートは企業規模やサービス内容によって変動しますが、「1カ月あたり3%以内」を目標値とするのが一般的です。

また、ネットレベニューチャーンレートでは「ネガティブチャーン」を目指したいところです。

ネガティブチャーンとは、アップセル・クロスセルによる増収額が解約による収益減を上回った状態を指し、既存顧客のロイヤリティや継続率が良好であることを意味します。

先ほどのA社のケースで、アップグレードした顧客が11名、当月の増収額が【5,000×11=55,000円】の場合、ネットレベニューチャーンレートは

(50,000-55,000)÷750,000×100=-0.6%

とマイナスになり、ネガティブチャーンに達します。

チャーンレートを改善するために

チャーンレートを改善するために

適切な対策を講じれば、チャーンレートを低下させることが可能です。
ここでは3つの対策例を紹介します。

解約原因を特定する

解約に至った理由・原因がわからなければ、効果的な対策を講じることができません。チャーンの原因把握にはWebアンケートを活用するのがおすすめです。Webアンケートであれば都合の良いタイミングで回答できますし、電話やメールで直接聞かれるより不満点などの本音を引き出しやすいというメリットもあります。

また、Webアンケートツールでは回答データを蓄積・集計しやすく、自社サービスの課題傾向をスピーディに把握して適切な対策につなげることが可能です。

サービス・価格体系の見直し

サブスク型サービスの解約理由として多いのは、「サービス内容にコストが見合わない」「機能に不満があり競合他社に乗り換えたい」など提供内容や価格に関するものです。

サービス内容や価格体系に課題がある場合は、以下の点を見直して改善策を講じましょう。

●ターゲットが求める機能・サービスを提供できているか
●競合他社より機能・サービスに優位性はあるか
●高い費用対効果を感じられる価格設定になっているか
●各料金プランのターゲット設定は適切か

カスタマーサクセスの強化/オンボーディングの徹底

BtoBのSaaSビジネスで顧客満足度を高水準に維持するには、カスタマーサクセスがしっかりと機能することが重要です。顧客のビジネス成功に役立つ活用方法のアドバイスやサポートを能動的に行うことで、サービスを継続利用してもらえる可能性が高まります。

また、カスタマーサクセスで特に注力したいのがオンボーディングです。まだサービスへの理解度・活用度が低い導入段階でつまずくと、早期に解約に至る可能性が高まります。顧客が日常的にサービスを活用できるよう、導入サポートを徹底しましょう。

カスタマーサクセスやオンボーディングについて詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。

カスタマーサクセスに活用したいツール10選|オンボーディングからLTV最大化まで
SaaSにおけるオンボーディングとは | 導入支援の重要性と成功のポイント
カスタマーサクセスのKPI|種類と計算方法および設定のポイント

チャーンレートを算出してビジネスの継続性をチェックしよう

新規顧客の獲得数が多くても、解約やダウングレードに至る顧客の割合が多ければビジネスの継続的な成長は見込めません。チャーンレートはSaaSビジネスの成長性や収益状況を反映する指標でもあるため、定期的なチェックが不可欠です。ご紹介した計算方法をもとに自社サービスの解約状況を把握し、健全なビジネス運営に役立ててください。

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