NPS®の活用事例9選|様々な企業の事例からその効果を読み解く
マーケティングを行う際に、顧客ロイヤリティや NPS® という単語をよく耳にするのではないでしょうか。顧客ロイヤリティとは企業に対する愛着や信頼のことであり、NPS® とは顧客ロイヤリティを数字で測る指標のことです。この記事では、NPS® の概要を解説するだけなく、NPS® の活用事例を 9 つ紹介しています。
各企業の NPS® の導入背景、どのように活用し実践したか、導入したことでどのような効果があったのかも説明していきます。
NPS® とは
NPS® は「ネット・プロモーター・スコア」の略で、顧客ロイヤリティを数字で表すものです。 顧客ロイヤリティとは、自社ブランドに対する愛着や信頼の度合のことで、2003 年以降、米国企業を中心に急速に広まりました。今では欧米の売り上げ上位企業の 30%がこの指標を取り入れており、サービスの改善に努めています。
日本でよく使われる「顧客満足度」とは、NPS® は「他者に勧めたいと思うか」という質問を数値化するものであり、将来の収益につながるかどうかを考慮している点が異なります。
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NPS® の活用事例 9 選
ここでは、NPS® の活用事例を 9 つご紹介します。ぜひ参考にしてください。
ヤクルトスワローズの事例
ヤクルトスワローズ球団は、「ファンの声を企画に反映できない」「アンケートを実施しても漠然とした質問しかなく、ファン全体の傾向を分析できない」という課題を持っており、その対策として NPS® を導入しました。
アンケートに「ファンクラブを知り合いにすすめたいか」「どんなところをすすめたいか」などの具体的な質問を入れ、その分析結果をもとに改善策を検討しました。その結果、会員数は 2.5 倍に増え、チケットの売り上げや球場への来場者数も増加しました。
参考:ヤクルトはいかにファンの声を拾い上げるのか?NPS® を活かしたファンクラブ運営術
東京メトロの事例
東京メトロは、私営化を機に路線ごとのパンフレットを作成し、NPS® を中心としたアンケートを実施しました。高い回収率で多くのデータを得ることができましたが、分析方法がわからず、改善点は何か、結果をどう活かせばよいかわからない状況でした。
そこで、アンケートに新たに「あなたはこの冊子を、親しいご友人やご家族にどの程度勧めたいか」という内容の質問を入れたところ、評価の低い人・高い人が何に注目しているのかが判明しました。 さらに、未来の期待値として「〇〇が改善されると、どのくらいお勧めできるか」と聞くことで、施策が実施された際のインパクトも確認できるようになりました。
参考:東京メトロは顧客の声で進化する!オフラインでもできる、NPS® を利用したサービス改善
富士通グループの事例
富士通グループでは、従来より顧客満足度調査を実施していましたが、世界の各地域においてそれぞれにお客様の声を分析するに留まり、グループ全体の経営に反映することが難しいという課題を抱えていました。
そこで、形式を共通した内容のNPS®調査へと変更することで、世界各地から上がった声を1つのプラットフォームに集約し、改善アクションへと繋げる体制を構築しました。NPS®を企業価値を測る非財務指標の一つに据え、営業担当者やSEを経由しないよりダイレクトなお客様の声を経営に反映しています。
参考:お客様や従業員の「声」を新たな経営指標に、VOICEプログラムの取り組みとは
ソニー損保の事例
ソニー損保は、トライアルで NPS® を導入しました。その結果、顧客満足度が高く口コミ評価が良くても、必ずしも積極的な理由で契約をしてもらっているわけではないことがわかりました。NPS® を継続的に導入した結果、顧客満足度よりも業績との相関が強く、NPS® が高いほどリピート率が高くなることもわかりました。
そのため、NPS® は収益と強いつながりがあることもわかり、NPS® の数値をもとに「批判者」「中立者」「推奨者」ごとの契約者数の分布と次の年の継続率を分析しました。この結果をもとに、批判者と中立者を推奨者に変えていくための具体的な施策が可能になりました。
参考:「NPS® は収益に直結する指標だ」ソニー損保の顧客ロイヤルリティ戦略の秘密
Airbnb(エアビーアンドビー)の事例
空き部屋を貸す側と滞在先を探している旅行者とをつなげるサービスを展開する Airbnb は、ユーザー体験の質向上を目指して、CS に力を入れています。このサービスを使っているユーザーからの「紹介」を重視し NPS® を実施した結果、質問項目に 10 点(満点)をつけた推奨者の再予約率は、0 ~ 6 点をつけた批判者より 13%高いことがわかりました。
一方で、適当に高評価しているユーザーもいるため、レビューへの回答といったほかの項目も考慮した上でユーザーを見分ける必要があります。
参考:「紹介」こそ最強のマーケティング戦略 時価総額 3 兆円超の Airbnb の取り組みの解剖
アメリカン・エキスプレス・インターナショナル(アメックス)の事例
アメリカン・エキスプレス・インターナショナルは、顧客の満足度や継続利用意向の調査を行っていたものの、必ずしも業績の向上につながっていないという課題を抱えていました。そこで年に 2 回、NPS® を導入した結果、クレジットカードを失くしたときの対応が顧客ロイヤリティに影響を与えることがわかりました。これを受け、迅速なカード再発行という具体的なサービス改善を実現しました。
NPS® の数値をもとに、アメックスは具体的な取り組みを行いました。その結果、顧客の解約率が全体の 25%に減少し、一人あたりのカード平均利用金額が 10%増加し、業績向上に成功しました。
参考:「顧客満足度が上がれば売り上げも増える」のウソ、アメックスが採用した究極の指標「NPS®」
株式会社 Loco Partners の事例
旅館やホテルを厳選した宿泊予約サービス「Relux」を運営する株式会社 Loco Partners は、「満足度の高い宿泊施設を掲載する」という手法を崩さずに、顧客の満足度を継続的に測りたいと考え、NPS® を導入しました。
具体的には、宿の格付け(独自の 5 段階のグレード)ごとに満足度スコアを測定することで、期待値とのずれを計測できるようにしました。その結果、宿の格付けと期待値との間にずれが生じたとき、顧客と直接コミュニケーションをとって改善することで、顧客満足度を維持しています。
参考:売上だけで満足度は測れない。NPS® で顧客と「対話する」Relux のサービス改善
ビジネスホテルの事例
ビジネスホテルのメイプルイン幕張は、お客様満足度の調査を実施したものの「調査が高額」「回答のばらつきがある」「始め方がわからない」「満足度の具体的な指標がない」「お客様の声を一体化したい」などの多くの課題が発生し、それらを解決するべく NPS® の導入を決めました。その結果「なぜメイプルイン幕張を勧めるのか」というシンプルな質問を加えるだけで、顧客の満足度を測ることができるようになりました。
得られたデータは部署横断型の会議で議論され、その結果、宿泊先紹介サイトでの評価が上昇しました。さらに、NPS® スコアが上がることで従業員の責任感が強くなり、従業員は仕事により誇りを持つようになりました。
参考サイト:事例 01 メイプルイン幕張
大和証券の事例
大和証券では、「お客様第一の業務運営」の実現状況を計測するため、NPS®を導入し、重要指標とすることで、全社員がお客様第一に考える体制の確立を目指しました。
2018年に導入して以降、お客様の声をNPS推進部にて集約・分析し、各営業店や本部部署に対して改善活動を促進しており、これらがビジネスモデルの転換にも繋がっています。こうした取り組みによって、NPSスコアは大きく改善し、新規開設口座における紹介の比率も増加傾向で推移しています。
まとめ
NPS® は、顧客ロイヤリティを数字で表せる指標です。導入することで、顧客が企業に対して求めていることが具体的にわかるので、その結果をもとに改善策を実施して業績向上につなげることができます。
NPS® で得た情報は、マーケティングに広く活用できます。CREATIVE SURVEYでは、NPS® を行うことができるだけでなく、これまで集めてきた顧客データや購買データも組み合わせて利用できます。もし NPS® をご検討の方はお気軽にご相談ください。