顧客分析の6つの手法と活用シーン・役立つツールをわかりやすく解説
顧客とのタッチポイントが多様化している現在、マーケティングの成果を高めるために重要となるのが顧客分析です。顧客体験の向上を目指す上でも顧客の特徴やニーズを的確に捉える必要があります。ここでは、顧客分析が重視される理由を踏まえた上で、活用シーン別の6つの分析手法と役立つツールを解説します。顧客分析とは
顧客分析とは、顧客の基本属性や購買履歴、行動履歴といった様々なデータを用いて行う分析のことです。顧客について理解を深めることで、顧客体験の向上につなげたり競合との差別化を図ったりするなど、マーケティング活動の精度を高めていくことができます。
顧客分析はなぜ重要か
顧客分析が重視される理由には、以下のことが挙げられます。
ターゲットや顧客ニーズを的確に捉える
価値観の多様化やタッチポイントの複雑化など、現在はマーケティング活動のハードルが高くなっているのが実状です。顧客データを多角的に分析することで、自社が狙うべきターゲットを特定したり、施策の方向性を定めたりする際の精度を高めることができます。
また、顧客自身も気づいていない潜在ニーズを発掘できれば、他社と差別化した商品企画やアプローチが可能になり、市場において優位なポジションを築くことができます。
施策の効果を測定してPDCAの精度を高める
施策の実施前後における顧客の変化を分析することで、成功要因や改善すべき点を明らかにできます。たとえば、顧客の特性によって広告効果が異なることがわかれば、より費用対効果の高い展開を探り当てることが可能です。
また、顧客ロイヤリティが高い顧客の特徴を特定できれば、優良顧客を増やす施策に活かすこともできます。このように、PDCAの精度を高める上で顧客分析が役立ちます。
顧客分析で明らかにできること
顧客分析に用いるデータとして、以下のものがあります。
・顧客の基本属性(性別・年代・居住地・家族構成・職業など)
・購買履歴(購入時期・購入商材・購入金額など)
・Webログデータ(訪問履歴・閲覧履歴、流入経路など)
・行動履歴(購買プロセス、キャンペーン利用など)
・NPS®(ネットプロモータースコア)
これらの顧客データを活用することで、次のようなことを明らかにできます。
・自社がターゲットとする顧客の特性
・顧客のニーズ
・自社商品への評価や顧客ロイヤリティ
・広告の効果
・購買予測
顧客分析の手法と活用例
顧客分析の手法は多数ありますが、ここではマーケティングで多く用いられている分析手法を活用シーン別に紹介します。
重点的に取り組むべき顧客を分析
自社が重点的に取り組むべき顧客を明らかにしたい場合に役立つのが、ABC分析とRFM分析です。
ABC分析
ABC分析とは、重要度の観点から顧客をABCのグループに分ける分析手法です。売上が大きい順やリピート率が高い順など、自社が定める重要度に応じて分類します。比較的容易に分析でき、効率的に売上拡大を狙いたい場合に適しています。
具体的な進め方は、以下の通りです。
1.データを準備し、降順・昇順などで並べる
2.全体を100%とした場合の構成比率を出し、ABCにグループ分けする
3.パレート図(複合グラフ)を作成して、全体における比重を視覚的にもわかりやすくなるよう整理する
RFM分析
RFM分析とは、Recency(最新購入日)・Frequency(購入頻度)・Monetary(累計購入金額)の3つのデータをもとに顧客を分類する手法です。3つのスコアがもっとも高い顧客は、自社への貢献度が高い顧客となります。
分析は次の手順で進めます。
1.顧客ごとに最新購入日・購入頻度・累計購入金額の集計を出す
2.顧客ごとにRFMをスコア化する(分布状況を見ながら自社でスコアの定義を行う)
3.スコアに応じて最適な施策を検討する
RFM分析では、一般的に次のようにデータを解釈します。
・Rが高い→将来的に貢献度が高くなる可能性大
・Rが低い→FやMが高くても離反の可能性が高い
・FやMが高い→自社への貢献度が高い
・FやMが下がっている→離反の可能性大
購買行動の予測に役立つ分析
購買行動の予測には、CTB分析や行動トレンド分析が多く用いられています。
CTB分析
CTB分析とは、Category(カテゴリ)・Taste(テイスト)・Brand(ブランド)の3つのデータをもとに顧客を分類する手法です。複数の商材やブランドを扱っている場合に適しており、顧客に合わせた販売戦略を展開したいときや購買予測に役立ちます。
具体的な進め方は次の通りです。
1.CTBの分類を定義し、分析しやすくなるよう番号などを割り当てる
例)カテゴリ(日用品・化粧品・雑貨など)
テイスト(色・サイズ・デザインなど)
ブランド(ブランド、メーカー、キャラクターなど)
2.購買データなどをもとに顧客ごとにCTBを反映させる
3.CTBの特徴から顧客をグループ分けし、最適な施策を検討する
行動トレンド分析
行動トレンド分析とは、季節や曜日・時間帯などのデータをもとに顧客の行動を分析する手法のことです。シーズンや顧客特性などによるトレンドを予測できるため、効果的なタイミングでキャンペーンを実施したり広告を展開したりすることが可能になります。
用途によって活用するデータは異なりますが、次の進め方で分析します。
1.分析したい単位のデータを準備する(曜日・時間帯・月単位・年単位など)
2.顧客の属性や特性別に分析したい場合はクロス集計を用いるとよい
3.売上が上がる・下がるタイミングがわかりやすいようグラフ化し、最適な施策につなげる
顧客の現状・変化を把握するための分析
顧客の現状や変化を的確に把握したい場合には、コホート分析やNPS®の分析が役立ちます。
コホート分析
コホート分析とは、同じ条件に該当する顧客をグループ化して購買行動を分析する手法です。たとえば、「キャンペーンを利用した顧客」という条件を設定して継続率を定期的に測定し、解約率が高くなるタイミングに施策を講じるという使い方ができます。
Google Analyticsでは無料でコホート分析ができるため、手軽に始めたい場合におすすめです。Google Analyticsの管理画面にアクセスし、コホート分析を選択して条件を設定すると、ダッシュボード上で分析できる仕組みです。時間の経過による変化も把握することができます。
Excelで分析する場合は、たとえば「顧客ID」「キャンペーン利用日」「解約日」などのデータを用意して分析します。
NPS®の分析
NPS®とは、顧客ロイヤリティを数値化できる調査手法のことです。商品・サービスを利用した人を対象に「あなたが商品Aを友人や家族に勧める可能性はどれくらいありますか」と推奨度を問う質問をして、0〜10の11段階で度合いを回答してもらいます。定期的に実施することで、顧客ロイヤリティの現状と変化の推移を把握することができます。
NPS®は定量分析・定性分析をすることで、より顧客理解を深めることができます。
NPS®の定量分析
推奨度と各要素(機能・品揃え・価格・アフターサービスなど)の満足度から、顧客ロイヤリティに影響している要素を特定する相関分析が多く用いられています。
以下の進め方で分析します。
1.各要素の満足度と推奨度の相関値を出す
2.縦軸に推奨度との相関値、横軸に各要素の満足度を置いて散布図を作成する
3.各数値の平均値で線引きし、4象限マトリクスにする
推奨度との相関が高く満足度も高い要素は、自社の強みであり重点的に維持すべき項目と判断できます。推奨度との相関が高いものの満足度が低い要素は、自社の弱みであり優先的に改善すべき項目と見ることができます。
NPS®の定性分析
NPS®で推奨度合いを問うとともに、その理由について回答してもらう質問を設けておくことで定性分析もできるようになります。
回答内容は、ポジティブ・ネガティブに分類してセンチメント分析するという方法や、テキストマイニングで出現頻度の高いキーワードを抽出するというやり方があります。定量データからは得にくい有益な情報をピックアップできる点が大きなメリットです。
顧客分析に役立つツール
顧客分析をするには、顧客情報の収集・管理が欠かせません。ここでは、顧客分析に役立つツールを紹介します。
CRM/SFA
CRM(顧客関係管理)やSFA(営業支援システム)は、顧客情報を一元管理できるシステムです。とくにマーケティングや営業、カスタマーサポートなどの各部門が顧客接点を持っている場合は社内に顧客情報が散在しがちですが、CRMやSFAを活用することで最新の顧客情報を集約・共有できるという利点があります。これらの顧客データを活用すれば、多角的な顧客分析が可能になります。
アンケートツール
アンケートは、顧客の実態に関する情報やリアルな声を短期間で手軽に集められる手法です。購買データやアクセスログなどからは掴みきれない情報を収集することができます。また、CRMやSFAと連携できるアンケートツールを活用すれば、効率的に顧客情報を蓄積・管理できるうえ、One to Oneマーケティングの実現に役立ちます。
顧客分析の手法を使い分けてマーケティングの成果を高めよう
マーケティング施策の成果を高めるには、顧客について理解を深めることが必要です。多くの顧客分析の手法を理解しておくことで、目的に応じて使い分けることができるようになります。また、顧客分析を効率化するツールを活用すれば、タイミングを逃さず施策を実行できます。次のアクションプランに活かせる顧客分析をするためにも、本記事をぜひ参考にしてください。
※ネット・プロモーター、ネット・プロモーター・システム、NPS、そして NPS 関連で使用されている顔文字は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの登録商標です。