クロスセルで顧客単価と顧客満足度を上げる方法|成功させるための3ステップ
売上拡大を目指す手法のひとつであるクロスセル。しかし、やり方を間違えてしまうと、売上アップにつながらないだけでなく、顧客の信頼をダウンさせてしまうこともあります。ここでは、クロスセルの具体例を紹介するとともに、顧客満足度向上につなげる方法を説明します。顧客単価を上げるクロスセル
クロスセルとは、商品・サービスの購入を検討している、または過去に購入履歴がある顧客に対し、他の商品・サービスをプラスで購入してもらう手法です。わかりやすい例を挙げると、飲食店で「飲み物も一緒にいかがですか?」と追加注文をとるのがクロスセルです。
クロスセルと混同されやすい手法にアップセルがあります。アップセルとは、商品・サービスを検討中または利用中の顧客に対し、より高額な商品・サービスの購入を促すこと。たとえば、グレードの高いモデルをおすすめするのがアップセルです。
いずれも、顧客単価を上げることで売上拡大につなげる手法です。
クロスセルのメリット
クロスセルのメリットは、大きく以下の2つです。
顧客数を増やさずに売上拡大ができる
売上は「顧客数×顧客単価」で決まります。つまり、売上を増やすには、顧客数を増やすか、顧客単価を上げることが必要になります。
しかし、一般に新規顧客の獲得は、既存顧客を維持するよりもコストが高くつきます。また、市場が成熟している現在は競争が激しく、顧客数を増やすことは容易ではありません。
顧客の単価アップができるクロスセルは、顧客数を増やせない場合でも、効率的に売上拡大を目指せるというメリットがあります。
顧客ロイヤリティの向上につながる
クロスセルが顧客のニーズに合致し、顧客満足度が高くなると、良好な関係性を築きやすくなります。その結果、商品・サービス自体への信頼感が生まれたり、継続利用の意欲が高まったりと、顧客ロイヤリティの向上につながるというメリットが生まれます。
言い換えれば、こうしたメリットを享受するには、顧客満足度の向上を目指す必要があるということです。
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クロスセルの方法と具体例
クロスセルにはどのような方法があるのか、具体例とともに見ていきましょう。
関連商品の提案
購入を検討中、または購入済みの顧客に向けて、関連商品を提案するという方法です。ECサイトでよく見られる「この商品を買った人は、こんな商品も購入しています」という提案は、このパターンに該当します。具体例を挙げましょう。
例)
・BtoCの例:テレビを買った人にテレビ台をすすめる
・BtoBの例:顧客の課題を解決するためのオプションを提案する
関連商品の提案をする際は、顧客のニーズを的確に把握し、必要性が高いと思われるものを選ぶことが重要です。また、最適なタイミングで提示することも成功のポイントです。
BtoCでは、一般に購買意欲が高まる購入時に提案するのが有効とされています。ただし、購入後しばらくしてから関連商品の必要性が増すケースもあるため、タイミングを見計らうことが大切です。
BtoBの場合、初回契約時のほか、契約更新時、予算策定の時期が有効と考えられます。また、顧客の課題をキャッチアップできたときに提案するという方法もあります。
「ついで買い」の提案
買い物のついでに、目的とは違う商品を購入してもらうというクロスセルです。具体例として、以下のケースがあります。
例)
・スーパーやコンビニのレジ横にガムや電池などを置く
・キャンペーン商品を目立つ場所に置く
予定していなかった商品を購入してもらえる点が、この方法のメリットです。つい買い忘れてしまうものに気づける、またはお得な商品との出会いがあるという点で、顧客側にもメリットがあります。
この方法を成功させるポイントは、「ついで」に購入してもらえそうな商材を選ぶこと。すぐに必要ではないものの、あれば使うといった商品に有効な方法です。
セット購入の提案
目的の商品・サービスとのセット購入を促すというクロスセルです。例を挙げましょう。
例)
・スーツ、ネクタイ、ワイシャツの3点セットを販売
・プリンターとインクをセットで販売
関連商品の提案と似ていますが、「どうせ必要になるので一緒に買っておこう」という心理を利用する点がこの方法の特徴です。成功のポイントは、セット購入によるメリットを打ち出すこと。「セットで〇%引き」というのが代表的な例です。
クロスセルを成功させるための3つのステップ
クロスセルは売上アップにつながる効率的な施策ですが、成功させるにはポイントがあります。3つのステップに分けて説明しましょう。
ステップ1:顧客情報の収集
やみくもにクロスセルの提案をしても、期待した成果は得られません。大切なのは、顧客のニーズにマッチする提案をすること。そのため、まずは顧客情報を収集することからスタートします。
たとえば、顧客の属性や消費傾向、課題・ニーズに関する情報を集めます。情報収集では購買履歴などを利用するほか、アンケートを活用して現状の顧客満足度やニーズを調べるという方法があります。より精緻な顧客情報を集めることが成功のポイントです。
ステップ2:顧客の分析
次に、どのような顧客にクロスセルが有効かを分析します。顧客の属性やライフスタイル、購買履歴、消費傾向、購入頻度といった情報から顧客ニーズを分析し、クロスセルの余地があるターゲット顧客をリスト化します。
一般にクロスセルは、顧客ロイヤリティが高いほど成功確率が高まる傾向にあります。商品・サービスへの満足度が低い場合は、押し売りの印象を与えかねないため、クロスセルよりも先に関係性の向上に努めるほうがよいといえるでしょう。
ステップ3:アクションプランの決定
続いて、具体的なアクションプランに落とし込みます。決めるのは以下の4つです。
●どのような顧客群に提案するか
●どの商材を提案するか
●どのタイミングで行うか
●どんな方法でアプローチするか
施策の実行後は、成果を振り返り改善していくPDCAを回すようにしましょう。
クロスセルの注意点
クロスセルは、やり方によっては顧客の印象を悪くしてしまうことがあります。施策を実践する際は、以下の点に注意しましょう。
顧客視点を忘れないこと
必要性を感じない商品・サービスを提案され続けると「押し売りされている」という印象が強くなり、ひいては企業やブランドのイメージ低下を招いてしまいます。クロスセルで重要なのは、顧客がその提案を受けて親切と感じたり、メリットを感じたりすることです。顧客に対し、「より高い価値を提供できるか」という視点を忘れないようにしましょう。
長期的な信頼関係を考えること
クロスセルには、顧客との良好な関係性作りに役立つというメリットがあります。しかし、これを享受するには、顧客ニーズを的確に把握したうえで、長期にわたって顧客ロイヤリティを高めていこうとする姿勢が求められます。目先の売上だけにとらわれず、「クロスセルによって顧客満足度が高まるか」という観点から戦略を決めることが肝要です。
ニーズに合致したクロスセルで顧客満足度向上を目指す
クロスセルは、顧客自身も気づいていなかった価値を提供できる手法であり、顧客満足度やエンゲージメントの向上につながります。クロスセルを成功させるには、つねに顧客の立場から、どんな提案をされると嬉しいのかを考えることが大切です。マーケティング戦略にうまく取り入れ、顧客満足度を高めるクロスセルを目指しましょう。
※ネット・プロモーター、ネット・プロモーター・システム、NPS、そして NPS 関連で使用されている顔文字は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの登録商標です。