顧客分析に役立つABC分析とは|分析手順と活用例をわかりやすく解説

ABC分析は、売上や販売個数、在庫、コストなどをA・B・Cのランクに分けて優先度を分析する手法です。営業やマーケティングにおける顧客分析や戦略策定、在庫管理・コスト管理の最適化など様々な場面に役立ちます。本記事ではABC分析で明らかにできることや分析の手順、活用例、分析する際の注意点を解説します。

顧客分析に役立つABC分析とは

ABC分析とは、売上・販売個数・在庫・コストなどの実績データをもとにA・B・Cのランクに分類して、優先度を明確にする分析手法です。

たとえば売上の場合、全体売上に占める商品ごとの売上構成比を算出し、自社への貢献度が高い商品グループをAランクとします。優先度が高いグループに重点的にリソースを振り分けるといった意思決定ができるため、重点分析と呼ばれることもあります。

まずはABC分析で明らかにできること、また、ABC分析のベースとなっているパレートの法則について見ていきましょう。

ABC分析で明らかにできること

ABC分析では、実績データを用いて自社への貢献度が高いグループを明らかにすることができます。重要度・優先度が明確になるため、施策の精度向上や効率化・最適化に役立ちます。

ABC分析が多く用いられているのは、以下のような場面です。

●売上への貢献度が高い顧客グループを明確にして効率的にフォローしたい
●売上への貢献度が高い商品グループを明確にしてマーケティングに役立てたい
●生産コストや販売コストが大きい商品グループを明確にして最適化を図りたい
●売れ筋商品と死に筋商品を明らかにして欠品ロスや過剰在庫を防ぎたい

上記からわかる通り、ABC分析は営業やマーケティングの効率化や精度向上、コスト最適化、在庫管理など多様な場面で役立ちます。

パレートの法則とは

パレートの法則とは、売上を構成している上位20%が全体売上の80%を作っているという考え方で「2:8の法則」とも呼ばれます。たとえば、上位20%の顧客グループが全体売上の80%を占める、あるいは上位20%の商品グループが全体売上の80%を占めるということです。

ABC分析は、パレートの法則の考え方をベースとした分析手法であり、自社への貢献度に合わせてリソースや時間を最適に配分することで、売上・利益アップにつなげるという考え方です。様々な指標に応用できるため、活用範囲が広いというメリットもあります。

ABC分析の手順

ABC分析の手順を4つのステップに分けて見ていきます。

1.データを用意

売上や粗利、販売個数、在庫数など分析したい項目のデータを用意し、Excelなどの表計算ソフトを使って整理します。販売管理システムなどを導入している場合は、データ抽出機能を利用すると便利です。

ここでは、売上を例に見ていきます。

売上データをもとに以下のように商品ごとの売上を算出し、数値が大きい順に並び替えます。続いて、売上累計を計算します。

例)売上データ

                                                                                                              
商品名単価販売個数 売上売上累計
商品130,000802,400,0002,400,000
商品220,000601,200,0003,600,000
商品3100,000101,000,0004,600,000
商品410,00060600,0005,200,000
商品518,00015270,0005,470,000

2.累計構成比を算出

次に、ステップ1で整理した売上累計が全体の中でどれくらいの割合を占めるのか、累計構成比(%)を算出します。

●売上累計構成比の計算方法
売上累計構成比=対象商品の売上累計÷売上合計

例)売上累計構成比

                                                                                                              
商品名単価販売個数 売上 売上累計売上累計構成比
商品130,000802,400,0002,400,000 43.9%
商品220,000601,200,0003,600,000 65.8%
商品3100,000101,000,0004,600,000 84.1%
商品410,00060600,0005,200,000 95.1%
商品518,00015270,0005,470,000 100.0%

最終行の売上累計が売上合計です。上記例の場合、「商品5」の売上累計が売上合計となるので、たとえば商品1の売上累計構成比は「売上累計2,400,000円÷売上合計5,470,000円=43.9%」という計算になります。

3.ランク付け

累計構成比をもとに、A・B・Cのランクを付けます。ランクの線引きに決まったルールはないため、データを見ながら自社で設定しましょう。

たとえば「売上累計構成比70%まで=A、90%まで(残りの20%)=B、100%まで(残りの10%)=C」のように基準を決めます。これを当てはめると、以下表のようにランクを整理することができます。

例)ランク付け

                                                                                                              
商品名単価販売個数 売上 売上累計売上累計構成比 ランク
商品130,000802,400,0002,400,000 43.9% A
商品220,000601,200,0003,600,000 65.8% A
商品3100,000101,000,0004,600,000 84.1% B
商品410,00060600,0005,200,000 95.1% C
商品518,00015270,0005,470,000 100.0% C

上表のように整理すると、ランクAの商品1・商品2で自社の売上の70%程度を担っていることが明確になります。

4.パレート図を作成

パレート図とは、数値の大きいものから並べる棒グラフと累計構成比を示す折れ線グラフを用いた複合グラフのことです。パレート図を作成することで、ABC分析の結果をわかりやすく可視化することができます。

例)パレート図

ABC分析の活用例

ABC分析はどのような場面で役立つのか、主な活用例を見ていきましょう。

売上貢献度の高い商品のマーケティング強化

全体売上に対する商品ごとの貢献度をABCのランクに分けることで、マーケティング戦略に役立てることができます。たとえば、主力商品であるAランクには広告宣伝費を多めに振り分け、B・C商品は抑えるなど適切なコスト管理ができるようになります。

飲食店の場合は、Aランクのメニューを積極的にアピールしたりクーポンを配布したりするなどして、売上向上を図るという方法もあるでしょう。また、逆に自社が弱い商品やメニューを洗い出し、改善・強化することで売上拡大につなげていくという考え方もあります。

顧客の優先度を明確化してフォローを強化

ABC分析によって自社への貢献度が高い顧客が明確になれば、営業人員やコストの振り分けを適切に行いやすくなります。たとえば、Aランクの顧客グループには人的リソースを割いて手厚いフォローをするなど、効率的かつ効果的なフォローが可能になります。

在庫管理・コスト管理を最適化

売れ筋商品や死に筋商品が明確になれば、在庫管理やコスト管理の精度を高めることが可能です。欠品による売り逃しや過剰在庫によるコスト増を防ぐことができるほか、不良在庫となりそうなものは割引をするなどの施策を打つことができます。

また、Aランクは商品陳列の優先度を上げる、Cランクは商品の取り扱いを止めるなどの意思決定に役立てることも可能です。

ABC分析の注意点

様々な場面に役立つABC分析ですが、以下の点に留意しておく必要があります。

季節要因など一過性の増減に注意

季節によって売上が変動したり流行や社会情勢の影響を受けたり、また割引などで一時的に売上が伸びているなど、一過性の売上増減が大きい商品の場合、ABC分析の結果をそのまま活用すると誤った判断をしてしまう可能性があるため注意が必要です。分析した時点ではAランクであっても、すぐにCランクになることもあれば、その逆もあり得ます。

分析結果と実際のズレを正しく把握するには、過去の推移と比較しながら要因についても分析するなど、様々な観点からデータを読み解くことが重要になります。

優先度だけで判断しない

ABCのランクだけで施策や優先度を決めるのは早計なケースがあるため、注意しなければなりません。

たとえば、新商品の場合、発売当初は売上構成比が低くても、その後のPR次第で売上を大きく伸ばすことがあるため、優先度を下げることが適切とは限りません。また、売上は少額でも長期間安定的に売れている商品やセット販売に貢献している商品などは、ABC分析での優先度は低くても自社の売上・利益を支えている商品になっているケースがあります。

誤った判断を防ぐためには、B・C商品を軽視せずに多角的に分析することが必要です。

ECショップと実店舗の特性の違いに注意

ABC分析は、販売戦略や在庫管理、商品陳列の優先順位付けに多く活用されていますが、ECショップの場合、ABC分析が適さないケースがあるため注意しましょう。

ECショップでは在庫を抱えずに販売できる、売り場面積に限りがないといった特性があることから、実店舗に比べて幅広い商品を取り扱うことが可能になっています。そのため、Aランクとなる主力商品を持たずに、一つひとつの商品の売上は低いものの多種類を販売することで売上を伸ばすロングテール戦略を展開しているケースが少なくありません。

こうしたケースではABC分析による優先順位付けは適しておらず、むしろラインナップの豊富さが売上拡大のポイントとなることがあります。ECショップの場合は、アクセス分析や顧客の行動特性、コンバージョン率(成約率)なども踏まえて、販売戦略を設計することが必要です。

自社の状況を可視化し的確な判断につなげる

ABC分析は、営業やマーケティングにおける顧客分析や商品分析、店舗戦略などの様々な指標に応用することができます。ただし、あくまでも優先度をわかりやすく可視化するための手法であり、意思決定に際しては多角的に要因を見極めて判断することが重要です。自社の状況を可視化し的確な判断ができるよう、ぜひお役立てください。

Twitter:ツイート Facebook:シェア はてなブックマーク:ブックマーク pocket:あとで読む
あらゆる顧客接点で営業機会を逃さない Ask One 3分でわかる資料ダウンロードはこちら
アンケートツールの最新活用事例をご紹介!資料ダウンロードはこちら