顧客満足度調査の分析方法|相関係数によるCSポートフォリオ分析・NPS®相関分析
こんにちは、クリエイティブサーベイ法人チームです。
顧客満足度調査は、ビジネスを進化させるための示唆に富んだ調査手法です。満足度の数値を見るだけに終わらせず、分析結果を施策に活かすことが重要です。本記事では、分析力の向上に役立つ相関係数(CORREL関数)を使ったCSポートフォリオ分析とNPS®相関分析の方法を解説します。
顧客満足度調査の分析力を高める相関係数(CORREL関数)とは
相関係数とは、2種類のデータにおける関係性の強さを表すものです。一方の値が増加すると、もう一方の値が増加する場合は正の相関があり、一方の値が減少すると片方も減少するときは負の相関があります。
相関分析とは
相関分析とは、相関係数を用いて2種類のデータの関係性を明らかにする手法です。
相関分析が役立つのは、改善したい指標に対して関係性の強い要素を特定したいときです。データ量が多いと、それぞれのデータの関係性を目視で確認することは困難です。相関分析を用いることで、Aにもっとも強い相関があるのはBというように、データの関係性を数値で読み解くことができます。
顧客満足度調査に相関分析を用いることで、満足度に強く影響している要素を特定できるため、施策の優先順位を付けやすくなります。
ここで注意したいのは、相関関係と因果関係は別であるということ。たとえば、営業の人数が増えると売上が伸びるという場合、相関関係があるといえます。ただし、「営業人数が増える(原因)→売上が伸びる(結果)」という因果関係は、相関係数だけでは判断できません。因果関係は原因と結果を表すもので、相関関係とは分けて考えます。
Excelで相関係数(CORREL関数)を算出する方法
相関係数は-1.0〜+ 1.0の範囲の数値となり、+ 1に近づくほど正の相関が強く、-1に近づくほど負の相関が強いという見方をします。0に近い場合は、ほとんど相関がないということです。
相関係数の基準は厳密には決まっていませんが、目安として以下を参考にしてください。
相関係数 | 相関の強さ |
---|---|
0.7~1.0 | 強い正の相関 |
0.4~0.7 | 正の相関 |
0.2~0.4 | 弱い正の相関 |
-0.2~0.2 | ほとんど相関がない |
-0.4~-0.2 | 弱い負の相関 |
-0.7~-0.4 | 負の相関 |
-1.0~-0.7 | 強い負の相関 |
相関係数の数式は次のようになります。
xとyの相関係数=(xとyの共分散)/(xの標準偏差 × yの標準偏差) |
ExcelのCORREL関数を使えば、相関を求めるデータ範囲を指定するだけで相関係数を容易に算出できます。
=CORREL(範囲1,範囲2) |
たとえば、A列(A1~A100)とB列(B1~B100)の相関を見たいときは、「=CORREL(A1:A100,B1:B100)」で算出することができます。
複数項目の相関係数を出したい場合は、Excelの「データ」>「データ分析」>「相関」の順に開いて範囲を指定すれば、一度で算出できます。
なお、Excelに「データ分析」の項目が表示されない場合は、「ファイル」→「オプション」→「アドイン」の順に開き、「分析ツール」にチェックを入れます。
CSポートフォリオ分析とは
CSポートフォリオ分析とは、総合満足度に影響している評価項目を導き出し、重要度を明らかにする分析手法のことです。詳しく見ていきましょう。
「満足度×重要度(相関係数」)で優先順位を可視化
CSポートフォリオ分析では、満足度と重要度(相関係数)から優先的に改善すべきことや維持すべきことを明らかにします。総合満足度に対する強い相関がある項目は、重要度が高いという見方をします。
基本は縦軸に満足度、横軸に評価項目の相関係数を置き、4象限に分けてプロットします。
満足度高い×重要度高い | 満足度・重要度ともに高く、現状の「強み」となっているゾーン。重点的に維持すべき項目 |
満足度低い×重要度高い | 満足度への影響が強いものの評価が低いゾーンで、重点的に改善すべき項目 |
満足度高い×重要度低い | 満足度への影響は小さいものの、評価を得られているゾーン。現状維持に努める項目 |
満足度低い×重要度低い | 満足度への影響は小さいが、評価を得られていないゾーン。優先度は下がるが改善に努める項目 |
優先的に改善すべきは重要度(相関係数)が高いものの、現状の満足度が低い項目となります。また、満足度・重要度ともに高い項目は自社の強みであり、維持に力を入れる必要があります。
CSポートフォリオ分析の方法
アンケート結果を活用してCSポートフォリオ分析を行う場合の手順を見ていきましょう。
アンケートで顧客満足度調査を実施
CSポートフォリオ分析では総合満足度に影響する要素を明らかにするため、総合満足度と各評価項目における満足度がわかるように質問項目を設定します。
例)
総合満足度:(5 満足 4 やや満足 3 どちらともいえない 2 やや不満 1 不満) 価格 :(5 満足 4 やや満足 3 どちらともいえない 2 やや不満 1 不満) デザイン :(5 満足 4 やや満足 3 どちらともいえない 2 やや不満 1 不満) 機能 :(5 満足 4 やや満足 3 どちらともいえない 2 やや不満 1 不満) 操作性 :(5 満足 4 やや満足 3 どちらともいえない 2 やや不満 1 不満) 耐久性 :(5 満足 4 やや満足 3 どちらともいえない 2 やや不満 1 不満) |
各項目の満足度(%)は、「満足・やや満足」と回答した全体人数に占める割合を出すことで算出できます。(例:100人中50人が満足・やや満足→満足度50%)
総合満足度と各評価項目の相関係数を算出
ExcelのCORREL関数またはデータ分析機能を使って、各評価項目の相関係数を算出します。
散布図を作成しやすいように、Excelに各評価項目の満足度(%)と相関係数をまとめます。
散布図を作成
各評価項目の満足度と相関係数を使って、散布図を作成します。
Excelの「グラフ」>「散布図」の順に選択し、範囲を指定すると散布図ができます。次いで、満足度と相関係数の平均値を求めます。縦軸に満足度、横軸に相関係数(重要度)を置き、平均値で縦線・横線を配置すると、4象限のポートフォリオができます。
NPS®の相関分析とは
NPS®とは、顧客ロイヤリティを測る指標のことです。他者への推奨度を0〜10の11段階で評価してもらい、企業や商品・サービスに対する愛着・信頼を数値化する手法です。NPS®は業績との相関性が高いことがわかっており、LTV(顧客生涯価値)の指標などにも用いられています。
※ネット・プロモーター、ネット・プロモーター・システム、NPS、そして NPS 関連で使用されている顔文字は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの登録商標です。
「満足度×推奨度との相関」で優先順位を可視化
NPS®を使った相関分析では、顧客ロイヤリティに影響を与えている項目を明らかにすることができます。相関係数を用いて満足度に対する推奨度(NPS®)の相関を算出し、維持・強化すべきこと、改善すべきことの優先順位を可視化します。
基本は縦軸に推奨度の相関、横軸に満足度を置き、4象限に分けてプロットします。
推奨度との相関が高い×満足度高い | 現状の「強み」となっているゾーン。重点的に維持・強化を図るべき項目 |
推奨度との相関が高い×満足度低い | 現状の「弱み」となっているゾーン。推奨度への影響が高いため、重点的に改善すべき項目 |
推奨度との相関が低い×満足度高い | 満足度は高いものの推奨度への影響は小さい。ただし、満足度のベースとなっていることが多いため、現状維持に努める必要がある |
推奨度との相関が低い×満足度低い | 推奨度への影響・満足度ともに低いゾーン。優先度は下がるが改善に努めるべき項目 |
このように、NPS®の相関分析を行うことで、顧客ロイヤリティを醸成するポイントや阻害要因が明らかになります。
NPS®は、顧客接点ごとの推奨度を聞くトランザクション調査も可能です。また、推奨度の理由をフリーアンサー(自由記述)で答えてもらい、アフターコーディングの手法を用いて定量分析することもできます。これらのデータを使って相関分析をすれば、より深い分析結果を得ることができます。
NPS®の相関分析の方法
NPS®の相関分析の手順を見ていきましょう。
アンケートでNPS®と満足度を計測
NPS®はアンケート調査で簡単に計測することができます。
NPS®設問例)
NPS®のスコアは、0~6批判者・7〜8中立者・9〜10推奨者となり、「推奨者-批判者の割合」から算出します。
NPS®と満足度の相関係数を算出
ExcelのCORREL関数またはデータ分析機能を用いて、各項目の推奨度と満足度の相関係数を算出します。
散布図を作成
満足度の数値と各項目の推奨度の相関係数を使って、散布図を作成します。
縦軸に推奨度との相関、横軸に満足度を置き、それぞれの平均値で縦線・横線を配置すると、4象限のポートフォリオができます。
分析力を向上して顧客満足度調査を有意義なものに
顧客満足度調査やNPS®の分析に相関係数を用いることで、商品・サービスの強み・弱みや、重点的に取り組むべきことが明らかになります。施策の精度を高めるうえでも、分析力の向上は必須といえます。ぜひ参考にしてください。