【市場調査】コレスポンデンス分析とは|やり方と注意点をわかりやすく解説
コレスポンデンス分析とは、項目間の関係性を散布図の形にマッピングする手法です。アンケート調査のクロス集計をわかりやすく可視化したい場合に多く用いられています。ここでは、コレスポンデンス分析のメリットと活用例、やり方、注意点までわかりやすく解説します。コレスポンデンス分析とは
コレスポンデンス分析とは、アンケート調査などで得たデータのクロス集計を散布図の形にして、各項目の関係性を視覚的にわかりやすくする手法のことです。多変量解析の一つであり、分析項目が多くクロス集計表や棒グラフなどでは傾向をつかみにくい場合に役立ちます。「コレポン」と略されることもあり、多くの場面で活用される汎用性の高い分析手法です。
コレスポンデンス分析のメリット
コレスポンデンス分析のメリットは、項目同士の関係性を一見して把握できることです。たとえば、10ブランドに対して20のイメージ項目がある場合、クロス集計表では「10×20=200」セルとなり、傾向を読み解くことが難しくなります。コレスポンデンス分析を用いれば、縦軸・横軸の二次元にマッピングされるため、直感的に傾向をつかみやすくなります。
また、コレスポンデンス分析はクロス集計表があれば分析が可能なため、適用範囲が広い点もメリットの一つです。アンケート調査などによって得られたデータの解釈を容易にしてくれる手法です。
コレスポンデンス分析の活用例
コレスポンデンス分析は、ポジショニングや類似傾向があるグループを可視化したい場合に多く活用されています。代表的な活用例は、ブランドイメージのポジショニングです。競合他社と比較した場合のポジショニングや、属性別の傾向などを把握できます。また、時系列で散布図を作成すれば、経年変化についても視覚的にわかりやすくなります。
このほかにも、たとえば属性別に見た購入理由を分析したい、商品別のイメージキーワードを分析したい場合など、様々な分析が可能です。クロス集計表に落とし込めるデータがあれば、項目の種類を問わず幅広いテーマに活用することができます。
コレスポンデンス分析のやり方
コレスポンデンス分析の手順を5つのステップに分けて見ていきましょう。
1.分析の目的を明確化
まずは分析によって何を把握したいのか、目的を明確にします。求める分析結果を得るためには「分析目的を明確化→必要なデータを特定→データ収集・集計→分析」の順に進める必要があるからです。
たとえば、属性別(性別・年代・職業・家族構成・居住地など)に見たブランドイメージの傾向分析を目的とした場合、分析に必要な項目を漏れなく集める必要があります。はじめに分析の目的を明らかにしておくことで、有益な分析結果を得ることが可能になります。
2.クロス集計表を準備
アンケート調査などで得たデータをもとにクロス集計表を作成します。ただし、極端にn数(サンプルサイズ)が小さいものを含めて散布図を作るとデータの解釈を間違えてしまう可能性があるため、あらかじめ除外しておくことをおすすめします。
また、ポジショニングの把握に活用する場合、「その他」「どちらともいえない」などの項目も除外しておいたほうがよいでしょう。なお、コレスポンデンス分析は単回答・複数回答のどちらでも分析できます。
3.散布図を作成
Excelにはコレスポンデンス分析ができる機能が標準搭載されていないため、Excel統計などのソフトをアドインする必要があります。このほか、フリーソフトの「R」や「JMP」「SPSS」「SAS」「MATLAB」「Python」など、統計ソフトであればほとんど対応しています。
Excel統計を用いた場合の操作の流れは、次の通りです。
1)Excel統計タブを選択し、多変量解析>コレスポンデンス分析を選択
2)「データ入力範囲」「先頭行・先頭列をラベルとして使用」「データの種類」を選択
3)別シートに分析結果と散布図が表示される
4.散布図の加工
統計ソフトで作成された散布図が見づらい場合は、サイズを調整して見やすくします。サイズ調整する場合は、軸からの距離を見誤らないようにするため、縦軸・横軸の目盛り幅が均等になるよう注意します。
5.分析結果の解釈
散布図が完成したら、分析結果を読み解きます。コレスポンデンス分析は、表頭(列項目)と表側(行項目)の相関の強さで並べ替えるアルゴリズムになっています。そのため、散布図には以下のような特徴があります。
- 関連の強い項目同士は同一方向にプロットされる
- 特徴が強い項目は原点(0)から離れたところにプロットされる
- 特徴がない(平均的)項目は原点(0)の近くにプロットされる
たとえば、ブランドイメージのポジショニングにおいて、自社は「高級感」「センスが良い」が特徴的で、競合A社は「多機能」「長持ち」という特徴があることが読み取れたなら、これをもとに他社と差別化するためのプロモーション施策に活かすことができます。
原点の近くにプロットされる項目は平均的なものと捉えることができるので、イメージの違いなどを分析したい場合は解釈を誤らないように注意が必要です。また、関連の強い項目は近くに、弱い項目は遠くにプロットされますが、これは項目間の相関によるものであり、絶対ボリュームを表しているものではない点も理解しておきましょう。
コレスポンデンス分析の注意点
頻度高く活用されているコレスポンデンス分析ですが、以下の点に注意が必要です。
軸の意味付けによって見え方が変わる
コレスポンデンス分析の縦軸・横軸自体は意味を持っていません。分析による解釈を深めたい場合や分析結果をわかりやすく説明したい場合などは、プロットされた各項目の特徴を踏まえながら、分析者が軸に意味付けするという方法があります。
たとえば、縦軸(個性的⇔オーソドックス)・横軸(価格重視⇔品質重視)のように整理できれば、より結果の解釈がしやすくなります。ただし、軸の意味付けは主観となるため、バイアスがかかってしまう可能性もあります。どのような意味付けをするかによって結果の見え方が変わる点を織り込んだ上で、慎重に行うようにしましょう。
サンプルサイズの大小は散布図ではわからない
コレスポンデンス分析には、サンプルサイズ(n数)の大小は反映されない点に注意が必要です。
たとえば、ブランドイメージについて、30代女性「おしゃれ(n数60)」「リーズナブル(n数10)、20代女性「おしゃれ(n数80)」「リーズナブル(n数50)」だった場合、コレスポンデンス分析をすると、30代女性のほうが「おしゃれ」の近くにプロットされるというケースです。
n数を見ると20代女性のほうが「おしゃれ」と回答している人が多いですが、「リーズナブル」を選んでいる人も多いため、このような散布図が作成されます。
また、ブランドAは(利用者500/「はい」と回答250)、ブランドBは(利用者100/「はい」と回答50)の場合、両方とも同じ50%ですが、人数の差は散布図ではわかりません。
そのため、コレスポンデンス分析を行う際はクロス集計表や他の分析手法と組み合わせて確認するなど、判断を誤らないようにする工夫が必要です。
コレスポンデンス分析ができるアンケートを作成する
アンケート結果をもとに、コレスポンデンス分析したいというケースも多いでしょう。クロス集計表を作成できるデータがあれば実施できるため、特別な設問設計は必要ありません。
ただし、たとえば「商品Aを購入している人の利用シーンを属性別に把握したい」というケースでは、まず分析に必要な属性情報を取得し、「商品Aを購入したことがある(はい/いいえ)」の2値データを取得した上で利用シーンを選んでもらうための設問と回答形式(選択式、マトリクス形式など)が必要となります。また、併せて商品A~Dの利用シーンの違いについても分析したいという場合は、商品ごとの利用シーンについても回答してもらう必要があります。
コレスポンデンス分析は様々な角度から分析することが可能なため、あらかじめ分析したい内容を決めた上でアンケートを作成すると失敗がありません。
アンケート調査のクロス集計をわかりやすく可視化
コレスポンデンス分析はポジショニング比較をはじめ、様々な場面に活用できる便利な分析手法です。アンケート調査のクロス集計をよりわかりやすく可視化したい場合にもおすすめです。注意点を踏まえた上で、ぜひ有効活用してください。