マーケティングのフレームワーク別|アンケート作成における設問設計のヒント
マーケティングのフレームワークは、効率的な思考と精度の高い意思決定を助ける枠組みです。しかし、フレームワークを埋めるための情報収集に手間取るというケースが少なくありません。本記事では、マーケティングでよく使われるフレームワークを紹介するとともに、情報を集めるためのアンケート作成のヒントを例とともに解説します。
フレームワークにアンケートを活用すべき理由とは
フレームワークとは、課題の把握・解決を効率的に行うために確立されている枠組みのことです。煩雑になりがちな議論の方向性をまとめたり、戦略立案の方向性を定めたりする際に役立ちます。
とくにマーケティングでは、市場機会の発見〜コンセプト設計〜4P(Product・Price・Place・Promotion)の策定〜上市後の検証・改善というプロセスの中で、様々な意思決定が必要になります。これらの意思決定を行う際にフレームワークが役立ちますが、肝心のデータがなければ精度の高いフレームを作ることができません。
アンケートを活用して情報を集めることで、より効率的かつ客観性のあるフレームワークを実現できるようになります。次項から、マーケティングリサーチの代表的なフレームワークと、枠組みを埋めるためのアンケート作成のヒントを見ていきます。
STP分析・アンケートの設問設計
STP分析とは
STPとは、Segmentation(セグメンテーション)・Targeting(ターゲティング)・Positioning(ポジショニング)の頭文字をとったものです。STP分析ではセグメンテーション→ターゲティング→ポジショニングの順に整理し、自社の強みを活かしながらビジネスを展開するための方向性を明らかにします。
●セグメンテーション
共通する行動特性やニーズなどをもとに市場を細分化し、グループABCDのように分類します。
●ターゲティング
セグメントしたグループの中から、自社商品・サービスとの親和性や収益性などを踏まえて、狙うべきターゲットゾーンを定めます。
●ポジショニング
ターゲティングした中で、競合他社と比較しながら競争優位に立てるポジショニングを決めていきます。
アンケート作成のヒント
STP分析のフレームワークを進めるにあたっては、アンケートで次のような情報を収集します。
●セグメンテーション
消費者の行動特性やニーズなどを知るための質問をします。
例)
・よく利用する商品・サービスのジャンル
・自社で利用したことがある商品・サービスのジャンル
●ターゲティング
利用実態を把握する質問を設けて、自社が狙うべきターゲットゾーンを見極めます。
例)
・商品・サービスの利用頻度
・商品・サービスにかける金額
●ポジショニング
競合と比較した際の自社の強みが何かを把握するための質問を設定します。
例)
・自社の商品・サービスに対するイメージ
・競合商品と比較した際に優れている点・劣っている点
3C分析・アンケートの設問設計
3C分析とは
3C分析とは、Customer(顧客)・Competitor(競合)・Company(自社)の頭文字をとったもので、自社を取り巻く市場環境を明確にする分析手法です。主に新商品の開発や既存商品のリニューアル・改善にあたって活用されます。
●Customer(顧客)
市場規模や成長のポテンシャル、顧客の実態やニーズなどを把握します。
●Competitor(競合)
ベンチマークする競合他社のシェアや業界におけるポジショニング、商品・サービスの特徴などを明らかにします。
●Company(自社)
・自社の商品・サービスの強みと現状、自社が保有するリソースなどを明確にします。
アンケート作成のヒント
3C分析では、市場全体の傾向と競合の特徴、自社の客観的なデータを揃えることが重要になります。アンケートを作成するときは、次のような情報を得られるようにするとよいでしょう。
例)
・商品・サービスの認知度・利用率・購入価格など
・自社と競合におけるイメージの違い
・競合商品と比較した際に優れている点・劣っている点
4P分析・アンケートの設問設計
4P分析とは
4P分析とは、製品(Product)・価格(Price)・流通(Place)・プロモーション(Promotion)の頭文字を表しており、プロダクトの観点からマーケティング戦略を立案する際に役立つフレームワークです。それぞれに次のような点を決めていきます。
●製品(Product)
顧客にとっての価値を踏まえて、どのような商品・サービスを提供するのかを明確にします。商品・サービスの特長や形態、パッケージ・ネーミングなどを含めて決定します。
●価格(Price)
製造・仕入れ、人件費、販促費などにかかるコストを踏まえ、収益性や競合と比較したときの優位性などの観点から最適な価格を設定します。
●流通(Place)
自社の商品・サービスをどこで提供するかを決めます。商品・サービスの特性やターゲット層の利便性、かかるコストなどを視野に入れながら、オンライン・オフラインを含めて最適な流通施策を検討していきます。
●プロモーション(Promotion)
顧客の認知度を高めたり、購入意欲につなげたりするためのプロモーション施策を決定します。Web広告などオンラインでの施策のほか、店頭POP、展示会、キャンペーンなど多様な手法がある中で、効果的な方法を展開することが重要になります。
アンケート作成のヒント
4P分析のためのアンケート作成では、次のような情報を集めることが肝要です。
●製品(Product)
プロダクトについての質問では、現状の利用実態や評価を確認します。
例)
・利用経験の有無や頻度、よく使う機能などの利用実態
・既存プロダクトへの評価や意見
・新規プロダクトのコンセプトについて検証
●価格(Price)
平均的な利用価格の実態や価格受容性についての質問をします。
商品・サービスの適正価格を分析する手法にはPSM分析(Price Sensitivity Meter)があります。PSM分析では、いくらから高い・安いと感じるか、いくらから高すぎて買えない、安すぎて買いたくないとなるのか、アンケートで4種のデータを集め、4つの交点から許容可能な価格帯を導き出します。
例)PSM分析で行う質問
・いくらから「高い」と感じるか
・いくらから「高すぎて買えない」と感じるか
・いくらから「安い」と感じるか
・いくらから「安すぎて買いたくない」と感じるか
●流通(Place)
どこで商品・サービスを購入しているのか、よく利用する経路などを確認します。
例)
・商品・サービスの購入経路
・よく利用するチャネル
・よく利用する経路のパターン(オンライン→オフラインなど)
●プロモーション(Promotion)
商品・サービスの購入きっかけとなったチャネルや情報源などについて確認します。また、広告クリエイティブを複数案提示して、イメージやインパクトを調査するという方法もあります。
例)
・商品・サービス認知・購入のきっかけとなった情報源
・情報収集手段としてよく参考にするチャネルやメディア
バリューチェーン分析・アンケートの設問設計
バリューチェーン分析とは
バリューチェーン分析とは、購買物流~製造~出荷物流~販売・マーケティング~サービス提供の主活動と、これを支える調達管理・技術開発、人事労務管理といった支援活動を段階的に整理して、自社のバリューや強みがどこにあるのかを分析するフレームワークです。
たとえば、技術開発に強みがあり自社独自の機能を提供できる、物流に強みがあり短納期が可能というように、強みを洗い出すことができます。
バリューチェーン分析の基本的なフローは、自社のバリューチェーンの構造を可視化する→各項目におけるコストを分析する→自社の強み・弱みを分析するという流れです。
アンケート作成のヒント
自社のバリューチェーンの各項目についての強み・弱みを特定できるよう、アンケートで質問します。
例)
・調達・購買物流についての評価とその理由(品揃えなど)
・製造・出荷物流についての評価とその理由(納期など)
・販売・マーケティングについての評価とその理由(商品説明や決済手段、PR施策など)
・サービスについての評価とその理由(サポート内容など)
アンケートを活用すれば客観性のあるデータを迅速に集められる
フレームワークはマーケティング活動における意思決定を助け、社内の共通認識をつくる上でも有効な手段です。枠組みを埋めるための情報が足りないという場合は、アンケートを活用することで客観性のある情報を迅速に収集することができます。ぜひ本記事を参考に、アンケートを有効活用してください。