NPS®のメリット・デメリット・注意点と運用時のポイント5つ

顧客ロイヤリティを数値で可視化できる指標として注目されているNPS®。これから導入を検討する場合は、メリット・デメリットの両面を理解した上で判断することが重要です。本記事では、NPS®のメリット・デメリットや効果的に運用するポイントを紹介します。

NPS®調査を実施するメリット

まずは、NPS®調査のメリットから見ていきましょう。

専門知識がなくても運用しやすい

NPS®は、基本的に企業や商品・サービスの推奨度を問うだけのシンプルな調査手法なので、アンケート調査の専門知識がなくても適切に実施することが可能です。また、NPS®のスコアは「推奨者の割合(%)」-「批判者の割合(%)」で簡単に算出でき、複雑な集計や分析を行う必要もないため、調査初心者でも比較的容易に運用できます。

回答を集めやすい

NPS®は回答者にとっても負担が少ない手法です。一般的なアンケート調査では、設問数が多いなど回答に手間がかかるものだと途中で離脱されることが少なくありません。その点、NPS®は「0~10」の11段階から点数を付けるだけなので手間がかからず、気軽に回答してもらうことが可能です。比較的サンプル数を集めやすい調査手法といえます。

全社の共通指標として活用できる

NPS®のスコアは明確に数値化されるため、顧客ロイヤリティを測る指標として社内で共有しやすいです。実際に重要なKPIの一つとして活用している企業も多く、商品・サービスの改善などに役立てられています。

同業他社と比較しやすい

NPS®は同じ設問で統一的に測定できるため、ベンチマークしている同業他社と自社の評価を比較しやすいです。公表されている業界平均値などと比較するほか、自社で行うNPS®調査で他社商品の推奨度を回答してもらうことでスコアを収集できます。同業他社との差を可視化し、業界内の自社のポジションを把握することが可能です。ただし、業界によってNPS®の平均値は異なるため、他業界の企業のスコアと比較しても意味がありません。

経営に活かしやすい

さまざまな企業が検証データを公表していますが、NPS®は収益性や事業成長との相関性が高いことが明らかになっています。批判者(0~6点)より推奨者(9~10点)のほうがリピート率や顧客単価が高く、売上に大きく貢献していることから、スコアの推移分析などで今後の顧客数や事業の成長性について見込みを立てることが可能です。

以下の記事も参考にしてください。

NPS®とLTV・収益との相関性とは|次の打ち手につなげるための分析とアンケート方法
NPS®の活用事例9選|様々な企業の事例からその効果を読み解く

NPS®調査のデメリットと注意点

さまざまなメリットがある一方で、NPS®には懸念点もあります。ここでは3つのデメリット・注意点を見ていきます。

日本ではスコアが低く出やすい

日本でNPS®調査を実施すると、他国の調査と比べてスコアが低くなる傾向があります。この要因の一つとして、日本人には中間を好む性質があり、NPS®では中間点である「5~6点」に回答が集中しやすいことが指摘されています。NPS®において5点や6点は「批判者」にあたるため、業界平均値や業界トップの企業でもスコアがマイナスになることが少なくありません。

そのため、海外企業と比較する際は、日本人特有の中間回答傾向を考慮する必要があります。

得られる情報が少ない

NPS®調査は、商品・サービスの推奨度を聞く基本の質問を軸に数問で構成します。設問数を絞るため、一般的な顧客満足度調査などと比べると一度に収集できる情報は少ないです。設問が少ないことは回答率向上につながりますが、一人の顧客からより多くの情報を収集・分析したい場合にはあまり適していません。

一定以上の回答数が必要

NPS®に限ったことではありませんが、定量調査において精度の高い結果を得るには十分な回答数が必要です。統計学的には、誤差を±5%程度に抑えたい場合の目安は400サンプル以上、±2%程度に抑えたい場合は2,000サンプル以上とされています。そのため、ターゲット属性が狭く一定のサンプル数が見込めない場合や、まだ顧客が少ない時点ではスコアの捉え方に注意が必要です。

NPS®を効果的に運用するポイント5つ

NPS®の運用効果を高めるには、以下の5つのポイントを意識しましょう。

2種類のNPS®調査を使い分ける

NPS®調査には「リレーショナル調査」と「トランザクショナル調査」の2種類があります。それぞれ目的や特徴が異なるため、適切に使い分けることが大切です。

                                   
目的特徴
リレーショナル調査企業や商品の顧客体験全体を総合的に評価する・実施頻度は年1~2回
・商品・サービス全体で改善すべきタッチポイントを抽出できる
・同業他社の商品と総合的な強み・弱みを比較できる
トランザクショナル調査タッチポイント別(施策や店舗ごと)に顧客体験を評価する・商品・サービスの利用直後に実施する
・各施策の具体的な課題を把握できる

必ずしも2つの調査を併用する必要はありませんが、まずリレーショナル調査で評価全体に与える影響が大きいタッチポイントを特定し、トランザクショナル調査で課題を深掘りするといった使い分けをすると効果的です。

質問文を精査する  

NPS®調査の精度を高めるには、調査対象の商品や顧客に合わせて質問文をよく検討することが重要です。

下記はNPS®調査でよく見られる質問です。

あなたは当社(または当社の商品・サービス)を、家族や友人、同僚に薦める可能性はどれくらいありますか?

基本的にはこのままでも問題ありませんが、汎用性が低くユーザー層が限定される商品などの場合は、以下のように前置きをすることで、回答者は推奨する場面をイメージしやすくなります。

もし、この商品に興味がある知人・友人がいるとしたら~
家族や知人・友人が〇〇について悩んでいる場合~

人によって解釈が分かれるような質問文だと回答の精度が低下するため、状況を具体的にイメージしやすい文言に調整しましょう。

定期的に実施する

NPS®では「スコアは20以上は必要」などの統一的な基準はないため、スコアの絶対値に一喜一憂する必要はありません。重要なのはNPS®調査を定期的に実施し、スコアの推移を追うことです。

NPS®調査を一度きりで終わらせてしまい「NPS®は意味がない」とする企業も見受けられますが、継続的に実施してスコアの変動要因を分析することで、施策の課題や有効性を見極められるようになります。NPS®の効果はすぐに表れるものではないため、長期的に取り組むことが重要です。

サイレントマジョリティの存在を忘れない

一般的な顧客アンケートの回答率は10~30%程度が目安です。非回答者の方が多数を占め、商品・サービスに対して積極的に意見を述べないことから「サイレントマジョリティ」と呼ばれています。非回答者の割合が高い場合、顧客の実態を反映していない分析結果になる可能性があります。

比較的回答を集めやすいNPS®でも、非回答者が多数を占めることがあるため注意が必要です。回答者の評価だけを鵜呑みにすると誤った判断につながる可能性があるため、NPS®だけに頼らず、ソーシャルリスニングなど他の調査手法を組み合わせて多様な意見を収集することをお勧めします。

全社で結果を共有する

NPS®の結果は経営層や特定の部署だけで受け止めるのではなく、全社で共有することが重要です。タッチポイントごとの顧客ロイヤリティが数値で可視化されるため、関連する従業員は結果を「自分ごと」として捉え、モチベーションや業務姿勢に好影響を与える可能性があります。

結果を共有する際は、ただスコアを示すだけではなく、評価されている点や改善すべき点、結果を踏まえた体制づくりなど具体的なメッセージを伝えることも取り組みの効果を高めるポイントです。

以下の記事も参考にしてください。

NPS®で顧客ロイヤリティを可視化|アンケートの実施手順と作成・運用のポイント

NPS®の特徴を踏まえて上手く活用しよう

NPS®は比較的容易に運用しやすく、業績や事業成長性との関連性も高いことから、多くの企業が重要指標の一つとして活用しています。ただし、シンプルな調査手法であるため得られる情報が少ないことや、日本ではスコアが低く出やすいことなどに留意する必要があります。

NPS®調査は定期的・継続的に実施し、全社で結果を共有することで運用効果を高めることが可能です。ここで紹介したメリット・デメリットやポイントを踏まえてNPS®を適切に運用しましょう。

※ネット・プロモーター、ネット・プロモーター・システム、NPS、そして NPS 関連で使用されている顔文字は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの登録商標です。

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