自由記述のアンケート集計(アフターコーディング)|NPS®を定性分析する方法
アンケートは、集計・分析方法によって調査結果から得られることが変わります。ここでは、自由記述のアンケートを集計・分析する手法を紹介します。また、顧客ロイヤリティを計測するNPS®をより有効活用するための「定量×定性」で分析する方法についても解説します。
自由記述のアンケート集計方法
自由記述のアンケートには、言葉で回答してもらうものと、数値を自由に答えてもらうものと2つのパターンがあります。ここでは3つの集計方法を見ていきます。
アフターコーディング
アフターコーディングとは、自由記述の回答をキーワードや類似内容などで仕分け、分類コードをつける方法のこと。回答内容を選択肢化することで、人数や割合といった定量的な分析が可能になります。
たとえば、キーワードごとに割合を出して何についてのコメントが多いのかを把握したり、ポジティブ回答・ネガティブ回答の割合を算出したりすることができます。また、年齢・性別といった他のデータとクロス集計すれば、より詳細に傾向をつかむこともできます。ただし、アフターコーディングでは、自由記述の内容を読んで分類コードに置き換える作業が必要となるため、手間を要します。
テキストマイニング
テキストマイニングは、テキストを単語や文節で区切り、出現頻度や語句の相関関係などを分析する手法です。膨大なテキスト情報に目を通さなくても、目立つ兆候や特徴をつかんだり、ニーズを把握したりといったことが容易にできます。いくつかの解析手法があり、たとえば回答者の感情面を分析する「センチメント分析」や散布図を用いる「対応分析」、語句同士の関係性を示す「構文解析」などが代表的です。
一般に、テキストマイニングは専用ツールを利用します。現在はさまざまなツールが提供されており、インパクトの大きさや語句同士の関連性、ランキングなどを視覚的にわかりやすくして示してくれます。
テキストマイニングでは大まかな傾向やトレンドをつかめるため、ビジネスのヒントを得られたり、より詳細な調査の必要性を判断したりする際に役立ちます。
数字の自由記述の集計
選択肢化が難しい場合や、数字そのものを知りたい場合は、自由記述で数字を記入してもらう回答形式を選びます。自由記述で得られた数値データを集計する方法には、以下のものがあります。
●平均値:全数値を足したものをデータ数で割った数値
●中央値:データを大小順に並べたときの真ん中の数値
●最大値:回答結果の最大値
●最小値:回答結果の最小値
例を見てみましょう。
例)Q.ランチに使える最高額はいくらですか?
平均値 | 2,800円 |
中央値 | 1,800円 |
最大値 | 20,000円 |
最小値 | 500円 |
この例では、平均値は2,800円となっていますが、中央値を見ると乖離があることがわかります。最大値が20,000円となっていることから、平均値が吊り上げられているわけです。このように、回答のばらつきが大きい場合、平均値だけをみると分析を誤ってしまいます。数字の自由記述を集計する際は、いろいろな角度から数値を見て的確に把握することが重要になります。
なお、以下のエクセル関数を覚えておくとアンケート集計に役立ちます。
AVERAGE(アベレージ)関数 | 指定した範囲内にあるセルの平均値を求める =AVERAGE(範囲) |
MEDIAN(メジアン)関数 | 指定した範囲内にあるセルの中央値を求める =MEDIAN(範囲) |
MAX(マックス)関数 | 指定した範囲内にあるセルの最大値を求める =MAX(範囲) |
MIN(ミニマム)関数 | 指定した範囲内にあるセルの最小値を求める = MIN (範囲) |
MODE(モード)関数 | 指定した範囲内にあるセルの最頻値を求める =MODE (範囲) |
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アンケート結果の集計はどうする?回答データを読み解く集計のキホンを解説
アンケートを定量・定性の両面から分析するメリット
アンケートで得られたデータは、マーケティングにおける貴重な情報源です。定量・定性の両面から分析するメリットは、大きく次の2つです。
数値に影響を与えている理由を知ることができる
定量調査の目的は、「何がどれくらいか」を知ること。対して定性調査では、「なぜ」を知ることができます。アンケート調査では回答結果を数値化して定量的な分析を行うのが一般的ですが、フリーアンサーを設けることで、定性的な要因分析が可能になります。数値に影響を与えている理由を知ることで、次のアクションや施策につながるヒントを得られます。
想定外のニーズを発見できる
選択形式のアンケート調査の場合、事前に想定される選択肢を用意することになります。しかし、価値観の多様化が進む今、想定外のニーズが潜在している可能性は多分にあります。また、大多数の意見が貴重な情報とは限らず、少数派のコメントにビジネスのヒントが隠れているケースも少なくありません。アンケートに自由記述欄を設けて定量・定性の両面から分析することで、気づきの多い結果を得られるようになります。
NPS®を定量×定性で分析する方法
NPS®とは顧客ロイヤリティを計測する調査のことです。集計が容易なため、マーケティングやカスタマーサクセスの運用に活用されています。
具体的には「あなたがこの商品を知人・友人に勧める可能性はどれくらいありますか?」と質問し、0~10点の間で点数をつけてもらいます。推奨度合いによって「推奨者」「中立者」「批判者」の3つに分類し、「推奨者(%)-批判者(%)」がNPS®の数値となります。
一般的には顧客ロイヤリティを数値として把握する目的で活用されていますが、自由記述と組み合わせることで、顧客ロイヤリティに影響する要因を特定できたり、次の施策に活かせたりするなど、より効果的な活用ができるようになります。NPS®を定量・定性の両面から分析する方法を見ていきましょう。
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NPS®(ネットプロモータースコア)とは?|顧客満足度との違いやメリット・導入事例まで紹介
※ネット・プロモーター、ネット・プロモーター・システム、NPS、そして NPS 関連で使用されている顔文字は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの登録商標です。
ステップ1:自由記述欄を設けて評価の理由を訊く
NPS®では他者への推奨度を数値で回答してもらいますが、次項目に自由記述欄を設け、その点数をつけた理由を記入してもらいます。これにより、点数の要因を知ることができます。
ステップ2:自由記述を分析する
次に自由記述を分類し、データとして分析できる状態にします。アフターコーディングの手法を用いて、キーワードや類似内容ごとにまとめるとよいでしょう。
たとえば、どのプロセスに対するコメントが多いのか、どのプロセスに肯定的または否定的な意見が寄せられているのかといった観点から分類することで、顧客ロイヤリティに影響している要因を特定することができます。また、「推奨者」「中立者」「批判者」ごとに分析して、傾向をつかむという方法もあります。
ステップ3:定量分析と掛け合わせて施策の優先順位を決める
NPS®に自由記述欄を設けることで顧客ロイヤリティを左右する要素をつかむことができますが、これに加え、各要素におけるインパクトの大小を定量的に分析することで施策の優先順位をつけやすくなります。
分析手法として代表的なのは、4象限に分類するポートフォリオ分析です。縦軸に各要素と推奨度との相関を置き、横軸に各要素における満足度を置きます。
推奨度・満足度ともに高いゾーンは、自社の強みとして重点的に維持すべき要素となります。推奨度への影響は大きいものの満足度が低いゾーンは、顧客ロイヤリティを阻んでいる要素となるため、優先的に改善すべきという判断ができます。
この分析手法を取り入れる際は、あらかじめNPS®の調査票に各要素における満足度の項目を設定しておく必要があります。
アンケートは定量・定性の両面を見ることで効果アップ
アンケート調査は、顧客や自社を知るうえで重要な情報源です。定量分析と定性分析にはそれぞれに違ったメリットがありますが、両面から分析することで得られる結果が広がります。Webアンケートが普及したことでアンケートを実施するハードルは下がっていますが、集計・分析によって活用度の差が出てしまうのが実際です。本記事を参考に、ぜひ有効なアンケート調査に役立ててください。