ユーザーアンケートの作り方|インサイトを探る失敗しない調査設計のコツ

マーケティングリサーチの代表的な手法がユーザーアンケートです。しかし、設計がうまくできていないために、次の施策に活かせていないというケースは意外に多くなっています。ここでは、起こりがちな失敗要因を踏まえたうえで、アンケートの作り方・設計のコツを紹介します。

ユーザーアンケート調査で起こりがちな3つの失敗とその要因

ユーザーアンケート調査で起こりがちな3つの失敗とその要因

さまざまなプロダクトが市場にあふれる現在、ビジネスの成功に欠かせないのがユーザーニーズの把握です。広告施策の効果アップやKPIの達成、ユーザーのオンボーディングやリテンションなど、いろいろな場面でユーザーインサイトの理解が求められています。

ユーザーアンケートは比較的手軽に実施できるリサーチ手法であり、多くの企業が取り入れています。しかしながら、うまく活用できていないというケースは少なくありません。

まずは、起こりがちな失敗とその要因について見ていきましょう。

回答結果を次のアクションにつなげられない

ユーザーアンケートを実施したものの、回答結果を見ても次に何をすべきかわからない、あるいはアクションに落とし込めないというケースです。こうした状態に陥る要因は、以下の2つが考えられます。

●仮説を持たないままアンケートを実施している
●施策の優先度をつけられるように設計していない

自社の問題点に対する仮説がないままアンケート調査を行ってしまうと、何をどのように改善すれば、問題の解消につながるのかを検証できません。たとえば、プロダクトに関するアンケートで「満足・不満」の数値がわかっても、これだけでは次にとるべきアクションを導き出せません。

また、施策の優先度は、改善によるインパクトや緊急度などから決める必要がありますが、そもそも意思決定ができるように設計されていないという失敗例もあります。たとえば、KPIと紐づけた設問を用意していれば、どの部分に問題があり、改善によってどれくらいの効果が期待できるのかが推測できるので、優先的に取り組むべき施策を裏付けるデータとなります。

このように、ユーザーアンケートを設計する際は、調査で明らかにしたいこと、調査結果をどのように使うかを事前に想定することが重要です。

回答の精度が低い

回答の精度が低い調査結果は、有効な施策へとつなげることができません。たとえば、以下のような失敗ケースがあります。

●回答者の属性や利用状況などに偏りがある
●本音を引き出せない

回答の精度が下がる要因としては、アンケート調査を自社のユーザーだけで行っている、ターゲットとなる対象者が不明瞭といったことが挙げられます。また、アンケートで本音を引き出すには、設問設計のノウハウが必要です。

ユーザーアンケートを設計するときは、調査すべき対象を適切に選定し、かつ有効な回答を引き出すための設問設計に取り組む必要があるのです。

回答率が悪い

回答率が悪くなれば、万全に準備したアンケート調査であっても有効なデータとなりません。回答率が下がる要因には、以下のものがあります。

●回答者の負荷が高い設問数になっている
●回答者が答えにくい設問の仕方になっている

設問数が多すぎると回答者が面倒に感じ、回答率が下がります。また、設問が行ったり来たりしているなど、回答者がストレスを感じてしまう設計になっていると途中離脱してしまうこともあります。ユーザーアンケートを実施する際は、回答者の負担やストレスを最小限に抑える工夫が必要です。

アンケート調査設計のコツ1:意思決定ができる設計にする

アンケート調査設計のコツ1:意思決定ができる設計にする

まずは、意思決定ができるように調査設計を行うことが重要です。意識すべき3つのポイントを見ていきましょう。

調査目的を明確にする

アンケート調査によって何を実現したいのか、得られたデータを何に活用するのか、目的と次のアクションを明確にします。これらを明らかにすることで、「誰に・何を・どのように」リサーチすべきかがブレなくなり、次のアクションにつなげられる調査結果を得られるようになります。

意思決定の判断基準を明確にする

調査結果を意思決定の判断材料として活かせるようにするには、アンケート結果がどのようにアウトプットされるべきか、事前にイメージを持っておく必要があります。

意思決定の場面では、ビジネスにおけるインパクト、重要度、緊急度、実現難易度といった軸から判断がなされます。たとえば、改善によるインパクトが大きく実行難易度が低いゾーンは、優先的に施策を打つべきという判断になるでしょう。

したがって、ユーザーアンケートの設問を設計する際は、まず、どのような判断基準を用いて意思決定するのかを明確にしておく必要があるということです。

たとえば、改善による売上インパクトと施策の優先度を明らかにしたいのであれば、あらかじめ改善すべき箇所の候補を洗い出し、アンケート調査では候補箇所に対するヒアリングを漏れなく行う設計が必要です。判断基準を事前に整理しておけば、ユーザーアンケートが経営に直結する価値を生み出せるようになるでしょう。

検証すべき事項を整理する

調査目的を実現するために必要なことを整理します。具体化する必要があるのは、次の項目です。

●調査対象者(ターゲットの属性、利用状況別など)
●必要な回答サンプル数
●アンケート方法(フォーマット、回答方法、期間など)
●アンケート内容(設問数、設問内容など)

調査目的との整合性がとれているか、次に想定しているアクションにつなげられるか、この段階でしっかり確認しながら進めることが大切です。

アンケート調査設計のコツ2:ユーザーインサイトを得られる設問にする

アンケート調査設計のコツ2:ユーザーインサイトを得られる設問にする

設問の仕方を間違えてしまうと、有効な回答が得られず、結果としてデータの有用性が損なわれてしまう場合があります。ここでは、ユーザーインサイトを得るためのコツを見ていきます。

設問はMECEにする

MECEとは「抜け漏れなく、重複なく」という意味です。

設問はMECEにする

設問に抜け漏れ・重複があると、全体を過不足なくカバーできていないことになり、正確性の高いデータになりません。また、選択肢に抜け漏れ・重複があると回答者が答えにくくなり、正確性を欠くだけでなく、ストレスを与えてしまうことになります。

たとえば、「好みの飲み物は?」という設問に対し、選択肢が「コーヒー」「紅茶」「お茶」「水」となっていた場合、ジュース類の選択肢がないことになります。さらに、紅茶とお茶の違いに戸惑う回答者もいるかもしれません。

MECEは、ロジカルシンキングの基本的なフレームでもあります。設問・選択肢がMECEになっているかをしっかりチェックすることを習慣づけましょう。

バイアスがかからないようにする

アンケート調査では、回答者にバイアスがかかり、信頼性の高い結果を得られないということが起きます。

たとえば、知らず知らずのうちに回答を誘導してしまっているというケースです。バイアスがかかったデータを使えば、間違った意思決定につながる危険性もあります。ユーザーアンケートにおいてバイアスを避けるには、以下の点を意識するようにしましょう。

●回答者の心理を誘導する文言が入っていないか
無意識のうちに、自分が求める回答を得られるような聞き方になっていることがあります。たとえば、「○○について~と思いませんか」という聞き方は同意を誘う表現です。中立的な表現になっているか、十分に注意する必要があります。

●人によって解釈が変わる表現が入っていないか
たとえば、「多い・少ない」「便利・不便」「裕福・貧しい」といった基準は、その人が置かれている状況や価値観によって決まるものです。アンケートにこうした曖昧な表現を使うと、データを解釈するときに誤った見方をしてしまうため注意しましょう。

アンケート調査設計のコツ3:回答率を上げる工夫をする

アンケート調査設計のコツ3:回答率を上げる工夫をする

ユーザーアンケートの回答率を上げるためのポイントを見ていきましょう。

ストレスを感じさせない設問数

ユーザーが「回答するのに時間がかかりそう」と感じてしまうと、回答率が下がります。これを避けるには、ストレスを感じさせない設問数に調整することが必要です。また、選択肢の数が多すぎると、しっかり選ぶのが面倒になり、回答の精度が下がることがあるので注意しましょう。

端的な設問の仕方

一見して設問の文字数が多いと、「読むのが面倒」と思われ回答率に影響します。また、じっくり読まないと理解できない文章は、回答者のストレスを高めてしまうことに。一文をできる限り短くし、端的な聞き方を意識しましょう。

答えやすい設問の流れ

設問内容が行ったり来たりすると回答者が混乱してしまい、途中で離脱してしまうことがあります。設問の流れは基本的に「過去→現在→未来」の時系列に並べます。また、「全体→詳細」というように、大きなテーマから細かな点へと聞いていくことで、スムーズに答えやすくなります。

データとしての信頼性・活用度を高める鍵は調査設計

ユーザーアンケートは多くの企業が活用しているマーケティング手法ですが、データとしての信頼性や活用度を高めようと思うと、じつは奥深いノウハウが必要になります。成功の確度を高めるポイントは、事前の調査設計にあります。本記事を参考に、事業戦略や意思決定に活かせるアンケート調査に役立ててください。

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