カスタマーサクセスのハイタッチ・ロータッチ・テックタッチの方法とCX向上のポイント

カスタマーサクセスにおいて効率的なアプローチを実現するには、顧客とのタッチポイント(ハイタッチ・ロータッチ・テックタッチ)の考え方が重要になります。ここでは顧客セグメントでタッチポイントを分ける方法や、各タッチポイントでの施策例を説明します。

カスタマーサクセスのハイタッチ・ロータッチ・テックタッチとは

カスタマーサクセスのハイタッチ・ロータッチ・テックタッチとは

カスタマーサクセスとは、顧客を成功に導くよう能動的にアプローチし、結果として自社の売上・利益につなげる取り組みのことです。しかし、自社のリソースには限界があり、すべての顧客に手厚いサポートをするのは現実的に難しく、また、効率的な方法とはいえません。

そのため、顧客を3つのグループに分類し、それぞれの顧客層に合わせたアプローチをしようという考え方がカスタマーサクセスにおける「ハイタッチ・ロータッチ・テックタッチ」の区分です。

顧客セグメントはどのような基準で分けるのか、また、タッチポイントを分けるメリットについても見ていきましょう。

カスタマーサクセスにおける顧客セグメントの考え方

タッチポイントの観点から顧客を分類するときは、LTV(顧客生涯価値)をもとにグループ分けをするのが一般的です。

LTVとは、顧客が取引開始から終了するまでの期間に自社にどれくらいの利益をもたらしているかを表すもので、カスタマーサクセスにおけるKPI(重要業績評価指標)のひとつになっています。

LTVの計算式は以下の通りです。

LTV=平均購買単価×購買頻度×購買継続期間

製品・サービスへの満足度が高いほどアップセル・クロスセルの成功確度が上がり、購買単価や購買頻度の数値も良くなります。また、購買継続期間も長くなり、LTVが向上します。つまり、LTVが高い顧客群は自社にとって大口顧客であり、重要度の高いグループということができます。

これをもとに、カスタマーサクセスでは以下の3つのグループに分けて、それぞれに効果的なアプローチを行っていきます。

●ハイタッチ:もっともLTVが高い層
●ロータッチ:ハイタッチよりもLTVが低い中間層
●テックタッチ:LTVが低く、顧客数ではもっとも多くなる層

ハイタッチ・ロータッチ・テックタッチ

LTVによるセグメントをどこで線引きするかは、それぞれの企業によって考え方が異なります。自社の戦略に照らし合わせて、ルールを決めるとよいでしょう。

顧客セグメントでタッチポイントを分けるメリット

顧客セグメントによりタッチポイントを分けることで、次のようなメリットを得られます。

●顧客の利用状況に合わせたアプローチを実現
顧客の利用状況に応じてアプローチ方法を変えることで、それぞれの顧客群に最適なフォローを行えるようになります。

●自社リソースの最適配分を実現
上位顧客に合わせたフォローをすべての顧客に行うと、コストや人的リソースがかかりすぎてしまいます。逆に下位顧客に合わせれば、フォローが手薄になってしまう顧客群が出ることになります。LTVを軸に顧客セグメントすることで、自社のリソースを顧客の状態に合わせて効率的に活用できるようになるというメリットがあります。

ハイタッチの方法

ハイタッチの方法

ハイタッチの具体的な方法について見ていきましょう。

ハイタッチとは

ハイタッチはLTVがもっとも高い顧客群で、いわゆる大口顧客といわれる層へのアプローチです。自社の売上・利益に大きく貢献している層となるため、タッチポイントの中ではもっとも手厚いフォローを行い、顧客のさらなる満足度向上を目指します。

ハイタッチの施策例

ハイタッチでは顧客ごとに個別の対応をするなど、コストや人的リソースを投下する施策を実行します。従来型の営業担当がつくようなフィールドセールスは、このハイタッチにあたります。具体的な施策例を挙げましょう。

●1対1での接客
●個別に製品・サービスの導入をサポートする
●顧客の要望に合わせてカスタマイズする
●顧客の要望に合わせたオリジナルプランを提供する
●個別に勉強会や研修を実施して運営を支援する

ハイタッチでは1対1の対話の中から顧客の要望を拾い上げてサービス改善につなげることが重要なポイントになります。逆にいえば、属人的なタッチポイントになりがちという課題もあるため、アンケートを活用して顧客の声をサービスに活かすなど、顧客の期待値に寄り添うことが求められます。

ロータッチの方法

ロータッチの方法

ロータッチの分類と施策例を見ていきましょう。

ロータッチとは

ロータッチは、ハイタッチの顧客群よりもLTVが低い層に向けてのアプローチです。人的リソースは活用するものの、「1対多」の集団的なアプローチをする点がハイタッチと異なります。

ハイタッチよりも顧客数が多くなるため、いかに効率的かつ効果的な手段を考えられるかがポイントです。ロータッチの施策に成功すればLTVの向上に大きく影響するため、施策ではさまざまな方法が用いられています。

ロータッチの施策例

ロータッチの施策では顧客が必要とするタイミングに適切なフォローを行うことが重要です。具体的な施策例には以下のものがあります。

●電話やメールなど複数の担当者が対応する
●イベントやワークショップを開催する
●トレーニングプログラムを提供する

ロータッチは集団的な接点づくりになりますが、この段階でより良い顧客体験を提供できればエンゲージメントが高まります。接点を持った後にアンケートを取るなどして顧客の声を収集し、改善につなげていくことがポイントです。

テックタッチの方法

テックタッチの方法

顧客数としてはもっとも多くなるテックタッチについて見ていきましょう。

テックタッチとは

テックタッチは、LTVでは最下層に位置するものの、顧客数がもっとも多い層です。テクノロジーを活用することで、手間をかけずに多くの顧客と接点を持つことから、この名前が付けられています。

顧客あたりの単価から考えると、この層に個別に手厚いフォローをしていると非効率になってしまうため、広範囲かつ一律の対応が有効です。

テックタッチの施策例

テックタッチの施策では、各種ツールを活用しながら適切なタイミングでフォローを行っていきます。具体的な施策例には以下のものがあります。

●メールやヘルプページを活用した対応
●チャットボットの活用
●トレーニングプログラムの提供
●動画共有

テックタッチはツールを活用しながら自動化することで、効率的な接点づくりを行う点が特徴です。それだけに、施策を実行した後の振り返りが重要になります。また、SaaSのサブスクリプションモデルでは、この層は解約のリスクが常に高い状態にあるといえます。

カスタマーサクセスでは、顧客の健康状態を表す数値として「ヘルススコア」を用いた運用が進んでいますが、施策に対する満足度や解約予備軍を洗い出すには、アンケートを活用するのがよいでしょう。

アンケート調査では、いわば“声なき声”も定量的に把握することができ、先回りした施策を打てるようになります。

CXを向上するカスタマーサクセスのポイント

CXを向上するカスタマーサクセスのポイント

CX(カスタマーエクスペリエンス)は、製品やサービスの利用を通じて得られる体験すべてを指します。たんに利用時の利便性だけではなく、購入前から購入後までに体験した感情的な価値も含まれ、LTVに大きな影響を与えるものです。

したがって、カスタマーサクセスにおいて「より良い顧客体験」を意識することは極めて重要ということです。ここでは、CXを向上するためのカスタマーサクセスのポイントを見ていきます。

ツールをうまく活用して効率的により良い顧客体験を提供

テックタッチではツールを活用した接点づくりがメインとなりますが、ハイタッチやロータッチにおいても、ツールの活用によって満足度を高めることができます。

とくに、顧客が求めるタイミングに適切なフォローができるかという点は、いずれの顧客層においても重要になります。手厚さにこだわるあまり、スピード感がない対応になってしまうのは本末転倒です。

「つねに顧客の目線から成功体験を考える」というカスタマーサクセスの本質を踏まえ、有効なツールを積極的に活用するのが望ましいといえるでしょう。

アプローチ方法が最適かどうかを客観的に確認

カスタマーサクセスでは各タッチポイントでのアプローチが効果につながっているかどうかを常に確認するPDCAが必要です。アプローチの有効性を客観的に把握するには、顧客へのアンケート調査で情報を収集する方法が主流となっています。

アンケートを行うときは、各タッチポイントでの施策や特定のアクションと紐づけて実施することがポイントになります。施策ごとの顧客満足度やロイヤルティを定量的に調査したい場合は、NPS®(ネットプロモータースコア)がおすすめです。

プロダクトや接点ごとの具体的な課題が見つかれば、より良い顧客体験に向けた適切な改善施策を打てるようになります。

NPS®について詳しく知りたい方は、こちらもご参照ください。
NPS®(ネットプロモータースコア)とは?|顧客満足度との違いやメリット・導入事例まで紹介

※ネット・プロモーター、ネット・プロモーター・システム、NPS、そして NPS 関連で使用されている顔文字は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの登録商標です。

アンケート調査やツールを利用して顧客の成功体験を増やす

カスタマーサクセスではLTVを軸に顧客を3つの層に分けて、タッチポイントごとの施策を実行するのが主流となっています。ただし、企業によってはLTVではなく、全顧客に対してハイタッチ・ロータッチ・テックタッチを行ったり、異なる基準でセグメンテーションしていたりするケースもあります。

いずれの場合も、自社にとって最適な顧客対応を実現することが重要であり、そのためには現状を客観的に把握する仕組みが不可欠といえます。アンケート調査や各種ツールを活用して、顧客の成功体験を増やす取り組みをしてみてはいかがでしょうか。

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