カスタマーサポートで設定すべきKPI・KGI|カスタマーサクセスとの違いを解説
カスタマーサポートの改善や効率化を図るために重要となるのがKPI・KGIの設定です。目指すべき姿を明確にするうえでも必須といえるでしょう。ここでは、カスタマーサポートで重視されるKPIの設定方法および混同されがちなカスタマーサクセスとの違いを解説します。カスタマーサポートにおけるKPI・KGIの役割
カスタマーサポートは、顧客からの問い合わせに対応し、迅速かつ正確に疑問や不満を解消することで顧客満足度を高める存在です。しかし、業務の評価が難しいという課題があがりがちで、「どのような業務に重点を置くべきか」「何を評価すべきか」があいまいになっているケースは少なくありません。
KPI(重要業績評価指標)は、KGI(最終目標)にたどり着くためのプロセス指標です。カスタマーサポートにおいてKPI・KGIを設定するメリットには以下のものがあります。
●KGIの設定により、カスタマーサポートの「あるべき姿」が明確になる
●KPIの設定により、カスタマーサポート業務の中身が見える化され、目標達成に向けて必要なマネジメントが明瞭になる
現状のサービスレベルを把握し、より効率的に顧客満足度を高めるうえでは、カスタマーサポートにおいてもKPI・KGIを明確にすることが重要になります。
カスタマーサポートとカスタマーサクセスとの違い
カスタマーサポートと混同されがちなのがカスタマーサクセスです。役割とKPIの観点から、違いを見ていきましょう。
役割の違い
カスタマーサポートの役割は、顧客の疑問や不満を解消することで満足度を高め、企業や商材への信頼につなげることです。対してカスタマーサクセスは、顧客の成功に向けて積極的に働きかけ、自社の商材を継続的に活用してもらえる状態を作ることが主たる目的となります。
どちらも顧客の成功を支援するという意味では共通していますが、カスタマーサポートはすでに起きてしまったことに対応するという、いわば受動的な立ち位置となります。一方のカスタマーサクセスは、能動的に顧客支援を行い、未来につなげるという点が大きく異なります。
KPIの違い
受動的に「守り」の役割を果たすカスタマーサポートに対し、能動的に働きかけるのがカスタマーサクセスの役割です。役割が違えば、設定すべきKPIも変わります。カスタマーサクセスでは、主に以下のKPIが設定されます。
●解約率(チャーンレート)
顧客が自社の製品・サービスに満足している状態であれば継続的利用が見込め、解約率が下がります。とくにサブスクリプションモデルでは、解約率が利益にダイレクトに影響するため重視されるKPIです。
●オンボーディング完了率
オンボーディングとは、自社の商材が顧客に定着するまでの期間をいいます。いち早く商材への理解を深め、活用度を高めることができれば、解約リスクを防ぐことにつながります。
●アップセル・クロスセル率
より単価の高い商材に切り替えてもらうのがアップセル、関連性の高い商材を購入してもらうのがクロスセルです。いずれも、顧客単価を上げることを目的としたKPIです。アップセル・クロスセルは顧客満足度が高いほど成功率が上がることから、顧客分析・セグメントを行ったうえで実施する必要があります。
カスタマーサポートで設定すべきKPIと設定方法
カスタマーサポートでは顧客の疑問や不満を解消すると同時に、その対応における顧客体験をより良いものにすることで満足度の向上を目指します。ここでは、カスタマーサポートで重要とされる主なKPIについて解説します。
一次応答時間
顧客からの問い合わせに対し、一次応答するまでにかかる時間を設定します。設定方法では、「一次応答までの平均時間」「設定した時間内に応答した件数」という考え方があります。
回答に時間がかかることは顧客満足度を下げる要因となるため、カスタマーサポートでは重視されることが多いKPIです。指標を置くことで、どれくらいのスピードで対応できているのかが明確になり、時間短縮の道筋をつけやすくなります。
応答率・応答スピード
顧客からの電話に対する応答率・応答スピードを設定します。応答率の設定方法は「受信件数/着信件数」または「放棄呼率(100%-応答率)」を測る場合もあります。応答スピードは「平均応答時間」もしくは「設定した時間内の応答件数/受信件数」を設定します。
電話がつながらない、あるいは待ち時間が長いという状態は顧客の信頼を低下させます。この数値が悪い場合は、オペレーターが不足していないか、より効率的に受電対応できる方法はないかを模索する必要があるでしょう。
解決率
顧客からの問い合わせに対する解決率を設定します。設定方法は「解決数/問い合わせ数」が一般的です。
解決率はカスタマーサポート業務の根幹であり、顧客満足度に大きく影響するため、とくに重視すべきKPIです。未着手・未解決のチケットが多い場合、早急に対策をとる必要があります。
処理時間
顧客からの問い合わせに対応した時間を設定します。設定方法は「平均通話時間+平均後処理時間」で計測するのが一般的です。オペレーターの業務効率を高めるうえで重要となる指標です。
ワンストップ処理率
顧客とのやり取りにかかった回数を設定します。設定方法の考え方として、問題を解決するまでのやり取り回数を測定する方法、担当者が回答できずにエスカレーションした回数を数えるという方法があります。
いずれにおいても、顧客を待たせることは満足度の低下につながります。ここに課題がある場合は、できる限りワンストップで問題解決できる体制を検討するなどの施策が必要です。
対応への顧客満足度
カスタマーサポートの対応に対する顧客満足度を測定し、KPIを設定します。測定方法では、応対完了後に顧客から満足度に関するアンケートを取るほか、NPS®(ネットプロモータースコア)が多く用いられています。
NPS®は他者への推奨度を測る調査手法で、顧客ロイヤルティを数値化できるという特長があります。業績との相関性が高いことから、昨今はカスタマーサポートの対応満足度を測る指標としても活用されています。
NPS®についての詳細はこちらもご参照ください。
NPS®(ネットプロモータースコア)とは?|顧客満足度との違いやメリット・導入事例まで紹介
※ネット・プロモーター、ネット・プロモーター・システム、NPS、そして NPS 関連で使用されている顔文字は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの登録商標です。
カスタマーサポートのKPI設定時の注意点
KPIの設定では注意すべき点がいくつかあります。具体的に見ていきましょう。
方向性が明確か
KPIは、最終目標であるKGIを着実に達成するための道筋になるものです。したがって、KPIを設定する前提として、カスタマーサポートのKGIを設定する必要があるということです。
KPIの設定が不適切な場合、「あるべき姿」とのズレが生じ、経営目標と乖離してしまいます。 カスタマーサポートがどのような役割を果たすのか、ゴールを明確にしたうえでKGI・KPIの方向性を定めることが重要です。
定量評価できるか
KPIはプロセスの評価を可視化するものであるため、数値として定量評価できるものを設定する必要があります。ただし、計測に時間がかかりすぎてしまうと迅速な改善が行えなくなり、KGIの達成に影響が出てしまいます。
効率的な計測方法を検討する、進捗管理の体制を明確にするといったこともあわせて考える必要があります。
達成可能か
どのようなKPIを置くか、どれくらいの目標値にするかは企業の業種や状況によって異なりますが、目標数値は実現可能なものとすることが重要です。高すぎる目標は従業員のモチベーションを下げてしまうことがあるため注意しましょう。
また、カスタマーサポートの努力だけでは改善できないKPIを置いてしまうと、アプローチと結果が結びつかなくなってしまうため注意する必要があります。
たとえば、解約率はプロダクトの改善や他部署との連携が必要となるケースが多く、カスタマーサポートだけで結果を出すことが難しい場合があります。カスタマーサポートの活動のみで決まる数値を設定するようにしましょう。
KGI達成につながるか
KPIはKGIの道筋であるため、KPIを達成すればKGIを達成できるようにする必要があります。KPIの設定時に必要となるのが、CSF(Critical Success Factor:重要成功要因)の考え方です。KGIの達成にもっとも相関性のあるプロセスを洗い出すことが極めて重要ということです。
これをもとにKPIを設定し、PDCAを回しながら随時見直すことで効果的なKPIを設定することが可能となります。
カスタマーサクセスと混同しないか
カスタマーサポート業務の中にはカスタマーサクセスと重複するものもあります。しかし、攻めのサポートを行うカスタマーサクセスと、守りの支援をするカスタマーサポートで同じKPIを設定すると、アプローチ方法の違いから混乱を生むケースが少なくありません。
最終的なゴールは同じであっても、KPIは明確に区分けしたほうがよいでしょう。
より良い顧客体験を提供するにはKGI・KPIの設定が必要不可欠
近年ではSaaSを始めとしたサブスクリプションモデルが台頭し、顧客の運用を支援する必要性や満足度を高めて継続利用を促す重要性が増しています。
カスタマーサポートの役割を「顧客の満足度向上」と置いている企業は多いですが、競争が激しい昨今では、より良い顧客体験を提供できる場としての重要性が高まっています。顧客の期待に応える体制を整備するうえでも、KPI・KGIの設定は必要不可欠といえるでしょう。