アンケート調査票|設問項目・回答形式の作り方のコツをわかりやすく解説
アンケートは手軽に実施できるデータ収集の方法ですが、調査票の作り方によって結果が大きく変わってしまうほか、回答率にも影響が出るため注意が必要です。ここでは、アンケート調査票の設問や回答形式を作る際に押さえておきたいポイントを解説します。アンケート調査票を作成する前に
求めるデータを集められる調査票を作るには、まず調査目的と用途、調査対象者を明確にしておくことが重要です。それぞれのポイントを見ていきましょう。
調査目的と用途を明確にする
調査目的とは、調査を実施することでどのような課題を解決したいのか、そのためには調査によって何を明らかにするのかを具体的にまとめたものです。現状と課題を整理した上で、調査目的と調査結果の用途を明確にします。
例を見てみましょう。
例)
●現状:新商品をリリースしたが、見込んでいたほど売上が伸びない
●課題:売上が伸びない理由が不明
→商品は認知されているか?
→商品の強み・特徴はターゲットに伝わっているか?
→購買プロセスのどこに問題があるのか?
●調査目的:売上が伸びない要因を特定して、次の施策を決めるための判断材料とする
●調査結果の用途:広告クリエイティブの見直しとマーケティング施策に活用する
上記例のように整理することで、必要な設問項目を漏れなく設定することができます。また、アンケートを実施したものの、調査結果を有効活用できないといった失敗がなくなり、次のアクションにつなげられるようになります。
調査対象者を明確にする
アンケート調査の目的に沿って、調査対象者の条件を明確にします。条件を決める際の観点として、以下のものがあります。
●基本属性(性別・年齢・居住地・家族構成・職業など)
●行動面の特性(商品の利用経験や利用金額など)
●心理面の特性(ライフスタイル、価値観など)
たとえば、自社商品の満足度を調べたい場合は、「直近1年間に商品を購入したことがある人」というように購入経験を条件に含めます。ブランド認知度調査のように幅広い層から情報を集める必要がある場合は、全国の20〜70代男女を対象にするというように網羅性を意識する必要があるでしょう。
調査対象者の条件設定が適切でないと、データに偏りが出るなど信頼性を担保できなくなるため、調査目的に照らし合わせながら慎重に決めます。
アンケート調査票~設問項目の作り方のコツ
適切な回答結果を得るためには、設問項目を作る際に留意しておきたいことがいくつかあります。ここでは、とくに押さえておきたいポイントを紹介します。
人によって解釈が変わる言葉を使わない
設問文を作るときは、人によって解釈が変わる表現にならないように注意が必要です。例を見てみましょう。
例)
・最近(×)→直近1カ月(○)
・時々(×)→週1回(○)
・少し(×)→1個(○)
上記例のように、頻度や量は具体的な数値を用いることで基準を揃えることができます。
回答を誘導する聞き方をしない
回答を誘導する聞き方をしてしまうと、バイアスが生じて適切な調査結果を得られなくなります。
たとえば、「Q.あなたはAだと思いますか?」という設問文は誘導的な聞き方です。この場合、「Q.あなたはどう思いますか?」という聞き方が適切です。また、「Q.近年○○が流行していますが、あなたは興味がありますか?」という設問文も、流行に関して意識させる誘導的な聞き方になっています。
設問文は簡潔にまとめ、回答に影響が出る聞き方になっていないかをしっかり確認しましょう。
1つの質問で聞くことは1つのみ
1つの質問で2つ以上のことを聞いていないか、注意しましょう。たとえば、「Q.あなたはAやBについて興味がありますか?」という設問文は、AとBの2つについて尋ねています。これはダブルバーレルといい、複数の事柄を同時に質問しているため正確なデータを得られません。
専門用語・略語は使わない
設問文では専門用語や業界用語、略語は避けます。自社では当たり前に使っている言葉でも、一般的にはわかりにくい場合があるためです。ただし、調査対象者が専門家や特定の領域に詳しい人に設定している場合は、使ったほうがわかりやすいケースもあります。
設問数についての注意
設問数はアンケートの回答率や精度に大きな影響を与えます。一般に、20問を超えると回答者が負荷を感じやすいとされています。
回答者が面倒に感じてしまうと、途中離脱が起きて回答率が下がってしまうことがあります。また、「適当に回答しておこう」という心理状態になるリスクもあり、回答内容の精度が落ちることも懸念されます。
設問数が多くなりすぎた場合は、本当に必要な設問かどうかを見直して精査するようにしましょう。どうしても多くの設問が必要という場合は、謝礼などのインセンティブを用意して回答者のモチベーションを維持するというのも一案です。
聞く順番についての注意
回答者がスムーズに答えられるよう、設問の順番に配慮することもポイントの一つです。たとえば、「YES/NO」で答えられる設問をはじめに持ってくるなど、回答しやすいものからスタートするという工夫の仕方があります。
また、設問の順番によって回答結果に影響が出る場合があるため注意が必要です。たとえば、絶対評価(単独での評価)と相対評価(複数を比較したときの評価)の両方を聞く場合は、絶対評価→相対評価の順で聞くのが原則です。これは前項の回答が次項に影響するのを避けるためです。
アンケート調査票~回答形式の作り方のコツ
アンケートの回答形式には様々な種類があります。「どのような答えを引き出したいのか」「どのように分析したいのか」を事前にイメージした上で、最適な形式を選ぶ必要があります。アンケート調査票でよく用いられる回答形式を見ていきましょう。
単一回答
単一回答とは、選択肢の中から1つのみ選んでもらう方法です。「YES/NO」や「AまたはB」のようにどちらかを選ぶ二項選択法と、複数の選択肢から1つのみ選ぶ多項選択法があります。回答者は1つのみ選択することになるので、もっとも重視することや、もっとも当てはまることを知りたい場合に適しています。
単一回答では、選択肢の内容に抜け漏れ・重複がない状態(MECE)に設定することが重要です。当てはまるものがない場合に「特にない」「その他(自由記述)」などを選べるようにしておきます。
複数回答
複数回答とは、選択肢の中から当てはまるものを複数選んでもらう方法です。当てはまるものを全て選んでもらう場合と、3つまでというように制限する場合があります。
複数回答は、回答者の実態に即した結果を得やすい点が特徴です。単一回答と同様に、選択肢がMECEになっているかを確認しましょう。
自由回答
自由回答とは、文章や単語などを自由に記入してもらう方法のことです。選択肢を作るのが難しい場合や、回答者の言葉で答えてほしい場合に有効です。自社が想定していなかった情報を得られるという利点もあります。ただし、自由回答が多いと回答者の負担になりやすい点に注意が必要です。
自由回答で得た情報は、テキストデータを定量的に解析するテキストマイニングなどを用いて分析する方法もあります。
段階評定法
段階評定法とは、5段階や7段階などの尺度から、もっとも当てはまる度合い・程度を選んでもらう方法です。感覚や認識の程度などを定量的に測定したい場合に適しています。
たとえば、顧客満足度調査で以下のような5段階評定の回答形式を見かけることがあるでしょう。
5段階評定の例)
1.非常に満足
2.やや満足
3.どちらともいえない
4.やや不満
5.非常に不満
一般に5段階の尺度が多く用いられていますが、どれくらいの細かさで分析したいのかによって3段階・4段階・7段階の尺度で設定することもあります。
順位法
順位法とは、選択肢に1位・2位・3位のように順位をつけてもらう方法のことです。全ての選択肢に順位をつけてもらう場合と、上位○位までのように制限する場合があります。
たとえば、「Q.あなたが好きと思うものを1位から3位まで選んでください」といった質問をして、回答してもらいます。回答者の優先順位や重視する順位などを明らかにしたい場合に適している方法です。
質の高い調査票を作成しよう
調査票作成はアンケートの成否にかかわるため、ポイントをしっかり押さえておくことが大切です。作成者本人は不備に気づきにくいものなので、周囲の人に見てもらうなどしてブラッシュアップするのも良い方法です。質の高い調査票を作成して、次のアクションプランに活かせるアンケートを実施してください。