営業活動の言語化・数字化がカギ!データ分析で顧客CXを高めるには? 〜CX college vol.4〜
こんにちは、クリエイティブサーベイ法人チームです。
本記事は2020年1月30日に開催した「あらゆるシーンでの顧客体験(CX)を最大化させるための情報最前線」をテーマとした勉強会CX college vol.4のレポートです。
『データドリブンな営業活動』『顧客の定性情報の数値化』と聞くと、なんだか冷たい印象を受けませんか?
今回のCX collegeのテーマは、『質感のあるデータ分析と、セールス組織の新たな関係』。登壇者は、LAPRAS株式会社でセールスマネージャーを担う中島佑悟(なかしま ゆうご)さんです。ゴリゴリの営業マンでありながらもデータ分析を得意とする中島氏によれば、顧客CXを高めるポイントは営業活動の言語化・データ化にあるのだそう。
それではさっそく、営業における『質感のあるデータ分析』について見ていきましょう。
※本記事は中島さんがまとめたスライド資料も参照しながら、ぜひお読みください。 スライド資料はこちら
「とりあえずアポ行け」が営業の質を下げる!
勉強会は、クリエイティブサーベイ代表の菊地氏による中島氏の紹介からスタートしました。
菊地氏:
今日登壇いただくのは、LAPRAS(ラプラス)株式会社でセールスマネージャーをしている中島さんです。
近年のIT化とともに『営業をデータ化する』『データドリブン』ってよくいわれるようになりましたが、なかでも中島さんのデータ分析ってかなり本格的なんですよね。
バリバリの営業マンながらも、レベルの高いデータ分析をされている中島さんに、その両面からお話をお聞きできればと思います。
中島氏:
はい。改めて、今日よろしくお願いします。僕は理系出身ではあるもののエンジニアとかではなく、これまでゴリゴリの営業をやってきました。
営業も分析もやってきた人間として、今日は『営業のデータ分析』についてお話していきたいと思います。
今回お伝えしたいのは『データ分析を通じて顧客CXを高めよう』ということです。
みなさん、営業として「あと40件行けば今月達成!とりあえずアポ行け!」といわれた経験はありませんか?
僕はこの「とりあえずアポ何件行け」とか「数打ちゃ当たるでしょ」という姿勢には強いアンチテーゼを感じていて、正直、今の世の中に合ってないと思っています。
というのも、『数打ちゃ当たる』の手法は、すごく非生産的なんです。なぜなら、メンバーの精神的な負荷が重くなるから。やみくもにリストに当たってお客さんに嫌な顔をされることを繰り返していては、顧客CXにも反します。
だからこそ僕は『量で稼ぐ』ではなく『営業の質を上げる』という、ある意味当たり前の話をしていきます。
効果を上げる「営業データ作り」のコツとは?
まずは、営業データとは何かということからお話していきます。
僕は「データは現実世界の切り出しでしかない」と考えています。いろいろな情報から、何かしら1つの数字を切り出したものでしかないんですよね。
営業活動をするなかで、いろいろな情報を得ることができます。でも、結局『アポ数3件』という『数字データ』だけで済ませてしまうことって結構あると思うんです。当たり前ですが、もしこのまま商談を30回繰り返しても『アポ数30件』という数字にしかなりません。
数値だけ追いかけることを繰り返すと、結果的に『アポ数をこなしているのに、情報は契約数とアポ数しかない』となりかねません。
これでは、契約に至った理由(売れている理由)が完全にブラックボックスになってしまいます。
こうなったら、もはや何度もくじ引きを引くようなものです。10%の確率で当たるくじ引きを、今月はあと3回当てる必要があるから、あと30回引こう、と数に頼るわけです。
このような『数打ちゃ当たる』に陥らないためにも、売れている理由を言語化、データ化することが重要です。
営業データの作り方
データの作り方については、まずアポ1件に対して『誰が』『誰に』『何を』『いつ』『どうやって』の視点から具体性を考えます。
例えば『誰が』が僕だとすると、髪の毛は黒で身長はこれくらいで…と、それだけでいろいろな情報がありますよね。これはあくまで例ですが、限りなく現実に近づくように考えるのがポイントです。
続いて、そのうち変数に影響しているものを見つけ、影響度を計測します。ここで重要なのが、その定性的な情報を『数値データ』として表すことです。
数値化して計測可能にするのには、大きく2つのメリットがあります。
1つ目は、効果の大きさが分かること。数値にすることで、どのレベルの効果があったのかが分かりますし、どちらの項目が大事なのかを比較することも可能です。
2つ目は、他者の失敗を自分の学びにできることです。数値は万人共通だからこそ、他者の失敗を学びとして、同じ失敗を防ぐことにつながります。
営業のデータ分析法
営業のデータ分析は、課題選定、仮説検証、ビジネス利用と大きく3つのパートに分けられます。
営業データの分析1:課題選定
最初の課題選定は本当に大事なことなのに、できていない方が非常に多い印象です。
課題の選定では、『何を分析するのか』を絞ることが重要です。
例えば、営業のコンサルをお引き受けして相手の課題を聞くと、「全部が課題だよ」とか「最初から最後まですべてを解決したい」という回答が多い。その状態で何にも絞らなければ、数値解析はできないんです。
分析項目を絞ったら、次はファネルを分解して、結果の指標を決めます。指標は、『改善ライン』と『改善指標』の2つで考えます。
実際、弊社の課題選定は次のような形で行っています。
まずは、マーケットサイズからリード化、商談化、契約、継続とファネルに分け、それぞれの件数や移行率、CVRなどを書き出します。これが基礎的な第1歩です。
その上で、『改善ライン』と『改善指標』を決めていただきたいと思います。
改善ラインは、課題のフェーズを細かく切るイメージ。1度にすべての工程を改善するのは無理なので、「お客さんの問い合わせ後の商談化率を上げたい」など、細かく切りましょう。
改善指標の決め方は2つしかなくて、率か量です。 受注でいえば、『受注率』か『受注金額』ですね。
ここでお伝えしたいのは、まずは問題を切り分けること。そこから『どのラインの課題を』『どんな改善指標で解決するのか』を決めないと、何も進まないですよという話です。
営業データの分析2:仮説検証
続いて仮説検証は、そのなかでも『仮説を立てる』『データにする』『検証する』の3つのパートに分かれています。
順番に見ていきましょう。
仮説を立てる
仮説は、簡単にいえば「なぜ受注しないのか?」その理由を考えること。
仮説検証には『原因の仮説検証』と『打ち手の仮説検証』があります。
例えば商談をして契約に至らなかった場合、その原因を突き止めるのが『原因の仮説検証』。一方で、商談でお客さんに動画コンテンツを見せていたらどうだろう、などと対策を考えるのが『打ち手の仮説検証』です。
営業では使えるデータや時間・工数が限られているので、ここはPMやマーケの人に頼むのも良いかと思います。
営業がやるべきことは、シンプルに『なぜ改善ラインを超えないのか(原因の仮説)』と『どうすればいいのか(打ち手の仮説)』を考えることです。もし商談でお客さんの気持ちが動かなければ、「その理由って何だろう?」「どうすればいいんだろう?」と考えてみてください。
例えば弊社では下記のように考えています。
カスタマージャーニーを引いて 、心理モデルや自社サービスとの接触チャネルを書いて、フェーズ移行しない理由を抽出します。
例えばうちの課金モデルの場合「成果報酬ではなく前金モデルなのが悪いのでは」とか、「タイミングの問題かも?」とか、考えられる理由を洗い出します。要は、なぜお客さんが態度変容をしないのかってことですね。
今回は例として、以下の仮説を設定してみます。この仮説に対して、それを検証するためのデータを詰めていきます。
データにする
いろいろなデータがあるなかで、仮説検証にはそれぞれどんなデータを使えばいいかを考える必要があります。
営業活動におけるデータは、大別すると下記のようになります。
属性値系、行動ログ系、外部要因系、ヒアリングなどに基づく活動系です。これをもとに、先ほどの仮説をデータ化していきます。
僕の場合、改善ラインを超えない理由を考えつつ、それがどんな現象に現れるのか、どんな属性に起因するのかを考えてデータ化します。
例えば『お客さんからのメールがなければ意欲が低い』とか『導入見込みが低ければ社長は同席しないだろう』といった感じです。そんな風に、データにするならどんなものがあるかを考えて貯めていきます。
検証する
ここでいう検証は、どんな手法を使って分析するのか?ということです。僕は、この手法は『クロス集計』だけでいいと思っています。
クロス集計は、簡単にいえば『求めたい数値』と『検証したいもの』を並べて見る方法。縦軸と横軸に項目を割り振って、該当する割合などをパッと理解することができます。
他にも仮説検定・相関係数・回帰などいろんなものがありますが、きちんと理解していないと使いこなせないので、クロス集計で十分です。
営業データの分析3:ビジネス利用
この結果をもとに、ビジネスでレバレッジを効かせていきます。
先ほど例として挙げた仮説をデータを検証して結果が出れば、次のようなビジネス利用が考えられます。
例えば、エンジニアさんの同席で受注率が20%上がるんだったら、僕は先にエンジニアさんに同席依頼をかけておきます。もし同席がない場合にはアポを速攻で終わらせて、次に同席してくださいと依頼をかけますね。
逆に、オンラインよりも訪問の方が受注率が10%高いと分かったとしても、10%であれば時間効率を考えてオンライン比率を上げるという判断もできます。
つまり、仮説によって良い・悪いの数値が分かることで、『打ち手』の質がだいぶ上がってくるんです。
【実践編】営業のデータのビジネス利用術
最後に、僕が営業データの活用について実際にやっていることをお伝えします。
まずは、ターゲティングリストの作成です。
弊社はこのようなターゲットリストを作っていて、商談前にその企業の受注率が分かります。これは、競合さんの利用をもとに算出しています。
これをもとに、「この会社さんは先月に競合サービスをやめて乗り換え時期だから、今アタックしよう」みたいな判断ができます。
また、企業から問い合わせがあった時点でその企業の受注率を出して、競合さんの情報がbotで流れる仕組みもあります。
これによって、どのぐらいの受注率を見込めるかが分かるだけでなく、商談先で「御社ってこういうサービス使ってますよね」と事前調査をしている印象を与えることもできます。
また問い合わせ対応については、対応分岐による効率化・変数に応じた自動対応によって外注しています。
あとは、受注しなかった理由や受注に至るまでの『ストーリー』をドキュメントにして、外注先に投げておくことです。これにより、受注に関係する・しない要素が分かって非常にスムーズです。きちんと共通認識を作れれば、正直、誰でも受注できるようになるはずです。
何を抑えるべきかを明確にすることで、多くの業務を外注できるというメリットもあります。
弊社の営業は兼任が多く、専任は僕を含めて2人。だからこそ、受注ストーリーをドキュメント化したり、説明の内容を記事や動画・イベントに落とし込んだりすることで、課題のボトルネックを解消しています。
なぜ売れているのかって、みなさん経験としては理解していると思うのですが、それをデータ化できていないケースは多いかと思います。とはいえ、売れる理由のデータ化をしなければ『数打ちゃ当たる』の考えになりかねません。
営業のデータ分析(=売れる理由の言語化・数値化)によって営業活動の質を上げることは、必然的に顧客CXを上げることにつながります。
ぜひ今回のお話を参考に、売れる理由の言語化・数値化を実践してもらえればと思います。
■登壇者
中島 佑悟
LAPRAS株式会社 セールスマネージャー
Web上の様々な情報から個人プロフィールを自動生成するLAPRASのマーケティング・セールスマネージャー。新卒でトレンダーズ株式会社に入社後、業務委託にて複数社の支援を行う。営業を主軸に商品開発から人事まで幅広い業務を経験。受注要因をモデル化した統計解析や、Python/GASを利用した業務改善が得意領域。
■モデレーター
菊地 孝行
クリエイティブサーベイ株式会社 代表取締役
新卒で人材系企業に入社。人材紹介部門の立ち上げに参加し、法人セールスやキャリアコンサルタント等に従事。2005年に株式会社ワークスアプリケーションズに入社。主に大企業・地方自治体へのセールスとコンサルティングを担当し、2012年よりセールス部門のVice Presidentとしてマネジメントに従事。2019年4月にクリエイティブサーベイ株式会社の代表取締役に就任。