先端科学技術に関する「市民の声」を収集し、様々な研究活動に還元

国立研究開発法人 科学技術振興機構 日本科学未来館

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日本科学未来館は、「科学技術を文化として捉え、社会に対する役割と未来の可能性について考え、語り合うための、すべての人々にひらかれた場」を設立の理念として、2001年に開館した国立の科学館です。
同館では、アンケート形式の体験型展示やWebアンケートに『CREATIVE SURVEY』を導入。導入前よりアンケート作成の自由度が増し、アンケートの間口も広がったことで、深く・幅広い意見を収集できるようになったといいます。
CREATIVE SURVEYを導入する前の課題や選定のポイント、使用例などについて、プログラム企画開発課の渡邉様と運営管理課の濱様に伺いました。

濱様(写真左):オピニオン・バンクの業務全体を統括
渡邉様(写真右):展示・イベントの企画やフロアでの解説などをする科学コミュニケーター

※以下敬称略

「科学」というキーワードで社会とつなげたい

Q:日本科学未来館はどのような施設ですか

渡邉:日本科学未来館は、先端の科学技術が体験できる国立の科学館です。先端科学技術と社会をつなぐ施設として、科学技術にまつわるテーマの展示・イベント・ワークショップなどを実施しています。

当館が掲げるミッションは、一般市民・研究者・行政などの様々なステークホルダーを『科学』というキーワードでつなげること。そのための取り組みとして、新しい科学技術について来館者に意見を募り、研究機関や行政機関にフィードバックする活動も行っています。

濱:来館者の意見を収集する中心的な役割を担っているのが、『オピニオン・バンク』という体験型の展示です。5階常設展『世界をさぐるゾーン』には、タッチパネル式のアンケートシステム(オピニオン・バンク)を複数台設置し、来館者は関心のあるテーマを選んで回答できます。

収集した意見は集計・分析し、未来館の次の企画に活かしたり、研究者が次の研究テーマを決める参考材料にしていて、CREATIVE SURVEYのアンケートを使用しています。

日本科学未来館公式HP:オピニオン・バンク
https://www.miraikan.jst.go.jp/research/opinionbank/

Q:研究機関などに市民の声をフィードバックする役割があるんですね

濱:はい。当館には学生やカップル、ファミリー層など、様々な属性の方が来られるので、多様な意見を吸い上げることができます。

渡邉:研究者の視点とは異なる意見や考え方が寄せられることも多く、研究活動に役立てていただいています。当館には、集めた声を社会に還元する役割もあるので、成果の得られたアンケート結果は館内のパネル展示やホームページで公表していきます。

Q:お二人の主な業務内容を教えてください

渡邉:私は科学技術を分かりやすく伝えるとともに、科学技術のあり方や未来社会について、お客様と対話をしながら一緒に考えていく『科学コミュニケーター』をしています。人工知能やゲノム編集など、最先端の科学技術の研究者と連携しながらイベントを企画・実施することもあります。

また、オピニオン・バンクのアンケートを設計し、来館者の意見を研究者にフィードバックすることも科学コミュニケーターの仕事です。

濱:私はオピニオン・バンクの業務全体を統括する立場で、オピニオン・バンクを担当する5名の科学コミュニケーターをサポートしています。

セキュリティや機能面などの、すべての要件を満たした唯一のツールだった

Q:CREATIVE SURVEYを導入する前は、どのようなアンケートシステムを使用していましたか

濱:導入前は、オピニオン・バンクのために開発された専用システムを使用していました。フロアに設置したタッチパネルで表示させるものだったので、アンケートの対象は来館者のみでした。

そのシステムは機能面の制限が多く、アンケートを思い通りに設計できない仕様だったため、作成に対してフラストレーションがありました。例えば、設問文は全角72文字しか書けなかったり、回答の選択肢は8個までしか設定できない。また、動画のリンク・再生もファイルサイズの上限が小さすぎて、ほとんどできませんでした。

渡邉:回答内容によって次の設問を変えることができる分岐機能がないところも、非常に不便でした。

濱: また、セキュリティ対策やメンテナンスもすべて当館で対応しなければならず、担当の技術スタッフの負担も非常に大きかったです。改修も考え、開発業者に見積もりをとりましたが、予算を大きく上回る金額となりました。

そこで、クラウドサービスの中から我々にフィットするものを導入したほうが得策だと考え、様々なツールを検討してCREATIVE SURVEYを選定しました。

Q:ツール選定の要件と、CREATIVE SURVEYを選定した理由を教えてください

濱:選定要件は、大きく3つありました。 1点目は、セキュリティが強固であることです。当館は公的機関ということもあり、クラウド型サービスを導入する際は、厳しいセキュリティ要件が課されます。

2点目は、多言語表示が可能なことです。現在の人出は新型コロナウイルスの影響で減っていますが、通常は海外からも多くのお客様がいらっしゃいます。そのため、多様な言語に対応できる仕様であることは、大きな要件のひとつでした。

3点目は、デザイン・機能面の自由度が高いことです。オピニオン・バンクではアンケート自体が展示物になるので、見た目にもこだわる必要があります。また、多様なお客様がアクセス・操作しやすい仕様でなければなりません。

選定時は、セキュリティ要件だけではじかれるツールも多かったのですが、CREATIVE SURVEYは唯一、すべての要件をクリアしました。

営業の方から機能の説明を受けたとき、期待以上だったので「すごいツールだね」「こんな使い方も、あんな使い方もしたい」と導入前からみんなで盛り上がっていました。

渡邉:可能性が広がりましたね。科学コミュニケーターは、来館者とのインタラクションを生み出すためにアンケートをどのようにデザインし、どう見せるかを考えています。デザインの選択肢や機能が豊富なCREATIVE SURVEYなら、イメージ通りのアンケートが作成できそうだと感じました。

分岐ロジック・スコアロジックを駆使して思い通りのアンケートを作成

Q:実際にCREATIVE SURVEYを使用した施策についてお聞かせください

渡邉:CREATIVE SURVEYを初めて使用したのは、一般社団法人 人工知能学会にご協力いただきながら企画した『みんなでつくるA​Iマップ』という取り組みです。

これは、人工知能(AI)への率直な気持ちや意見をアンケート『ハロー!AI社会~人工知能で何したい?』で集め、結果が一目でわかるマップを作成するという企画。AIの活用が想定される分野、『医療』『防災』『選挙』『恋愛』などの9つのテーマを用意して、その中から3つ選択・回答するというものです。CREATIVE SURVEYの分岐ロジックやスコアロジックなどを組み合わせて作成しました。

濱:また、展示フロアだけではなくWebでもアンケートを配信し、当館のホームページ・SNSのユーザーの声も集めました。

渡邉:アンケートの間口が広がったおかげで多種多様な意見を収集で​き、一般社団法人 人工知能学会の研究者の方々からも好評でした。

「みんなでつくるAIマップ」
 https://www.miraikan.jst.go.jp/resources/miraikanfocus/202006121367.html

多種多様な企画にCREATIVE SURVEYを活用

Q:そのほかの使用例についても簡単に教えていただけますか

渡邉:AIマップの事例のほかには、新型コロナウイルスの感染が拡大しはじめた時期に世の中に流れていた噂について、意識調査を実施しました。収集したデータは、当館の科学コミュニケーターが出演していた『ニコニコ生放送』の『わかんないよね新型コロナという番組の担当チームに提供し、番組づくりに役立ててもらいました。

濱:その他に、緊急事態宣言解除後の6月から実施しているのが、当館が掲げた『risk≠0』のスローガンについてのご意見をお聞きするアンケートです。感染拡大防止の観点から館内設置のタッチパネルは運転を停止していたため、はじめはWebのみでのスタートでしたが、8月頃からタッチパネルでの意見収集も再開しました。
タッチパネルでの回答数がかなり増えてきているので、徐々に来館される方も増えていることを実感しています。

まだ検討中ですが、このアンケートの結果は、館内でパネル展示という形で公開したいと考えています。

渡邉:新型コロナウイルス関連以外でも複数のアンケートを実施しています。例えば、抗生物質に関するリテラシー調査。こちらは抗生物質が効かない薬剤耐性(AMR)に関するトークイベントのために実施したもので、従来のアンケート型ではなくクイズ形式にし、回答される方に興味を持っていただくことを意識しました。クイズの最後には正しい情報を表示する工夫も盛り込みました。

濱:9月にはお月見に関するアンケートも実施しました。テーマは『月で食べる食材やお弁当』。CREATIVE SURVEYは画像を見せて選択するという設問タイプがあるので、月で栽培できるもので作ったお弁当のイメージ画像を交えた画像選択型のアンケートを作成しました。

幅広い層の声を収集できるようになった

Q:CREATIVE SURVEYを導入して、どのような変化がありましたか

濱:大きく変わったのは、ホームページやSNS経由でWebアンケートを実施できるようになったことです。以前は展示フロアのオピニオン・バンクに立ち寄った方の声しか収集できませんでしたが、CREATIVE SURVEYによってアンケートの間口が広がり、遠隔地の方や、来館経験のない層の声も集められるようになりました。

渡邉:それにより、回答者の属性分布にも変化が見られるようになりました。フロアでのアンケート回答者は未成年の割合が多いですが、Webアンケートでは年齢分布が高くなる傾向があります。例えば、AIマップを作ったときのアンケートでは30代の回答者が最も多かったので、導入前とは異なる属性の人をターゲットにした施策もできそうだと思いました。

濱:また、フロアとWebでは、回答の質にも違いがあります。フロアのアンケートは途中で離脱する人が割といて、回答の精度はあまり高くありませんでした。Webアンケートの場合は回答完了率が高く、自由記述にもしっかりと記入してもらえることが多いです。

渡邉:以前のシステムでは作成できる設問の種類や数に制限がありましたが、CREATIVE SURVEYを導入してからはその制限がなくなり、聞ける内容の幅が大きく広がりました。そのおかげで、科学技術に対する回答者の率直な意見を引き出しやすくなったと感じています。

Q:CREATIVE SURVEYの使用感やカスタマーサポートについて率直な感想をお聞かせください

渡邉:CREATIVE SURVEYは直観的に操作できる仕様なので、アンケートを簡単に作成することができます。機能も豊富で、科学コミュニケーターがそれぞれ持っているイメージに沿った企画ができるようになって嬉しいです。

濱:初心者でも簡単にアンケートを作れますし、反対に作り込みたい人はとことん作り込める。幅広いユーザーに対応しているところがいいですね。

渡邉:また、カスタマーサポートの方には操作や設定の方法などのサポートをしていただき、とても感謝しています。

濱:CREATIVE SURVEYの検討・導入時は、セキュリティ要件など様々なハードルがありましたが、御社に辛抱強くお付き合いいただいたおかげで無事に導入・運用できています。御社の方々は、ただ質問に回答するだけではなく、一緒に解決策を考えていこうという姿勢があって非常に心強いです。

日本科学未来館を科学技術分野の“シンクタンク”にしたい

Q:今後、CREATIVE SURVEYでやりたいことなどはありますか

濱:近い将来、視覚障がいがある方にもアンケートに参加してもらえるようにしたいです。

渡邉:当館が参画している産学連携の研究プロジェクト『クロスダイバーシティ(X Diversity)』の一環で、『IT技術使ってる?』という身体にハンディキャップのある方が、コロナ禍における生活でどのようにIT技術を利用しているかを調査する研究プロジェクトがあります。しかし、そのプロジェクトでのアンケートが視覚障がいのある方にとって回答することが難しいという課題がありました。

濱:当館は、公的機関として身体にハンディキャップのある方のウェブアクセシビリティにも配慮する必要があります。

今後はCREATIVE SURVEYとブラウザのテキスト読み上げでアンケートを行うなど、視覚やその他のハンディキャップのある方が、より積極的に回答できる様なアンケートにしたいと考えています。実装方法はまだ検討段階なので、御社と相談しながら進めていきたいです。

また、アクセシビリティの点では、より多くの声を集めるのが公的機関だからこその義務でもありますし、多言語の対応なども進めていきたいです。

Q:そのほか、将来的な展望があれば教えてください

渡邉:未来館は、科学技術に関する市民の声を収集・分析するシンクタンクのような場所になりたいと考えています。まだ構想の域を出ませんが、定点観測調査のような形で科学技術に対する市民の意見や感情を長期的に収集し、その声を研究者や行政機関など様々なステークホルダーの取り組みに役立てられたら、ということも今後考えていきたいです。

濱:近ごろは、一般市民の声を収集し、研究や政策に反映させることが非常に重視されています。オピニオン・バンクであれば幅広い方々を対象として長期的な調査を実施することも可能なので、取り組みを強化し、日本科学未来館を科学技術の情報拠点として進化させたいと考えています。 その実現のために、CREATIVE SURVEYをさらに活用していきたいです。

社名
国立研究開発法人 科学技術振興機構 日本科学未来館
事業内容
従業員数

※ページ上の各種情報は2020年11月11日時点のものです。