デジタルマーケティングにおいて、顧客インサイトの収集・一元化に活用、顧客情報の資産化に寄与

株式会社電通総研

  • マーケティング
  • ビジネスサービス
  • 課題

    • アンケート結果が散乱し、有効活用できず、イベントやりっぱなしの状態だった
  • 施策

    • Salesforceにアンケートの回答データを一元管理
  • 結果

    • Salesforce上にアンケートの回答結果を蓄積できるようになり、複合的な視点でのマーケティング活動・営業活動を行うための土台ができた

株式会社電通国際情報サービス様(現株式会社電通総研 ※2024年1月1日社名変更)は、IT領域におけるコンサルティングやシステム開発、自社開発および国内外ベンダーのソフトウェア販売を行っている会社です。アイデアとクリエイティビティを兼ね揃えたITプロ集団として、先進的なソリューションを提供しています。

同社では、数千人を集めたオンラインイベント「HUMANOLOGY FORUM ONLINE」(2022年11月開催)を機に『CREATIVE SURVEY for Salesforce』を導入。アンケート結果をマーケティングや営業活動に有効活用しています。導入の経緯や活用方法について、製造ソリューション事業部の杉浦様にお話を伺いました。

顧客の声を資産として残しデジタルマーケティングに活かしたい

Q:貴社の事業内容とご担当の業務を教えてください。

弊社は顧客企業の成長を支えるITソリューションを提供している会社です。英語での社名であるInformation Services International-Dentsu, Ltd.を略してISIDと称しています。もともとは電通と米国・General Electric Company(GE)のジョイントベンチャーとして設立した会社で、現在は金融ソリューション・ビジネスソリューション・製造ソリューション・コミュニケーションITの4つの事業領域で展開しています。

私が所属するのは製造ソリューション事業部です。製造業のDXプロセスコンサルティングや先端テクノロジーを用いた設計・開発の支援、スマートファクトリーの構築など、「モノづくり」や「コトづくり」の上流工程において幅広いソリューションを提供している事業部になっています。その中でデジタルマーケティング全体を下支えする役割を私が担っています。

Q:『CREATIVE SURVEY for Salesforce』を導入した経緯を教えてください。

マーケティング活動の原点は“顧客を知ること”。その顧客を知るためには顧客の声であるVOC(Voice of customer)を集めて会社の資産として溜めていき、その資産をマーケティング活動に活用していく必要があると考えていました。

以前は、顧客の声を集めるために各担当者ごとにMicrosoft Formsで作成したアンケートを行っていましたが、運用する中でいくつかの課題がありました。

Microsoft Formsの場合、回答者を特定することができない仕様のため、アンケート上で社名、部署名、個人名、メールアドレス等の個人情報を記入いただく必要があり、回答率の低下につながっていました。また、回収した回答データの活用についても個々のプロダクト担当者の裁量に任せっぱなしになっていたことも課題でした。回答結果が自動的にクラウド上に格納されるものの、個々人の環境下に格納されることになります。社全体として考えるとせっかくのVOCが一元化されず、散逸してしまった状態に陥っていたのです。これではイベント後のフォロー状況は把握できませんし、同じお客様が別のイベントに来場されても、その方の過去の来歴を確認することもできません。

マーケティング施策の一つ一つが、やりっぱなしで終わっていました。これを当社では「イベントやりっぱなし」と名づけ、この解決をデジタルマーケティング推進目標の一つとして定義しました。

これらの課題を解決してくれるアンケートシステムがCREATIVE SURVEY for Salesforceでした。CREATIVE SURVEY for Salesforceを使えば、回答者をURLパラメーターで特定することができるため、個人情報を都度入力してもらわなくてもよくなり、離脱を防げます。また、回答データがSalesforceにリアルタイムで格納されるため情報を一元管理できるようになります。Salesforce上では、顧客起点でその方のコンタクトポイント・来歴を把握することができるようになります。

アンケート項目をSalesforceの項目にマッピングすることで、SQL判定やKPI管理にも使える可能性も魅力的でした。

※SQL判定:SQLとはSales Qualified Leadsの略で、営業活動に資する見込客のこと。SQLと判定することでマーケティング担当者から営業担当者へ当該見込客を引き渡し、営業活動を開始することができる。たとえば電通国際情報サービス様では、導入予定時期の設問で導入時期が1年以内のリードをSQLと見なすケースがある。

“お客様の声”というファクトベースでのマーケティング活動ができる組織へ

Q:現在、CREATIVE SURVEY for Salesforceをどのように活用していますか? 

導入に踏み切るきっかけとなったのは、2022年11月から12月にかけて開催した「HUMANOLOGY FORUM ONLINE」というイベントでした。HUMANOLOGYは弊社の造語です。「人とテクノロジーが響きあえば、未来はもっと良くできる」ことをビジョンとして掲げています。

このイベントでは株式会社本田技術研究所の大津代表取締役社長や、東京エレクトロン株式会社エグゼクティブアドバイザーの春原様による基調セッションをはじめ、顧客のDX事例、パートナー様発表、弊社発表など124のテーマセッションを設け、3,000名以上の方にご参加いただきました。

このイベントに際し、事前アンケートと開催中のセッションごとのアンケート、事後アンケートの3つをCREATIVE SURVEY for Salesforceを活用して実施しました。

2022年11-12月に開催された「HUMANOLOGY FORUM ONLINE」ISIDが掲げる8つのソリューションテーマに基づいた150以上のセッションを配信

事前アンケートでは、参加申込と同時にアンケートに回答してもらう形をとり90%以上の回答率を得ることができました。

フォーラム開催期間中のセッションごとの事後アンケートでは、124のセッションに対応させたセッションIDを使ってURLにパラメーターを付与することで、1つのアンケートフォームで済ませることができました。CREATIVE SURVEY for Salesforceを導入せず、124個のアンケートフォームをばらばらに作成し、124個のExcelファイルをかきあつめて集計するのかと考えると、ぞっとします。

この124のセッションは全てオンデマンドセッションです。アンケート回収率は約25%でした。視聴情報は取得できていましたが、個々の視聴者が視聴を完遂したかどうかはシステムの制約上識別できませんでした。仮に視聴完遂者を7割と仮定すれば、正味アンケート回収率は35%、6割と仮定すれば42%。大規模なイベントということを考慮に入れると、まずまずの成果でしょう。

なお、この124セッションを1つのアンケートフォームに実装するのは、導入時の最大の難関でした。導入から利用開始まで2か月を切っており、スモールスタートをしている時間的猶予もありませんでした。わたくしの無理難題を真摯に支援いただいた貴社カスタマーサクセス担当室屋様には、この場を借りて感謝を申し上げます。

Q:CREATIVE SURVEY for Salesforceを導入してどのような効果・メリットがありましたか?

複数の広告会社の方から得られた情報によると、一般的にBtoBのリード獲得コストは1.5万円とのこと。それだけの費用をかけても、連絡先情報を得ただけで終わりかねません。仮にCREATIVE SURVEY for Salesforceを今回のイベントのためだけに導入したとしても、1人当たりのVOC単価は1,000円未満です。1.5万円かけて獲得したリードに、1,000円でVOCという付加価値をつけられる、と考えた次第です。

このイベントでは、顧客、パートナー、および弊社の取り組み事例を一挙大公開しました。視聴情報とアンケート結果を照らし合わせると、労働人口減少という日本の産業界全体の課題が浮き彫りになります。ITを活用した劇的な生産性向上が待ったなしの状況です。多くの企業が具体的な手段を探している、あるいはIT人材育成を検討していることが、視聴データとアンケート結果から読み取ることができました。

ともすると、マーケティング活動は、担当者の想いで先行しがちです。想いはたしかに重要ですが、想いだけでは的外れなマーケティング施策を打ちかねません。しかし、担当者の経験や勘に頼らない裏付けのある数値やファクトが取得できたらどうでしょうか。アンケート結果は、お客様の声というファクトです。担当者の想いとファクトが組み合わされば、より良い成果につながるでしょう。「人とテクノロジーが響きあえば・・・」という弊社のHUMANOLOGYというビジョンにもマッチします。

ファクトをしっかり捉えた上で熱意や想いを持って取り組むことが弊社社員が働く上での理想です。CREATIVE SURVEY for Salesforceはそのコンセプトにもマッチします。

アンケートで集めたお客様の声やその他のお客様情報をSalesforceで一元管理できるようになってきましたので、複合的な視点でのマーケティング活動・営業活動を行うための土台ができたと思っています。

顧客セグメント化とSQL判定を適切に行いたい

Q:CREATIVE SURVEY for Salesforceを使って今後やってみたい施策はありますか?

マーケターに求められている役割は単にリードを集めるだけでなく、顧客ごとの課題と見込確度をセグメント化して、営業のリソースを有効活用できる状態を作ることです。アンケートの回答から顧客のセグメント化ができるようになれば、営業活動の精度が上がり、生産性も向上します。しかし、現状、セグメント定義を先行しているためSQL判定の閾値の定義がまだ十分できていません。SQL判定は今後実装していきたいと考えています。

それがうまく回りだせば、散乱して再利用できなかったアンケートデータが宝の山になります。CREATIVE SURVEY for Salesforceを活用しながら、理想の形を作っていきたいですね。

Q:長期的な視点で実現したい未来について教えてください。

ISIDグループは現在、長期経営ビジョン「Vision 2030」の実現に向け、グループを挙げて変革に取り組んでおり、その中のひとつの動きとして2024年1月1日に連結子会社である株式会社アイティアイディと株式会社ISIDビジネスコンサルティングを統合し、また株式会社電通グループ内のシンクタンク「電通総研」の機能を移管して、社名を「株式会社電通総研」に変更することを発表しました。

これにより、弊社の強みであるITソリューション機能の強化にあわせて、アイティアイディやISIDビジネスコンサルティングの強みである「社会や人に対する提言・情報発信を担うシンクタンク機能」「戦略策定を支援するコンサルティング機能」を確立・強化し「Vision 2030」の実現に向けて新たな一歩を踏み出すことになります。

この度統合することになるアイティアイディが発刊している書籍『開発力白書』がまさにシンクタンク的な取り組みの一つの例と言えると思います。この書籍はアイティアイディが20年以上にわたって行ってきた延べ230社、約45,200名の技術者に対する市場調査の結果をもとに分析結果をまとめたものです。

このような市場調査と社会への提言のニーズが急速に高まりつつあると感じます。たとえば、先に述べた労働人口減少に伴う「ITを活用した生産性向上」や、昨今話題になることの多い「脱炭素」なども取り上げるべきテーマとして考えられます。幸い、日本の主要な製造業企業の研究開発・製品開発に従事されている方々が弊社のお客様です。これらテーマの課題認識、取り組み状況や方向性などを調査・分析し、その結果をお返しすることが弊社の責務になってくるでしょう。

電通総研がシンクタンクとしての役割を担っていくためには、こうした市場調査と社会への提言が不可欠です。CREATIVE SURVEYは市場調査のような複雑な調査設計にも耐えうる機能を持ち合わせていますし、データの一元化・連携性にも優れていることから、そのためのプラットフォームへと発展していくと期待しております。

社名
株式会社電通総研
事業内容
システムインテグレーション、コンサルティング、シンクタンクの機能連携による、社会や企業の変革を支援するソリューションの提供
従業員数
3,388名(連結 ※2022年12月末時点)

※ページ上の各種情報は2023年5月19日時点のものです。