最低限おさえておきたいアンケートの聞き方ノウハウ〜ワーディング編〜

アンケートの質問項目を設計は簡単なようで非常に難しい作業です。さらに、アンケート実施の一番最初の作業になるので、非常に重要な作業でもあります。
今回はアンケート設計をする上で最低限おさえておきたい「ワーディング」についてご紹介します。
「ワーディング」とは、質問したいことを質問文や選択肢にしていく作業、またはその「言い回し」のことを指します。これからご紹介することはわずかな違いと感じるかもしれませんが、以下の細かな調整をすることによって回答率が大きく異なったり、回答データの品質や回答結果そのものが変わってしまう恐れもあるので、十分に注意したいポイントです。

質問作成時の気をつけるべきポイント 9 選

質問作成時の気をつけるべきポイント 9 選

アンケートを作る際に回答データに意識が向きすぎてしまい、質問の細かい言い回しを意識せず、回答しづらい質問を作ってしまい、結局回答データも得られないことがあります。今回はそのような質問にならないように気をつけるべきポイントを紹介します。

専門用語や業界用語を含んでいませんか?

以下の例題をご覧ください。

Q1.無向ハミルトン閉路問題を小学校の義務教育に取り入れるべきだと思いますか?
– YES
– NO
Q2.受験生チャレンジ貸付事業の支給上限額を引き上げるべきだと思いますか?
– YES
– NO

上記の例題に出てくる「無向ハミルトン閉路問題」「受験生チャレンジ貸付事業」のような、世の中に広く認知されていない言葉が含まれているアンケート設計票が散見されます。調査対象分野に詳しい回答者のみにヒアリングする場合は別ですが、一部の人しか理解できないような言葉や回答者が知らないような専門用語は避けるべきです。

どうしても必要な場合は、質問する前に用語の説明ページを挿入することもできます。ただし、誘導的な説明文章にならないように注意しましょう。

あいまいな表現を含んでいませんか?

以下の例題をご覧ください。

Q1.あなたが利用している携帯電話キャリアを教えてください。
– docomo
– au
– Softbank

一見、まったく問題ないように思ってしまいます。しかし、世の中には多種多様な生活スタイルの方がいますので、アンケート設計をするときはなるべく多くの回答者の立場に立って多角的な視点を持たなければなりません。
例えば、回答者は 30 代男性のサラリーマンでプライベート用の携帯電話と会社用の携帯電話を保有しているとします。このとき、プライベート用の携帯電話キャリアなのか?会社用の携帯電話キャリアなのか?を明確にしておかなければ調査結果が大きく異なってしまう恐れがあります。

また、上記以外のキャリア保有者やそもそも携帯電話を保有していない回答者もいるので選択肢の網羅性にも注意しましょう。

二重否定を含んでいませんか?

以下の例題をご覧ください。

Q1.喫煙は身体に悪影響はないとは思わない。
– YES
– NO
Q2.日本プロ野球のクライマックスシリーズは廃止するべきではないと思わないかどうか教えてください。
– YES
– NO

例題を読んで回答を出すまでにどの位の時間が掛かったでしょうか 。まったく戸惑わずに回答できたでしょうか?
1 問だけなら大きな負担にはならないかもしれませんが、このような「二重否定」を含むような分かりにくい質問が 10 問…20 問…と続くと回答者の負担は計り知れません。

このようなアンケートだと適当な回答をする人が頻発すると想定されます。離脱率も当然高まってしまいます。

誰もが回答できる選択肢になっていますか?

以下の例題をご覧ください。

Q1.あなたには子供は何人いますか?
– 1 人
– 2 人
– 3 人
– 4 人以上

この例題は、「子供がいない回答者」には該当する選択肢がありません。 子供がいない回答者はこの質問でアンケート離脱することが考えられますが、アンケート離脱で済むなら良い方でしょう。離脱しない回答者は真実とは違う回答をして次の質問に移ります。

経験則上、「1 人」と答える回答者が多いと想定されます。そうなると、子供が 1 人だけいる回答者をセグメントしてデータ分析しようと思ったとき、実際とはまったく異なるデータを基に分析することになってしまいます。マーケティングリサーチや商品の設計・企画に携わる担当者なら、ちょっとしたミスのはずが重大な問題となってしまいます。細心の注意を払いたいものです。

単一選択にも関わらず該当選択肢が 2 つになっていませんか?

以下の例題をご覧ください。

Q1.あなたの年齢を教えてください。
– 20 歳以下
– 20 歳以上 30 歳以下
– 30 歳以上 40 歳以下
– 40 歳以上 50 歳以下
– 50 歳以上 60 歳以下
– 60 歳以上

選択肢の中から「1 つだけ」回答する単一選択質問でのお話です。
当たり前の話となりますが、「以上」や「以下」はその数字自体も含みます。なので、この質問は「20 歳」「30 歳」「40 歳」「50 歳」「60 歳」の回答者は、該当する選択肢が 2 つあります。ちょうど 20 歳の回答者は「20 歳以下」もしくは「20 歳以上 30 歳以下」のどちらかを選択します。

ちょうど 20 歳の回答者は「どちらか」の選択肢を回答しますので、回答結果はバラつき、分析結果も実際とは異なってしまいます。「誰もが回答できる選択肢になっていますか?」と同様に絶対に避けたいケアレスポイントです。

パーソナル質問とインパーソナル質問を混同していませんか?

パーソナル質問とは、回答者自身に関わる行動や意見を求める質問のことです。インパーソナル質問とは、漠然と世間一般の客観的な行動や意見を求める質問のことです。
以下の例題をご覧ください。

Q1.あなたはステップアップのために積極的な資格取得をしていきたいですか?
– YES
– NO
Q2.あなたはステップアップのために積極的な資格取得を推奨していくべきだと思いますか?
– YES
– NO

この 2 つの例題は同じように見えますが、回答データはきっと同じにはならないでしょう。1 つ目の例題はパーソナル質問であり、回答者自身の個人的な意向を聞いています。 一方、2 つ目の例題はインパーソナル質問であり、回答者自身の意向ではなく、回答者自身は世間一般的にはどうあるべきだと思うのか、について聞いています。

両方とも「YES」と回答する方もいれば、どちらかは「YES」どちらかは「NO」と回答する方もいるでしょう。聞きたい内容を明確にして質問選択をしないと、そもそも意味のない調査になってしまいますので注意しましょう。

ダブルバーレル質問になっていませんか?

ダブルバーレル質問とは、1 つの質問文にも関わらず、その中に複数の質問を同時にヒアリングしている質問のことです。
以下の例題をご覧ください。

Q1.あなたは「中国語」と「統計学」を小学校の義務教育に取り入れるべきだと思いますか?
– YES
– NO
Q2.このスマートフォンは好きなデザインであり、機能が充実している。
– YES
– NO

これはダブルバーレル質問の典型的な例です。1 つ目の例題では「中国語」と「統計学」、2 つ目の例題では「デザインが好き」と「機能が充実している」がダブルバーレルに該当します。

どちらかは「YES」どちらかは「NO」であることは十分に考えられますので、この場合は質問を 2 つに分けてアンケート設計しましょう。

誘導的な質問になっていませんか?

以下の例題をご覧ください。

Q1.昨年、商品 A は売上個数が 1 億個を突破し、空前の大ブームとなりました。以下の商品のうち、あなたが最も購入したいものを教えてください。
– A
– B
– C

この質問は「特定の回答」を選択させるように誘導していることは明らかです。このようなアンケート設計をしてしまうと、回答者は出題者の意図を見抜き、出題者が求めている選択肢を「敢えて」回答する恐れがあります。

出題者は常に公平公正な表現をしなければならず、恣意的な誘導結果を正当な結果とすることは調査業界において御法度です。

キャリーオーバー効果が生じない設計になっていますか?

キャリーオーバー効果とは、ある質問の回答によって以後の質問に対する回答にゆがみが生じることです。以下の例題をご覧ください。

Q1.あなたは定期的に運動をしたいと思いますか?
– YES
– NO
Q2.定期的な運動は健康維持に繋がると思いますか?
– YES
– NO

これは「パーソナル質問とインパーソナル質問を混同していませんか?」で紹介したパーソナル質問(Q1)とインパーソナル質問(Q2)です。
この場合、どのようなことが考えられるでしょうか。Q2 の回答結果は、Q2 を単独でヒアリングした場合に比べて、Q1 の回答の影響を受けてポジティブな回答が多くなることが想定されます。これは、回答者が 2 つの質問回答が矛盾しないように意図的に回答をすると考えられるためです。ただし、キャリーオーバー効果が「すべて悪い」というわけではありません。

ポイントは、質問の順序によって正確な事実が出せなくなってしまう恐れがあるということです。質問の順序を適切に設計しましょう。

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まとめ

今回はアンケート設計において最低限おさえておきたい「ワーディング」の一部をご紹介させていただきました。アンケート設計ノウハウ習得は非常に難しく、考え出すととても奥が深いものです。残念ながら 1 日にして成るものではありません。

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