アップセル戦略で売上アップ!顧客単価を上げるコツ・営業活動の注意点

アップセルは、顧客単価を高める営業・マーケティング手法の一種です。アップセルが成功すれば効率的な売上アップが見込めますが、やり方を誤ると顧客の信頼を失う可能性があるため、適切なアプローチが求められます。今回は、アップセルの基礎知識やアップセル営業を実践するコツ・注意点について説明します。

アップセルは顧客単価を高める営業手法

アップセルは顧客単価を高める営業手法

アップセル(up-selling)とは「より高額な上位商品、または関連する商品を提案し顧客単価をあげること」です。「アップセリング」や「アップセールス」と呼ばれる場合もあります。

アップセルは営業・マーケティング手法のひとつで、BtoC・BtoBを問わずよく用いられています。身近な例では、ネットショッピング中に出てくる上位商品のレコメンド表示や、マクドナルドでLサイズへの変更を勧めるセールストークもアップセルの一種です。

アップセルの目的・具体例

アップセルの目的は、顧客単価を高めて総売上を増やすことです。売上は【顧客数×顧客単価】で算出でき、「顧客数を増やす」または「顧客単価を高める」ことが売上増加につながります。

経済成長や人口が右肩上がりだった時代では、顧客数を増やす手法がスタンダードでした。しかし近年は、少子高齢化にともなう人口減少で多くの市場が頭打ちとなり、新規顧客の獲得が難しくなっています。そのため、新規顧客を増やす施策だけではなく既存顧客の購入単価を向上させるアプローチの重要性が高まっています。

また、新規顧客獲得に必要なコストは、既存顧客を維持(リテンション)するより5倍程度多くかかると言われているため、アップセルは費用対効果の点でも優れた手法と言えます。

一般的なアップセルの手法は3パターンに分けられます。

アップセルのパターン 具体例
上位商品の購入・切り替え ・クラウドサービスのユーザーに、ベーシックプランから上位プランへの切り替えを提案
・一般ランクのクレジットカードの加入者にゴールドカードへの切り替えを提案
定期コース・定期購入 ・健康食品のトライアル購入者に対して定期コースを提案
・雑誌のリピート購入者に定期購読を提案
セット購入・まとめ買い ・日用品・消耗品のリピート購入者に同一商品の「2個セット品」や「3カ月分まとめ買い」を提案

クロスセルとの違い

アップセルと似ている手法に「クロスセル(cross-selling)」があります。

クロスセルは、いわゆる「抱き合わせ販売」のことで、顧客が買おうとしている商品と関連した商品を一緒に購入してもらう手法です。飲食店で料理を注文するときに「お飲み物もいかがですか?」と勧めるケースは典型例です。

アップセルでは上位商品へのアップグレードを勧めるのに対し、クロスセルでは関連商品との併せ買いを勧めます。アップセルと同様に、クロスセルの目的も顧客単価を高めて総売上を増やすことですが、レコメンド方法が異なります。

ダウンセルとの違い

「ダウンセル(down-selling)」は、意図的にグレードが低い商品を勧める手法です。購入したい商品の価格と予算が合わない場合に、機能は落ちるけれど予算内におさまる商品を勧めることで、売上がゼロになるリスクを回避するのが目的です。

アップセルやクロスセルが売上を伸ばすための積極的なアプローチであるのに対し、ダウンセルは機会損失を防ぐリスクヘッジの意味合いが強い手法です。

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アップセルを実現するためのポイント4つ

アップセルを実現するためのポイント4つ

やみくもに上位商品やまとめ買いを勧めるだけでは、アップセルを成功させることはできません。アップセルを実現するためにチェックしておきたいポイントを4つ紹介します。

ポイント1:アップセルにつながる品揃え

当然ながら、アップセルを成立させるには異なるグレードの品揃えが必要です。機能も価格も似たり寄ったりではアップセルを実行するは難しいため、「下位・中位・上位」とグレードにメリハリのある商品ラインアップを用意しましょう。

そのうえで、顧客が「少し高くても上位商品を購入したほうが良さそうだ」と納得してもらえる理由づけも必要です。「下位商品と上位商品の価格差の根拠」や「上位商品がふさわしい理由」をわかりやすく伝えられる品揃えを意識してください。

ポイント2:顧客分析・ターゲットの見極め

アップセルの成功率を高めるにはターゲットの見極めが重要です。自社商品・サービスに対するロイヤリティが高い顧客は、そうでない顧客よりアップセルに適しています。そのため、まずは購買行動や商談状況などの顧客データを分析し、見込みがありそうな顧客を抽出しましょう。

顧客分析はSFAやCRMを用いると効率的ですし、顧客にWebアンケートを実施してターゲットを絞り込むのも一案です。

ポイント3:アップセルを提案するタイミング

アップセルを提案するタイミングも意識しておきたいポイントです。適したタイミングは商材にもよりますが、一般的には以下が効果的です。

・ トライアル期間の終了時
・ 買い替えの検討時
・ 購入直後

これらは、商品に対する顧客の関心が最も高まりやすいタイミング。購買意欲も高まる傾向があるため、「トライアル客を定期コースへ」「付加機能が充実したプレミアムプランへの切り替え」「有料オプションの追加」などの誘導が成功しやすいです。

ポイント4:特別感のあるベネフィットの提示

当初希望より高い商品を買うことになる顧客からすると、何らかの「お得感」がないとアップグレードのうまみを感じにくいでしょう。そのため、顧客にアップセルを受け入れてもらうには「特別感のあるベネフィットの提示」も有効です。

ベネフィットの一例を以下に挙げます。

特別割引・数量割引 上位商品の購入やまとめ買いをした場合に割引をする
バージョンアップ特典 乗り換えキャンペーンなどで期間中のバージョンアップ対象者に特典を用意する
保証・サポートの追加 保証期間の延長や、通常は有料のサポート項目を無料で提供する
おまけの提供 商品の関連アイテムやオリジナルグッズなどを“おまけ”として提供する

上位商品の魅力を説明するだけではなく、顧客にとっての「実利」をセットで提示すれば顧客の心理的なハードルが下がりやすくなります。

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アップセル営業の注意点

アップセル営業の注意点

アップセル営業を実践する際は、以下の点に注意しましょう。

押し売りをしない

アップセルの仕掛け方を誤ると、顧客に不信感や押し売り感を抱かせてしまうことがあります。「売上を高めたい」と思うあまり、顧客のニーズにマッチしない上位商品を提案するのは本末転倒ですし、自社の企業イメージや商品イメージを損ねかねません。

まずは、顧客がどのような商品を求めていて、それによってどんな課題を解決したいのかを理解することが肝要です。そのうえで、上位商品が顧客のニーズを満たしているかを考え、顧客のメリットになると判断できたらアップセルを持ちかけましょう。

アフターフォローも忘れずに

アップセルを達成したあとはアフターフォローも抜かりなく行いましょう。

商品の使用状況や不具合の有無などを確認し、必要に応じて有益な情報を提供するなどの適切なフォローは、自社に対する安心感・信頼感を醸成しやすくします。自社商品に対するエンゲージメント(愛着)の向上にもつながり、長期的な継続使用や、さらなるアップセル・クロスセルも期待できます。

“売って終わり”ではなく、顧客と継続的な関係性を構築できるようシームレスな営業活動を意識しましょう。

顧客視点に立ったアップセルを実現しよう

営業・販売にアップセルの手法を取り入れれば、新規顧客を増やさずに売上アップが望めます。しかし、顧客のニーズを満たしていない商品に強引に誘導すると逆効果になるため、あくまでも顧客視点に立ち、タイミングを見極めたうえで適切な商品を提案することが重要です。

ここで紹介したポイントを参考にしながら、顧客の満足度アップにつながるアップセルを実践してください。

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